プロの技を再現する 焙煎機はどうやって開発された? プロの技を再現する 焙煎機はどうやって開発された?

プロの技を再現する

焙煎機はどうやって開発された?

パナソニック初の焙煎機となる「The Roast」。それはメーカー主導で生み出された、IoTでプロダクトとサービスを紐づけた焙煎機だ。その開発の経緯をここでは詳しく紹介しよう。

パナソニック アプライアンス社 事業開発センター 事業企画部 企画課 井伊達哉氏

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事業企画部
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井伊達哉氏

パナソニック アプライアンス社 事業開発センター 新規事業開発部 開発第四課 藤田敏広氏

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藤田敏広氏

パナソニック アプライアンス社 事業開発センター 新規事業開発部 開発第二課 山本雅弘氏

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山本雅弘氏

パナソニック アプライアンス社 事業開発センター 新規事業開発部 開発第四課 鈴木久美子氏

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開発第四課
鈴木久美子氏

※ 部門名は取材当時のものです。

新規事業開発として焙煎サービスに取り組み

単に製品を販売するだけでなくコーヒー輸入商社の石光商事や、世界一の焙煎士である後藤氏と提携するなど、サービスと一体になっているのが、『The Roast』の大きな特徴。では、パナソニックは『The Roast』で、どこを目指そうとしているのだろうか?「『The Roast』は元々、生産者や職人の技をお客様と繋げたいという中から生まれた企画です。2000年頃からコーヒーの第3の波などが盛り上がってきました。同時にイギリスに面白い焙煎機があることが判明して、“自宅焙煎”に挑戦してみようとプロジェクトが発足しました」(井伊氏)
当時、家庭用焙煎機自体がまだまだ少なく、事業としての可能性は未知数であり、手探り状態の船出だった。さらに、石光商事とやりとりする中で焙煎自体の難しさも痛感した。「生豆によって味が違い、さらに焙煎そのものも奥が深い。これは率直に難しいと感じました。そんな中で、焙煎士の後藤さんを石光商事さんから紹介され、コンセプトに賛同してもらいまして、本格的にやっていくことになりました」(井伊氏)
 当然、焙煎機自体の自社開発も検討したが、それよりも事業を早く立ち上げることを優先した。この考え方自体も、パナソニックにとっては非常に珍しいことだった。イギリスのIKAWA社と技術提携する上で、最初に課題となったのが電圧の違いだ。ベースとなったIKAWA社の焙煎機は230Vの電圧で動作する。しかし日本の電圧は100Vと半分以下だ。当然火力も半分以下になってしまうので、しっかりとした焙煎ができない。ハードウエア設計を担当した藤田氏は語る。
「温度や熱風のコントロール、正確さでIKAWA社の焙煎機は優れていましたが、電圧環境の違いで火力不足になってしまうのは否めません。後藤さんからも、6分でイタリアンローストができる火力に改良して欲しいと求められました。そこで基板の配置から、熱風が通る風路までほとんどを日本向けに設計し直すことで火力を高めることに成功しました」(藤田氏)

プロのニーズを組むためにコーヒー関連の資格も取得

 しかし、社内に焙煎のノウハウがないということは、引き続き課題として残っていた。そこで焙煎士の後藤氏が求めていることを、社内でもしっかりと理解するために、開発陣自らがコーヒーを深く学び出す。
「本を読んだり、コーヒーに詳しい友だちに会ったり、挙げ句の果てにはコーヒーマイスターの資格も取りました」と語るのは、開発チームの鈴木氏。主に後藤氏が求めていることを理解し、設計に伝えるという役割を担った。
 操作面を担当したのはアプリ開発を担当した山本氏。最初はプロファイルをダウンロードして本体に送るだけでいいと考えていた。「でも、開発する中でただ操作できるだけでなく、『The Roast』が提案する世界観を考えると、コーヒーを楽しんでもらいたい。そんなアプリを設計したいと考えるようになりました」(山本氏)
 結果、アプリは焙煎するツールというだけでなく、産地の情報や各種豆の知識なども読み物として盛り込むようなコンテンツにも仕上がった。「元々のIKAWA社の製品はプロ向けなので、自身で細かく設定できます。しかし、我々が1000回以上焙煎してみた結果、お客様に自由に焙煎設定ができる状態で提供できませんでした。それぐらいに焙煎は難しいんです。ただし、IoT機器ですから今後自由に設定して焙煎する機能を追加するなど進化することは可能です。このあたりはお客様の声を聞きながら、考えていきたいですね。『The Roast』はまだ始まったばかりですから」(井伊氏)

『The Roast』試作機と最終試作

試作機と最終試作。高級感を演出するため外装は3回塗装し、3回焼いているという。

コーヒーの勉強

まずはコーヒーの勉強を行い、言葉を覚えるところからスタートした。

社内での焙煎テストの結果

社内での焙煎テストの結果。
1000回を超える焙煎を繰り返している。

ミル付きコーヒーメーカー

自社のミル付きコーヒーメーカーで焙煎したコーヒーを味わう。

深煎りと浅煎りの味の違いをチェック

深煎りと浅煎りの味の違いをチェック。同じ豆でも味わいや濃さ、風味が異なる。

検証用の『The Roast』と各種機器

検証用の『The Roast』と各種機器。後藤氏のところにも置かれていたように内部温度が計測できるようになっていた。

※「デジモノステーション2017年5月号」より転載