Creative! Story | 補聴器 × 遠藤憲一さん

補聴器をつくるために入社したギタリスト。

写真:藤井 成清

商品企画 藤井 成清

プロのギタリストになりたかった。

小さな頃から、音楽が好きでした。5歳からピアノをはじめて、中学校ではキーボード。高校に入ってギターに目覚めてからは、バンド漬けの毎日でした。「プロのギタリストになる!」そう心に決めて、高校を卒業後、ギター1本だけを持ってロサンゼルスの音楽学校に留学したんです。でも、その学校には世界中から1,000人くらいギタリストが集まっていて。自分より上手い人がいくらでもいるわけです。プロになることの難しさを痛感して、ギタリストの道をあきらめざるを得ませんでした。
そして、日本で音響を専門に学ぶ大学に入ったのですが、そこで出会ったのが補聴器でした。「音で人の役に立ちたい」という想いをずっと抱いていたので、これだ!と思いましたね。それからは、4年間ずっと、補聴器の研究に明け暮れました。ときには病院や高齢者施設を訪ねて、補聴器を使用している方にお話を伺うこともありましたが、そこで音質や使い勝手にまだまだ課題があることを実感したんです。「補聴器を変えたい」。その想いを胸に、パナソニックに入社しました。

写真:藤井 成清 バンド漬けの高校時代

身に付けたくなる補聴器を目指してきた。

大きい、ゴツい、メカメカしい。補聴器にそういったイメージを持っている方も多いと思います。実際、私が入社してはじめてつくった補聴器は、当時苦労してつくり上げたものではありますが、まだまだ大きく、形も無機質でした。
一年一年、開発を重ねて、補聴器本体からイヤホン部分を独立させて本体の小型化をはかったり、丸みを帯びた親しみやすい形に変えていきました。
また、音をただ大きくするのではなく、周囲の騒音を抑えたり、使用環境に合わせて自動で設定を調節するような機能を開発することで、聞き心地も追求。もっと気軽に、もっと快適に使える補聴器を目指して、開発を続けてきました。

画像:2003年の補聴器
2003
画像:2009年の補聴器
2009
画像:2011年の補聴器
2011
画像:2017年の補聴器

2017

15年かけて生まれた、「置くだけ充電」。

今回の新商品における大きな進化ポイントが、「置くだけ充電」です。今までの補聴器は、2週間に一度の電池交換が欠かせませんでした。高齢者の方にとって、小さな電池の交換作業は大変なもの。電池交換がいらない充電式の補聴器をつくるというのは、入社当時からの夢でした。
しかし、補聴器の小さなボディの中に充電機能を入れ込むためには、数々の困難がありました。中でも苦戦したのが、「熱」。充電に使うコイルがどうしても熱を持ってしまうのですが、肌に直接触れるものなので、その熱を最小限に抑えなければいけなかったんです。充電ケースにカチッとはめるような充電方式にすれば熱がこもりにくいことは分かっていましたが、ポンと置くだけで充電できるという手軽さにどうしてもこだわりたかった。補聴器の中の部品の配置を 0.1mm単位で変えることを繰り返し、ようやく熱が下がる構成を見つけ出しました。開発に熱中するあまり自分たちまで熱を出すこともありましたが(笑)、入社から15年かけて、ついに夢を実現することができました。

写真:置くだけ充電

ハウリングを劇的に減らした独自技術。

もうひとつの進化は、「ハウリング」の抑制です。ハウリングとは、マイクとスピーカーを近づけることで「ピーピー」という耳障りな音が鳴る現象。補聴器は、小さいボディの中にマイクとスピーカーが入っているので、ハウリングが起こりやすいんです。
ハウリングは、ハウリング音の波形と反対の波形の音を補聴器の中でつくりだし、波形同士を打ち消し合わせることで抑制できます。ヘッドホンやイヤホンにも使われるノイズキャンセリング機能と同じ原理です。
しかし、実際のハウリング音は人の声に混ざっているもの。その中で、どうやってハウリング音だけを消すか。これが大変でした。パナソニック社内にある、音を専門に研究している部門と協力し、人の声を学習してハウリング音と瞬時に区別できるプログラムを開発することで、ハウリング音を今までに比べて素早く的確に抑制できるようになりました。この技術は、パナソニック独自のもの。音響機器メーカーとして、ノイズのないクリアな音質を追求してきたパナソニックだからこそ実現できた技術だと思っています。

写真:独自技術を説明する藤井

居酒屋に負けない補聴器を。

補聴器は、人の声とそれ以外の音を的確に見分けられるまでになりました。でも、私には、まだまだやりたいことがたくさんあります。次なる課題は、さまざまな人の声から、聞きたい声だけを抽出するということ。特に、居酒屋のような騒がしいところで、相手の声だけをいかに聞きやすくできるか。そのために、居酒屋に足を運び、試作機を自分の耳につけて、テストを繰り返しています。納得のいく補聴器ができるまで、居酒屋に通い続けると思いますよ(笑)。
入社以来、補聴器一筋15年。変わらず情熱を持ち続けられるのは、使ってくれた人が喜ぶ姿を見てきたからです。「妻の声がよく聞こえる」と涙を流して喜んでくれた人もいました。補聴器を通して、人の役に立ち、人の人生を変えることができる。それが何よりのやりがいです。これからも、一生、補聴器づくりに携わっていきたいですね。

写真:藤井
補聴器 WH-R47/R45/R43

補聴器

WH-R47/R45/R43