Beautiful JAPAN towards 2020

千葉県:白子町

Beautiful JAPAN towards 2020

誰よりも車いすテニスを楽しみたい
その姿がみんなへの恩返しとなる

高く上がったボールを車いすから渾身のサーブで打ちつける。素早いターンと瞬時の移動。勝負のカギはボールを的確にとらえるポジションどりだ。そのためには、ホイールを巧みに操作するチェアワークが欠かせない。

「車いすテニスは2バウンドまでの返球が認められているのでラリーがつながりやすい。そこでのかけひきや一発のパワーショットなど、頭脳とスピードを兼ね備えた点が面白いんです」

そう語るのは千葉県の鈴木康平さん。
オートバイの事故で左足を切断し、生きる意味を見失いかけた。そんなとき軽い気持ちで始めたのが車いすテニスだった。
「映像で見ると車いすの動きってすごく遅い。これは簡単に世界一になれると思って」

ところが実際のプレイは動くだけで精一杯。
「打っては動いての繰り返しで腕にかかる負担がすごい。試合中に手の皮がむけることもあるし、ボールがどこに来るのか分かっているのに届かない。もどかしさでいっぱいでした」

それでもかつて軟式テニスをしていた経験と、いちどは体育教師を目指していたという運動能力、そしてなにより、がんばれる場所を見つけた喜びから、鈴木さんはキャリア4年にして国内ランキング (※)3位(2016年7月現在)にまで成長。その才能はプロテニスコーチの山口憲一郎さんも認めるところだ。

「大きな特徴は日本人離れしたパワー。彼のようにパワーを武器に世界と戦える日本人選手はなかなかいません」

もちろん山口さんが「ものすごくヘタ(笑)」と指摘するチェアワークなど課題は多い。しかし鈴木さんはある心境の変化を感じ取っている。

「これまでは障がい者と認めたくない自分がいた。でも今こうして海外で多くの試合ができるのは車いすテニスがあるから。その事実をしっかり見つめられるようになったのは、自分が立ち直りはじめている証拠なのかなと思っています」

ひと気のない朝焼けの中里海岸。トップスピードで車いすを走らせる鈴木さんの姿に迷いはない。心がけているのは誰よりも楽しむこと。その集大成が2020年の東京パラリンピックであることを鈴木さんは信じて疑わない。

(※) JWTA車いすテニスランキング

撮影年月:2016年7月