「備災」をカタチにするパナソニックの取り組み


近年、甚大な被害をもたらす大規模な自然災害が多発している。これからの防災に重要なキーワードは「電気」。アイデアと技術を背景にした、パナソニックの取り組みにフォーカスしてみよう。
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防災の意識とリアルにギャップが生じている
地震、台風、集中豪雨、豪雪など、近年は多くの自然災害が広域で発生。今や、いつ誰が被災者の立場になってもおかしくない状況にある。「災害は忘れた頃にやってくる」ではなく、「いつやってきてもおかしくない」のだ。
パナソニックの調査※1によると、「自然災害に不安を感じているか」の問いに対して、約7割が「感じている」と回答。しかし、「実際に自然災害への備えをしているか」という問いに対しては、「できていない」と回答した人が7割超。理由として最も多かったのは、「具体的に何から始めればいいのかわからない」だった。
一般的に災害発生から最低でも3日、できれば7日間は自力で乗り越えられる備えが必要といわれている。その際、家族や勤務先との連絡、情報収集などに使うスマートフォン、夜間の照明などが必需品となるため、停電によって電気の供給が途絶えることへの備えは特に重要だ。
実際にどれくらいの備えが必要かというと、例えば単3形乾電池なら、明かり・ラジオ・スマートフォンの充電も含めて3日で1人当たり17本が必要とされている。3人家族なら47本が必要(ラジオは家族で1台使用と想定)といわれているが、これだけの備えをしている家庭は多くないだろう。
では、備災はどこから始めればいいのか。パナソニックはこれまで、「いつもの便利×もしもの備え」というコンセプトで、災害時にも役立つ製品開発を行ってきた。近年の災害被害の甚大化に伴い、2020年より防災に寄せた「もしもの備え」というキーコンセプトにし、製品展開および発信を強化しているという。

パナソニックの「もしもの備え」は、「何から始めればいいのかわからない」への明確な解答になるはずだ。ここでは、「1人でも多くの人の役に立ちたい」というパナソニックが掲げる「もしもの備え」の2つの備災アイテムに焦点をあててみたい。

※1 20代~60代の男女2000人(内1000人は10年以内に自宅で、「自然災害」に起因する5時間以上の停電を経験)を対象にパナソニックが独自で行った調査
どのサイズの乾電池でも1本から使える究極のライトを
最初に取り上げる備災アイテムは「電池がどれでもライト」。パナソニックは2005年に単1~単3形電池の、同サイズの新品乾電池2本で使用できる初代の「電池がどれでもライト」を発売。当時は画期的なアイデアの商品と話題になった。しかし東日本大震災の直後に、懐中電灯などに使われることの多い単1、単2形電池がさまざまな店頭から消えてしまったことや、初代どれでもライトは単1~単3形のいずれかの新品電池2本を使うのが前提で、別の機器で使用中の電池を抜き取って使用することは不可とされていたことから、まだ改良できるのではないかと思い当たったという。
「手元に懐中電灯があっても、使える電池がなければ意味がありません。そこから、もしものときに本当に役に立つ“究極のライト”を作ろう、という発想が生まれました」
そう語るのは、パナソニックで電池応用商品企画担当を務める杉山健人だ。当時、開発に当たり、家庭にある乾電池の数量を調査したところ、最も保有数が多いのは単3形電池、その次が単4形電池だと分かった。そこで、単4形電池も使え、さらに新品ではなく使いかけの電池でも、液漏れなどのリスクを抑えて使える。つまり、家にあるどんな電池でも1本から使える仕様を目指したという。
開発者が苦労したのは、まさに「どんな乾電池でも」の部分だったと杉山は明かす。

「回転するRR(Round Rotary)スイッチを採用し、ライトの先端を回転させることで、各電池に触れる端子を移動させる仕組みとなっているのですが、メーカーや乾電池の種類によって突起の高さが微妙に異なるため、端子を的確に当てるところに苦労しました。いろいろな方法を試し、最終的に、電池に触れる端子の下方向にバネを使い、バネ圧によって、高さが違っても安定して接触できるように設計しています」
単1~単4形までの電池をそれぞれの部屋に1本ずつ入れられ、カチカチとRRスイッチを回して、電池を出し入れすることなく電池を切り替える構造はパナソニック独自のもの。新品のエボルタNEOを入れておけば、最長約97.5時間もの間照らすことができる※2。新品電池に限らず、例えばテレビのリモコンから外した使いかけの電池を、1本入れるだけでもライトとして使える。

回転式の切り替えスイッチで単1~単4形の電池まで対応する。コンパクトサイズ(幅約135mm)、握りやすいハンドルも備えているため、子どもでも持ち運びしやすくなっている。ランタンとしても使用可能
「漏斗形状のファネルシェードを内包し、正面だけでなく側面も常に光っている仕様のため、床置きしてランタンとしても使用できます。防滴構造だから小雨くらいなら濡れても大丈夫です」
使い勝手の良さは抜群で、確かに、防災目線での“究極のライト”といえそうだ。

※2 乾電池エボルタNEOを単1形~単4形まで全サイズ使用時の合計時間。連続使用時は、各サイズのスイッチの切り替え作業が必要です。(単1形:約55時間 単2形:約27時間30分 単3形:約11時間30分 単4形:約3時間30分)
1台3役でライフラインを確保する
もう一つ注目したい防災アイテムは電池式モバイルバッテリーとして使える「USB入出力付急速充電器」である。災害時の情報収集、連絡手段に欠かせないスマートフォンだが、バッテリーが切れたら当然使い物にならない。台風、地震などの大規模な自然災害は停電を招くことが多く、2018年の北海道胆振東部地震の際は日本で初めてとなるエリア全域におよぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生、スマートフォンを充電するため、長蛇の列ができる光景がニュースでも報じられた。


北海道胆振東部地震の際の停電でスマートフォンの充電待ちをする行列(=2018年9月6日午後、札幌市中央区)(写真/時事)
「電気というライフラインが寸断されたときの不自由さを思い知りました」と語るのはパナソニックで二次電池商品企画担当を務める阿部巧。開発者はこのときのニュースをテレビで見て災害時にはスマートフォンを充電する電池式のモバイルバッテリーと明かりが必要と考え、その不自由さを解決するために、従来からあるニッケル水素充電器に、モバイルバッテリーとライト機能を付加することを検討し始めたという。
「ただ、単に充電器にモバイルバッテリーとライト機能を付けても、ニッケル水素電池が必要数量充電されていなければ、不自由さの解決には至りません。そこで考えたのが、比較的容易に入手できる乾電池も使えるようにすることでした」
これは、電池業界では常識破りの発想である。種類、残量の違う電池を使用することで、漏液などトラブルの可能性が高まってしまうからだ。

「モバイルバッテリーとして出力する場合、電池の種類や容量が異なる電池を使うと、容量の少ない電池が過放電され、液漏れする恐れもあります。そこで、当社独自の技術となる、出力コントロールとバラツキ補正を行い、過放電に至る前に自動停止する機能※3を新たに開発しました。また、乾電池は充電(入力)すると発熱、液漏れ、最悪の場合は破裂もあり得るため、絶対に充電できません。うっかり電池を混ぜたまま充電しようとした際には、乾電池とニッケル水素電池を自動的に判別し、乾電池には充電しないなどの安全機能※3も開発の苦労したところでした」


電池の状態を1本ずつセンシングし、残容量のバラツキを補正。出力モードをコントロールすることで高効率の出力が可能に。過放電を防ぐ自動停止機能も備えている。
こうした技術を背景に生まれた「USB入出力付急速充電器」は、普段は充電器として使いながら(入力)、入出力の切り替えによって、スマートフォンなどへの充電(出力)も可能なモバイルバッテリー機能も搭載している(エネループでiPhone Xクラスのスマートフォンを約50%充電可能)※4。また、付属のLEDライトアタッチメントを装着すれば、手持ちのLEDライトとしても使用可能だ(点灯時間は約11時間)※4。

ニッケル水素電池の充電(入力)、スマートフォンなどの充電とライト(出力)、1台で3役をこなす。出力時は電池の状態に合わせて出力電流を切り替え、効率的に多くの電力量を取り出せる。
ニッケル水素電池の充電器、スマートフォンなどの充電、さらにLEDライトという1台3役。しかも、スマートフォンの充電とLEDライト使用時なら充電池も乾電池の混合使用も可能なため、単3形が4本そろえばOK。有事の際にはスマートフォンを充電して安否などを離れた家族や友人、職場などに連絡できる。現在、リチウムイオン電池の充電式のモバイルバッテリーが主流だが、使い切ってしまうと当然停電時には使えない。だからこそ「もしもの備え」として1つは持っておきたい商品だ。
パナソニックは1931年の自社生産に始まり、2020年には乾電池のグローバル累計出荷数量が2000億個を突破するなど、電池業界をリードしてきた。「1人でも多くの人の役に立ちたい」という熱い想いと電池を知り尽くしたパナソニックだからこその商品といえる。
※3 BQ-CC87・91をモバイルバッテリー・LEDライトとしてご使用いただく場合に限り、個別制御機能(電池の状態を個別に判別・制御する機能)が搭載されていますので、乾電池や容量・種類・銘柄の違う電池を混ぜて使用できます。他の機器でご使用いただく場合、電池の混合使用はお控えください。
※4 満充電したエネループ(BK-3MCD)4本を使用した場合の目安。使用状況や周囲温度によって変化します。
「備災」をキーワードに検討を始めよう
巨大台風、記録的な集中豪雨など、このところ毎年のように甚大な被害をもたらす自然災害が発生していることもあり、防災需要は高まっている。2021年1月にも、北陸、東北では豪雪による停電がニュースとして報じられた。自然災害は対岸の火事ではなく、いつ巻き込まれてもおかしくないのである。
ここで取り上げた2つの製品にとどまらず、パナソニックは今後、災害に備える文化・風土を醸成しながら、製品開発において「備災」の視点を広げていく予定だという。災害への備えとして「何から始めればいいのかわからない」なら、これを機会に防災・備災グッズの検討を始めてはどうだろうか。
もしもの時に頼りになる電池防災
乾電池からライトやバッテリー・ラジオまで、もしもの時に頼りになる電池防災グッズをご紹介。
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