Creative! Story | ホームベーカリー × 奥貫薫さん

手づくりパンで、人と人との絆をつくりたい。

写真:内田 さやか、高濱 あつみ

写真左から
商品企画 内田 さやか
調理ソフト開発 高濱 あつみ

「フルオート」から、あえて「マニュアル」の道へ。

内田:ホームベーカリーを開発して今年で30年目になります。これまで何千種類ものパンに取り組み、国内で世界各国で、お客様にご満足を提供してきました。フルオートの時代に築いたシェアNo.1メーカーとしての信頼や実績を、次のステージでどう活かすべきかを考え、決意したのが、「マニュアル機能」の採用です。“自分で新しいおいしさをつくりたい”、“みんなに披露したい” 。そんなお客様のクリエイティブなニーズが顕著な今こそ、パンづくりの楽しさを最大限にご提案できるチャンスだと考えたのです。そこには、おまかせでパンが焼ける、というホームベーカリーへの固定化したイメージを変えたい思いがあったのも事実ですね。

高濱:今までの商品は、精度の高いパンはつくれますが、家族の好みやお店のお気に入りのパンをつくろうとしても対応しきれませんでした。パンってそもそも、メインの食事にできるし、おやつやスイーツにもできる食べ物ですよね。だからこそ、つくる人や食べる人のさまざまなこだわりに応えるためにも、マニュアル機能の必要性を感じていました。

1987年発売のホームベーカリー

仕上がりの「基準」を見極める。

内田:今回の新製品の「マニュアル機能」では、生地ねり、発酵、焼成が各4段階で設定でき、時間調整も可能です。基本的なレシピとしてご提案するのは20種類ですが、つくり方のアレンジが効くので、経験のある方なら世界中の5,000種類ものパン全てを手づくりできるんじゃないでしょうか。実はここまでお客様の選択肢を広げられる設計の背景には、従来のフルオート機能とは比べものにならないほどの開発工程、検証作業を乗り越える苦労がありました。何せ、私たちにとって、初めての挑戦でしたから。

高濱:パンの種類ごとに、材料や配合、ねりの速度、発酵温度や時間など、さまざまな条件をかけ合わせ、膨大なデータ収集を行いました。小麦粉のメーカーや種類の違い、砂糖や水の量のわずかな差でも出来栄えが変わる世界ですからね。それらデータをどう組み合わせたらベストなのか。お客様にご満足を提供できる基準を見極めるまでが本当に大変で、1メニューに5ヶ月費やしたときもありました。さらに、お客様がどんな設定をされるかわからない、その安全対策も大きな課題で。材料の飛び散りややけどなど起きないようさまざまな使用パターンを想定し、その検証にも時間を費やしました。

写真:パンのイメージ

1%の成功を目指し、試作、試食の繰り返し。

高濱:ほぼ1年に及ぶ開発期間で、試作に使用した小麦粉は約300キロにもなります。食パン型に換算すると、1,000斤以上。パンは焼き上がるまで味や見た目の判断ができませんから、とにかく焼いて食べる。毎日試作機をフル稼働させ、焼き上がったパン一つひとつを手に取り、形、香り、味わいをチェックする。この工程が欠かせないんです。でも、成功はたったの1%。99%の失敗作も原因を調べるために、全て試食しなければならないんですよ。

内田:プログラムに搭載する理想のおいしさにたどり着くまで、みんなであーだこーだ意見しながら食べ続けるんです。本当にモノづくりに妥協しませんね。

写真:高濱

一人ひとりのスキルアップが、おいしさを磨く。

高濱:「マニュアル機能」の開発はとても特殊。だから、パンをもっと専門的に追求する必要がありました。時間をつくっては、パン屋さんの養成学校に足を運んだり、大学教授からレクチャーを受けたり。違う立場からの意見も吸収し、これだ!という答えを客観的に探り続けました。パンづくりの葛藤が夢に出てくる日もあったほどです。

内田:開発メンバーは、とにかくパン好きな人ばかり。出張先でも旅先でもパンを見つけたら食べるのが習慣で、日頃からさまざまなパンの知識を得る努力を惜しみません。パンを口にするだけで、バターや塩の量が分かるくらいのセンサーの持ち主たちなんですよ。ホームベーカリーを開発する一人ひとりが、パンのスペシャリストでありたいからこそ、スキルアップはとても大事。それが、お客様に提供するおいしさにつながっていくわけですからね。

写真:内田

理想は、一家に一台のコミュニケーションツール。

内田:パンづくりの価値を広げるために開発した「マニュアル機能」ですが、今までのオート完結の商品といちばん違う点は、人の手が加わることです。庫内で仕上げた生地を取り出し、思い思いにこねて成形する。さまざまな手や技が、パンの表情一つひとつにつながっていくんです。生地に手で触れてつくる、そんなクラフト感がすごく面白いなって思いますね。きっと、ご家族で盛り上がるはずです。

高濱:パンって、酵母の働きに寄り添わないとつくれないものですよね。実はその点も大きな魅力だと感じます。だって、ご家族一緒に、手づくりの時間をゆったりと分かち合えるわけですから。フルオートや時短では味わえないパンづくりの楽しさを、多くの方に体験していただきたいですね。

内田:この開発に携わりつくづく感じたことですが、パンづくりは、人との関係や絆をつくることなんだなって。せわしない時代に、あえて手間ひまかかる「マニュアル機能」を提案することで、心のゆとりやコミュニケーションを育むツールとして浸透させていければと思います。

高濱:ホームベーカリーは、まだまだ炊飯器と同じようなポジションではありませんが、一家に一台をゴールにしたい気持ちでいっぱいです。お客様の笑顔を増やせる調理家電を、これからも目指していきたいです。

写真:高濱、内田
ホームベーカリー SD-MDX100

ホームベーカリー

SD-MDX100