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Wおどり炊きの炊き技を支える「ライスレディ」  という仕事。

一台の開発に費やす米の量、約3トン

炊飯器

幾台もの炊飯器に米、計測器、パソコンが所狭しと並ぶ。パナソニック・神戸工場の調理実験室には、いつも炊きたてのごはんの香りが漂う。「ライスレディ」と呼ばれる女性たちの炊飯器調理ソフト課の仕事場であり、戦場だ。

「ライスレディ」とは、一言でいうと炊飯のスペシャリスト。既に35年以上の歴史があり、美味しさを理論的に解析して炊飯プログラムを開発するために、調理科学の専門知識と鋭い味覚を持つメンバーで構成されている。使命は、誰もが美味しいと感じるごはんを、炊飯器で追求すること。新製品一台の開発につき、炊くお米の量は3トンにものぼる。現在、戦力である6名の女性陣の中で、20年以上にわたり担当するベテラン、加古に話を聞いた。

RICE LADY

加古さん

1人1日、お茶碗7杯分は試食しています。

ご飯

原始的ですが、炊いて食べてをひたすら繰り返すことが基本です。毎日3合は試食し、メンバーの五感や経験を活かしながら、そこで収集・分析した美味しさのデータを炊飯器の開発に活かしていきます。地道な作業がこれでもかと続きますが、食べて味わいを判断するのは結局、人ですから。機械での計測はあくまでも裏付け。人の舌、味覚には敵いません。

日本人の好みの最大公約数の美味しさを追求

味覚の評価には、実際に食べる「官能評価」と美味しさの成分を定量的に分析する「理化学的評価」、「物性評価」を実施。「官能評価」は、味・香り・触感・外観・硬さ、粘りなど、機械では分析しきれない要素が多い。それだけに、「ライスレディ」共通の美味しさのモノサシが、極めて重要になる。

炊飯ごとに、釜の表面や底、中央、周囲、それぞれの炊き具合を目視で評価。そして実際に食べて味わいを吟味し採点、集計。試食した膨大なデータに、火力と温度変化の関係、米の浸水時間による炊きあがりの違いなどの条件をかけ合わせて、データを蓄積していく。こうした過程を経て、パナソニックが開発基準にする、“日本人の好みの最大公約数の美味しさ”をつくり上げていくのだ。

RICE LADY

加古さん

常に“去年より美味しく”というハードルがあります。

私たちが理想とするのは、全てにおいてバランスがとれた、“優等生“のようなごはんです。粒が大きく膨らみ張りがある。表面の崩れが少ない。そして、白く透明感がありツヤがある。口に含むと一粒一粒がほぐれ、噛むたびに適度な弾力があり、粘りがあるけどベタつかない。しかも粒の中心まで柔らかく、最後まで適度な甘みを感じられること。毎年、“去年よりもっと美味しく”という取り組みで、“もうこれ以上美味しくできない”というところまで突き詰めていく。常に味わいのハードルと向き合っています。

目指すは、かまど炊きを超える炊き技

電気炊飯器をパナソニック(旧松下電器)が生産してから、2016年、還暦を迎える。1988年にIHジャー炊飯器(お釜自体が発熱し、非常に高火力で炊き上げる炊飯器)を業界に先駆けて開発。ガス炊飯器と対等の美味しさをつくり上げ、これまで30年間、常に火力の進化を続けてきた。しかしいつの時代も、強火の圧倒的な高火力で炊き上げるかまどごはんは日本人誰もを感動させる。「ライスレディ」が目指すのは、かまど炊きを超える究極の美味しさなのだ。

RICE LADY

加古さん

“釜”だけでなく“炊き方”での差別化にこだわりました。

はじめチョロチョロ、中パッパ…。昔から伝わるかまどの炊き技が、美味しい火加減の基本です。実は、かまど炊きにできて炊飯器には難題だったことが、“中パッパ”です。グツグツ吹きこぼれるような強い火力で炊く工程ですが、家庭用炊飯器の場合、キッチンを汚してしまうし、吹きこぼしは絶対にNGです。火力は限りなく強く、でも吹きこぼしも焦がす心配もなく炊けること。そのための試行錯誤を繰り返しました。その集大成が、現在のWおどり炊きという炊き技です。

全国50種類以上の銘柄米の個性を把握

品種改良が進み、日本各地の銘柄米がネットで手軽に手に入る時代。そんな世の中の変化にいち早く目を向け、「ライスレディ」が取り組んできたのが、銘柄米を美味しく炊き分けることだ。全国50種類以上の産地銘柄米を、炊いて食べて分析。それぞれの個性や美味しさをとことん引き出す理想的なプログラムの作成により、現在では36銘柄にまで炊き分けを拡大することに成功している。

36銘柄の詳細はこちら

RICE LADY

加古さん

コーヒー豆のように、お米も好みで選ぶ時代ですから。

北は北海道、南は沖縄まで、どんな土地のお米を炊いて食べても、「あ、美味しいね」と言ってもらえるのが理想です。コシヒカリにはコシヒカリの、ゆめぴりかにはゆめぴりかに合った炊き方。最終的には日本中のごはんを美味しく楽しんでもらうことにつながっていくと考え、日々取り組んでいます。

銘柄別炊き分けの仕組みを解剖

米は品種ごとに、内部の組織や成分量が微妙に異なる。“銘柄炊き分けコンシェルジュ”はこれらに基づいて、主に5種類の項目で少しずつ調整を加える。例えば、前炊き時間を20〜30分、前炊き温度を30〜60℃、加圧時の電力を900〜1200Wの幅で調整し、パナソニックが考える銘柄ごとの特色やベストな味を引き出している。

代表的な4銘柄のプログラミングをチェック

  • キヌヒカリ

    兵庫など西日本で作られている品種で、炊き上がりが絹のように白くつややか。コシヒカリに近い味わいで、しっとり滑らか食感はこの品種ならではだ

    • 前炊き時間長め
    • 前炊き温度高め
    • 炊き上げ加圧時間長め
    • 炊飯電力標準
    • 炊飯時間55分

    やや柔らかめの食感だが、確かな粘りも感じられる

  • あきたこまち

    コシヒカリをルーツに持つ、秋田県のオリジナル品種。粘りと弾力性がある食感が特徴的で、炊き上がりの光沢や香りのよさでも人気が高い

    • 前炊き時間短め
    • 前炊き温度低め
    • 炊き上げ加圧時間短め
    • 炊飯電力標準
    • 炊飯時間45分

    ハリのある食感が特徴的。すっきりとした風味が際立っている

  • コシヒカリ
    (魚沼産)

    新潟県魚沼地域で生産されるコシヒカリ。周囲の高い山々から流れ出す雪解け水や昼夜の寒暖差により、甘みや粘りが際立つ。冷めても美味しいとの評判もある

    • 前炊き時間長め
    • 前炊き温度低め
    • 炊き上げ加圧時間加圧なし
    • 炊飯電力標準
    • 炊飯時間60分

    みずみずしい食感。雑味が少なく、甘みが際立っている

  • コシヒカリ

    東北から九州まで全国各地で生産されている、国内生産量第1位のメジャー品種。粘り、甘さ、柔らかさのバランスが取れていて、根強い人気を誇る

    • 前炊き時間標準
    • 前炊き温度標準
    • 炊き上げ加圧時間標準
    • 炊飯電力標準
    • 炊飯時間48分

    やや柔らかめの食感。口に含むと粘りと甘みが感じられる

    • 前炊き時間
    • 前炊き温度
    • 炊き上げ加圧時間
    • 炊飯電力
    • 炊飯時間

(GoodsPress 2015年10月号掲載)

炊飯文化を耕し、そして広める

2013年、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食。その主食であり、日本人の心とも言えるごはんの美味しさを支えていくのが、炊飯器。でも、それだけではない。炊飯器を開発することは、日本の米づくりや食文化のこれからと向き合うことだと、パナソニックは考える。日本の食をますます元気にするために、「ライスレディ」の仕事は果てしなく続く。

加古さおり

IHCH技術部
炊飯器・IHCH調理ソフト課

課長 加古さおり

1992年にお茶の水女子大学の食物学科を卒業し、パナソニック(旧松下電器)に入社。これまでの開発で世に送り出した炊飯器は、20機種を超える。現在進行しているのは、最新機種の「Wおどり炊きシリーズ」。いつでも「炊き比べ」ができるように、自宅にも5台以上の炊飯器があるという。

活動報告
  • 北海道

    「第5回米-1グランプリ  in らんこし」

    2015年11月21日(土)

    特別審査員として全国からエントリーされたお米の食味審査をしました。
    コンテストではWおどり炊き搭載機種 SPX5シリーズが使用されています。

    2011年11月 蘭越町の生産者自らが主体となり全国規模の米コンテストを運営。『安心安全で美味しいお米の生産をより実感していただきたい』との強い思いから、翌年の第2回大会からは予選審査方法を機械審査から食味官能審査に改め15名の審査員による審査を実施。日本一美味しいお米を決める一員としてライスレディ 加古が参加させていただきました。

  • 福島

    「第10回農業総合センターまつり 」

    2015年9月12日(土)

    Wおどり炊きのご紹介と、銘柄炊き分けコンシェルジュ機能に搭載の“天のつぶ”の美味しい食べ方をご紹介しました!

    講演後、Wおどり炊きで炊いた”天のつぶ”の試食サンプリングを実施。地元の皆様に美味しさを実感していただきました。

  • 山形

    Beautiful JAPAN towards 2020

    2015年

    未来のアスリートたちとその親御さんに美味しいごはんについて伝え、実食してもらいました。「食」を通じて彼らを応援する「食育の取り組み」です。

  • 石川

    「第17回 米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」

    2015年11月22日(日)

    お米のコンクールとしての規模、出品数共に、国内最大の大会。最終審査である官能評価の審査員として、ライスレディ 堀内が参加させていただきました。

  • テレビ東京

    「ガイアの夜明け」(テレビ東京)

    2015年5月12日(火)

    ライスレディの3ヶ月におよぶ密着取材を通じて、Wおどり炊きの開発秘話をご紹介いただきました!

  • 朝日放送

    「キャスト」(朝日放送)

    2015年10月5日(月)

    【新米をもっとおいしく!最新炊飯器】特集で、ライスレディ加古が語るWおどり炊きの炊き技をご紹介いただきました。