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「食べ飽きないパン」を求め続けて27年 ホームベーカリー おいしさ開発秘話

ウェブサイトやテレビ、雑誌等のメディアで活躍中の
ブレッドジャーナリスト・清水美穂子さんが ホームベーカリーの商品開発チームを訪問

All AboutやBread Journal他、TV、雑誌等メディアで
おいしいパンの向こう側にスポットをあて続けるジャーナリスト。
パンを楽しむ企画のコーディネート、執筆多数。著書に 『日々のパン手帖』他

All Aboutパン Bread Jounal
今回登場の商品開発スタッフ

さん(以下敬称略):
パナソニックは、ホームベーカリーの開発を、27年前から続けてきたそうですが、
これまでどんなおいしさのパンを目指してきたのでしょうか?

開発当初から、毎日食べても飽きのこないパンを目標にしています。
その中で、時代の変遷とともに作れるパンのバリエーションを増やしつつ、さらなるおいしさの進化に取り組んできました。

現在、私たちが自信を持っておすすめしたいメニューの「パン・ド・ミ」は、直訳すると「中身のパン」という意味。
素材の風味を活かしながら、皮はパリッと、中はソフトに。
「噛みごたえがありつつ、軽さもある食感」の実現にこだわっています。

なるほど。シンプルで、食感と風味を重視したパンということですね。
おいしく仕上げるためのポイントを教えていただけますか?

パリッとしたクラスト(皮)に仕上げるポイントは、
「スピーディーに焼き上げること」です。
そのために、パンケースや本体の熱効率を高める工夫をしています。

パンの風味を良くするポイントは、「イーストの量」ですね。
少ないイースト量で長時間発酵させることで、パンに残るイースト特有の
臭いを抑えて、小麦本来の風味を引き立てています。
イースト量を減らしつつ、ふんわりした膨らみを実現するには、
デリケートな発酵プロセスが必要になってきます。
ですので、どの季節でも微妙な発酵コントロールができるよう、
様々な気温の下で実験を行っています。
今日は特別に、その実験室をご案内いたします。

おいしさのための、厳しいチェック。

ここは、温度と湿度を高精度で制御できる「恒温恒湿室」
という部屋です。

ホームベーカリーがいくつも並んでいますね。
ここではどのような検査が行われているのですか?

ここでは、どんな環境でも均一においしいパンが作れるよう、
プログラムの開発と実験を行っています。
この部屋を5℃〜35℃の温度に設定して、毎日パンを焼いているんです。

5℃〜35℃とはだいたい、冬から夏の室温でしょうか。

そうですね。大変ですが、
「お客様にはいつでもおいしいパンを食べていただきたい」という想いがありますので。
お客様が使用されうる様々な環境での性能を確認するために、
電圧を変えての実験なども行っています。
ねり、ねかし、発酵、焼き上げ、という各工程ごとに
最適なプログラムを作るため、たくさんの機体でチェックや検証をしています。

できあがったパンに対して、細かいチェック項目があるんですね。

はい。高さ、重さ、形、外皮、内相、食感、香り、味など、
数多くの評価項目があります。
これらをすべて評価して、プログラムに反映、
そしてまた評価……。
この繰り返しで、出来栄え向上を図っています。

毎回試食をして記録をつけられているのですね。
これは大変なお仕事ですね。

パンが好きでないと、続けられませんね(笑)

1987年 27年前にデビューした初代ホームベーカリー

SD-BT2
(1987年発売)
誕生!
 

ねりから焼き上げまで全自動でパンを作れる、
パナソニック初のホームベーカリー。※
1984年に開発を開始、1987年2月に商品化。
「夜セットしたら、朝には焼きたてのパンが食べられる」という夢を実現するため、
予約機能付き。搭載メニューは「食パンコース」のみ。
現在のものと比べて本体の横幅が大きい。

 
※発売当時の社名は「ナショナル」。

時代のニーズとハードの進化によって、1号機誕生!

そもそも、どうしてホームベーカリーを開発することになったのですか?

当時は、朝食にごはんを食べる人とパンを食べる人の割合が、
ほぼ同数になった時期でした。若い人で言えば、
約6割が朝食にパンを食べるようになっていたんです。

日本中に様々なパン屋さんがオープンしはじめた時期でもありましたね。

ええ。そんな時代背景もあり、自分でパンを作りたいというニーズも
高まってきていました。一方、ハード側では、ホームベーカリーの頭脳にあたる、
マイコンが進化した時期でもありました。
本体の材料である耐熱性樹脂も、
家電で使用できるレベルに進化してきた頃でしたね。

「かんたんに手作りのパンを食べたい」というお客様のニーズと、
商品を作りあげるハードの進化が合致して、商品化を進めることになりました。

※マイコン
プログラムに合わせて、家電製品の動作を制御する技術。

暑い日も寒い日も、おいしいパンを。

手作業で作った生地を、予熱したオーブンで焼くのと違って、
ホームベーカリーは、すべてひとつのケースのなかで連続して作業が行われる。
温度の調節や発酵の見きわめが難しそうですね。

日本は四季があって、しかも南から北まで年間の温度差が激しいですからね。
夏でも冬でも、ちゃんとパンが焼けるようにするにはどうすれば良いのか、
検討を重ねました。
それを解決した策のひとつが、“中麺法”というイーストの投入方法です。
イーストを最初から生地に混ぜこむのではなく、ねりの途中で投入します。
これは当時、当社独自の技術で、現在の機種でも採用されています。

最初からイーストを入れてしまうと、外気温が高い時は過発酵になってしまい、
低い時は発酵が進まないということがあるんです。

センサーで生地の温度を測り、発酵に最適な温度の時にイーストを投入することで、
暑い日も寒い日も、おいしいパンを作れるよう工夫しました。

温度管理に気を配らなくても、自動できちんと発酵させてくれる。
タイマーをセットしておけば、寝ている間にパンが焼き上がる。
夢のような技術開発ですね。

“さいばし”で、ねりが変わった!

他に、パンをおいしくするために苦労されたことはありますか?

ねりの技術開発も苦労しました。機械でねると、生地がくるくる空回りしてしまって……。
ふと思いついて、試作機のパンケースの中で回転する生地に、さいばしを刺してみたんです。
すると、意外なことに、うまくねることができまして。
この発想から、パンケースの内側にリブをつけるという構造になりました。2ヵ所、出っぱっている部分です。
この構造は、現在のパンケースにも受け継がれています。

さいばしのおかげでパンがおいしくなったなんて、面白いですね。
「世の中になかったものをつくる」というのは、大変なことですよね。

開発当時は本当に大変でした。ホームベーカリーは1回作るのに約4時間かかりますし、全自動なので、 中でどんなことが起こっているかわからないんです。
だから良いパンを作る対策を考えるのに時間がかかってしまう。
試行錯誤を繰り返しながら、3年間で5000個もパンを焼きました。

5000個ですか?

はい。当時は夢の中でもパンを焼いてましたね。
起きてすぐ、枕元のメモにアイディアを書きとめていました。
出社前に、朝5時からパン屋さんで修業をして、
会社では朝から晩までパンを作って。
そんな日々もありました。

1号機の誕生まで大変なご苦労があったのですね。
その1号機はどのくらい売れましたか?

ありがたいことに、約40万台を売り上げまして。
大ヒット商品になりました。

2003年 コンパクトサイズになったSD-BT103

SD-BT103
(2003年発売)
コンパクト!
 

発売から16年。
モーターと基板の配置を変えることで、本体のサイズがぐっとコンパクトに。

 

コンパクトなモーターの開発に成功して、
この機種から本体サイズを小さくすることができました。
日本の台所では、設置面積が限られていますのでね。
1号機を置いていた場所に、炊飯器とホームベーカリーを
両方置けるようになりました。

2006年 もちが作れるようになったSD-BT153

SD-BT153
(2006年発売)
メニューが充実!
 

「もち米を炊く」から「もちをつく」まで自動でできる、「もちコース」を追加。
もちの他にも、ピザ生地、ケーキ、うどん、パスタなど、パン以外のメニューが充実。

 

「もちコース」は、お客様からのご要望を反映した機能で、すぐれものなんですよ。

これまでのもちつき機は、もち米を1晩程度、水に浸してからセットしなくては
いけませんでした。ホームベーカリーは、もち米を炊きながら「つく」ことができる、
炊きまぜ方式なので、短時間でおもちを作れるんです。
進化の過程の中で、お客さまのニーズに合わせて、様々なコースが追加されてきました。

2011年 粗混ぜ機能を搭載したSD-BMS104

SD-BMS104
(2011年発売)
粗混ぜ機能搭載!
 

チーズやベーコンなどのやわらかな具材も、
形を残したまま生地に混ぜこめる、「粗混ぜ」機能を搭載。
パン生地をねり終えてから具材を投入し、低速で混ぜるという工程。

 

これは、粗混ぜ機能を使って、チェダーチーズとベーコンを
混ぜ込んだフランスパンです。召しあがってみてください。

具材の形が残っていますね。
ホームベーカリーで作ると、「ベーコンの匂いはするけど、ベーコンは
見えない」 というパンになりがちだそうですが、これは大丈夫です。
食べごたえがあります。

2014年 インバーターモーターを搭載したSD-BMT1000

SD-BMT1000
(2014年発売)
NEW!
 

「生地のねり」を向上させるため、インバーターモーターを搭載
メニューに合わせてねりの速度を変えることで、パン・ド・ミの食感が3種類に。
さらに、「60分パンコース」の実現、マーブルパンを手間なく作れるようになるなど、
メニューがさらに広がった。

 
  • 食感が選べる「パン・ド・ミ」
  • 60分パンコース
  • マーブルパン
商品情報を見る

モーターの進化で、さらにおいしさが広がる!

インバーターモーターというのは、一言で言うと、どんなモーターなのでしょうか?

かんたんに言えば、回転スピードを変えられるモーターですね。
今までのモーターは、スピードを変えられなかったので、
ゆっくりねりたいときは、途中で止めたり動かしたり、間欠運転をしていたんです。

インバーターモーターなら、なめらかな低速でねることもできますし、高速でねることもできます。

大きな進化ですね!
ねりのスピードが調節できると、どんなことができるようになるのですか?

大きな進化は3つですね。
パン・ド・ミの食感を変えられるようになったこと、60分パンを作れるようになったこと、
マーブルパンを手軽に作れるようになったことです。

あとは、一度に2斤まで作れるタイプの商品を開発できたのも、
インバーターモーターのおかげです。

時には、わざとゆっくりこねたり。
時には、高速で短時間でねったり。
モーターの回転を低速から高速まで使い分けることで、
ねりたいようにねることができるんです。

車のギアのようなイメージですね。

「もちもちパン・ド・ミ」「ふんわりパン・ド・ミ」、トレンドに合わせた食感。

3種類のパン・ド・ミをご用意しました。見た目ではあまり差が
ありませんが、「もちもちパン・ド・ミ」
「ふんわりパン・ド・ミ」と、通常の「パン・ド・ミ」です。

「もちもち」と「ふんわり」という食感を選べるようにしようと
思った理由は何ですか?

今の時代、日本人がもっとも好きな食感は、この2つだと考え
ているからです。今までのホームベーカリーは、レシピの配合で
味を変えることはできましたが、食感を自分好みに変えるのは
難しいことでした。インバーターモーターの搭載によって、
ようやく食感にも力を入れることができるようになったんです。

なるほど。さっそくいただいてみましょう。

「もちもちパン・ド・ミ」は、「高加水」が特徴です。
高速ねりで、生地に従来より多く水分を含ませています。
ホームベーカリー用に独自で開発した、「電子レンジで作れる
湯だねペースト」を入れることで、もちもち、しっとりとした
新食感を実現しました。

湯だね製法は日本人の大好きな食パンの食感を
つくりだしますからね。人気店の製法に着目されたのですね。
うん、手に持った時からしっとり感があります。
柔らかいけれどもちもちとした弾力があります。

「ふんわりパン・ド・ミ」は、パンの歯ごたえを作り
すぎないように、さっくり混ぜ合わせ、粉と水を
十分になじませるため、長くねかしの時間をとっています。

素材の配合も違いますか?

はい。 「ふんわりパン・ド・ミ」は、薄力粉を加えることでグルテン
量を抑えて、ふんわりソフトな食感を引き出しています。

ああ、きちんと差が出てますね。「ふんわりパン・ド・ミ」は、柔らかくてやさしい食感です。
家でこのくらいのレベルまで作れるのは良いですね。
食感の違いは、トーストにしたらもっと差が出そうです。
これなら、毎日食べても飽きないですし、家族や自分の好みの仕上がりが選べますね。

食パンは、毎日食べるものですので、細かいレベルでの好き嫌いが出るんです。
開発当初のホームベーカリーは、「朝起きたらおいしいパンが焼けている」という夢を
叶えるためのものでしたが、今、ホームベーカリーに求められていることは、
より、日本人の口に合うパンを作ること。「毎日飽きのこないパン」という大きなテーマは変えず、
それぞれの好みに合わせたパンを作れるよう、おいしさを追求しています。

※グルテン…たんぱく質に水を加えてねることによってできる、粘り・弾力のもと。

画期的な60分パン、念願のマーブルパン。

60分パンとマーブルパンについても、ご説明しますね。

さきほどお伝えした通り、インバーターモーターで高速ねりができるようになりました。
その技術を活かした、「生地を温めて発酵させながら高速でねり、
高温で発酵、焼き上げをする」というプログラムによって、
わずか60分でパンを作れるようになったんです。

炊飯器でごはんを炊くような感覚をイメージして、60分を目標にしました。
今までは早焼きコースでも約1時間55分かかっていたので、
約半分の時間で作れるようになりました。

60分パンはきめ細やかですね。
甘みがあって、ミルクパンのような味わいです。

スキムミルクの量を多くしていますし、卵も入っていますからね。

子どもが好きそうな味ですね。60分でできるのであれば、
学校から帰ってきてからさっと焼いて、おやつに出すことも
できそうです。

こちらは抹茶マーブルパンです。今までマーブルパンを作るには、
手作業で一度生地を取り出さなくてはいけなかったんですが、
この機種からは、パンケースの中だけで作れるようになりました。

手軽にアレンジできるのは、ユーザーの創作意欲をくすぐりそう
ですね。これも、インバーターモーターのおかげですか?

はい。今までのモーターは、回転スピードが一定で、間欠運転
しかできなかったので、マーブル模様を作ろうとすると、
ムラができてしまっていました。インバーターモーターならば、
なめらかな低速回転ができるので、きれいなマーブル模様を描けます。

開発当初は、なかなか模様が中に入らなかったのですが、
コーヒーにクリームを入れる様子からヒントを得て、
パンケースの端からマーブルの素を投入するという方法にたどりつきました。
マーブルパンは、ユーザーアンケートでも、常に「作ってみたいメニューランキング」の上位に入っていたので、
実現できて良かったです。

コーヒーから発想されたとは、日常の何気ない出来事が、
商品開発のきっかけになるのですね。
こういう面白いパンは、ちょっとしたプレゼントにもよさそう。

はい。他の人とはちょっと違うパンができる嬉しさを、実感していただきたいです。

こだわり食感のパン・ド・ミから、さっと作れる60分パン、
手軽にアレンジできるマーブルパンまで、インバーターモーターのおかげで、
パンづくりの楽しさがさらに広がったことが、よくわかりました。
1号機と比べると、大きく進化しましたね。
今日はそんなホームベーカリーの進化の過程をたどることができて、とても興味深かったです。

おいしい幸せを支える、開発チームと出会って。

ホームベーカリーで焼きたてのパンを毎朝楽しめる幸せは、パンの技術や経験を、
研究者・技術者たちが肩代わりしてくれたおかげだということがよくわかりました。
一年365⽇、日本中どこにいても、あらかじめ設定されたおいしいパンに行きつくように、
彼らがプログラムを組んでくれるから、わたしたちは手間をかけることなく、いとも簡単に、
焼きたてのパンを口にすることができるのですね。
日本にはさまざまなパンがあります。
センスのある職人が焼き上げるパンを買いに行くのは楽しいし、
手ごねの自家製パンで生地と語らうのも、楽しいことです。

もうひとつ、「ご飯を炊くように簡単に、ホームベーカリーでパンを焼く」
というのも、パンを楽しむ選択肢のひとつだと気づかされました。
今回の新機種はベーシックスタンダードなパン・ド・ミの食感に
こだわって商品を開発したという部分も興味深かったです。
毎日食べるパンは結局のところ、ご飯のようにシンプルなものが
一番かもしれません。
今後のパンのトレンド、消費者ニーズ、そしてパン食⽂化の成熟によって、
ホームベーカリーがどんな進化を遂げていくのか、楽しみです。