47都道府県のアスリートたち

北海道

コンセプトは「北海道から世界へ」。高め合える仲間と世界を目指す

2019年07月24日

写真:ハイテクACインドアスタジアムのトラックに立つ4人の選手たち

北海道恵庭市、人口が7万人に満たない小さな街に世界を目指して活動するクラブチームがある。北海道ハイテクアスリートクラブ(ハイテクAC)だ。東京2020オリンピックを視野に入れながら、それぞれの夢に挑む4人の陸上選手と中村監督に会ってきた。

北海道から世界を目指す、4人のアスリートたち。

写真:インタビューで椅子に座り話す島田さん、北風さん、馬場さん

陸上部門には、4名の成人選手が所属している。
クラブ最年長で女子4×100mリレー日本記録ホルダーの北風沙織(きたかぜ・さおり)さんも、その1人だ。

写真:インタビューに答える北風さん

「『北海道から世界へ』がチームとしてのコンセプト。世界を目指している人たちが集まっているので、一緒にトレーニングするときも、みんなが同じ目的意識を持って練習できている。相乗効果があるチームなのかなとは、すごく思います」(北風さん)

写真:インタビューに答える島田さん

100m、200m、400mの短距離を主戦場とする島田雪菜(しまだ・ゆきな)さんは言う。
「頑張れる環境って1人では作れないので、みんなでオリンピックを意識して練習できるのは幸せだし楽しいなって思います」(島田さん)

写真:インタビューに答える馬場さん

男子で唯一の所属アスリートとなる100mの馬場友也(ばば・ともや)さんは、自分にとってのチームの価値を端的に語ってくれた。
「共に高め合える仲間。以上(笑)」(馬場さん)

写真:インタビューに答えるきょうやさん

「夢を叶えるための場所ですかね。競技に専念できる環境が北海道にあまりなくて。なかなか一人で活動していくのって難しいので、ハイテクACがなかったら、もしかしたら今の自分は、北海道にいないかもしれないですね。」

そう話すのは、走高跳の選手、京谷萌子(きょうや・もえこ)さん。競技と出会い徐々に才能を開花させると、インターハイやインカレ、日本選手権などの主要大会で優勝を経験。国内トップクラスのハイジャンパーとして知られるようになった。現在は、教員として働きながら競技を続けている。

教員をしながら、世界を目指すという選択。

「最初に走高跳をはじめた小学校4年生のとき。わりと身長も大きかったので『あなたは身長高いから走高跳なんていいんじゃない』って、そのときの先生に言われたのがきっかけですね」

写真:練習の合間に笑顔を見せる選手たち

「学校にいて、先生をして、教えて、というところにばっかり身を置いてると、競技者としての自分というものがちょっとずつ薄れてきて。やりたいと思っているのに薄れてくるから、自分の中でうまくいかなくなったりもするんですけど。みんなに会うとちょっと戻ってくるというか。沙織先輩のお子さんの話とか、雪菜が最近こういうことあったとか。馬場さんはいつもあんな感じですし。この人たちと世界を意識して一緒にやっている自分がいるなっていう再確認というか、再認識できるんです。自分が保たれるというか、そういうのは感じますね」(京谷さん)

写真:ウエイトトレーニングをするきょうやさん

「朝から夕方は学校の仕事だったり部活動だったりがあるので、それが終わって8時から9時とか、短時間でガッと集中してウエイトやったり、家に帰って補強をしっかりやったり、平日はそんなふうに練習しています」

ハイテクアスリートクラブの設立は2006年。代表を務める中村宏之監督が恵庭北高校女子陸上部の監督を兼務していたこともあり、京谷さんも練習のために施設を訪れていたという。

写真:インドアスタジアムに向かうきょうやさん

「私が恵庭北高校に入学したのと同じ年にハイテクのインドアスタジアムが出来上がって、使えるようになったんですよね。そこからいろんなものが変わりはじめていきました」

写真:インタビューに答えるハイテクAC代表の中村さん

創設当時は、日本一小さいクラブチームと言われながらも、世界を舞台に活躍するオリンピアンやトップスプリンターを次々と輩出してきた。雪の多い北海道では冬の間、屋外グラウンドでの練習ができないのに、である。練習環境のハンデを乗り越えるポイントは、練習内容にある。代表の中村宏之(なかむら・ひろゆき)監督は、自身の経験を踏まえて教えてくれた。

北海道だからできる練習が、選手を強くする。

写真:身振り手振りを交えアドバイスをおくる中村さん

「東京の大学で学んで帰ってきて、不自由な環境の方がいいなって気がついたんですよ。狭い場所、小さい場所ということは、そこで何か工夫しなきゃいけない。飽きさせないトレーニングは何かと、常に変化させて、頭の中で考えてやるっていうのが中村流です。これといったトレーニングではなくて、これがトレーニングになるのであれば、あれもできるじゃないか、あれもあるんじゃないか、と常に考えています。選手を見ていて『あ、こんなことやってみよう』とか、あるいは選手の方から教えられることもありますし。『こうだ』と断定することは、私はあまりないんですよ」(中村監督)

練習環境のハンデを乗り越えるアイデアは、固定概念にとらわれない練習となり、選手たちの強みに変わる。事実このクラブでは、狭いところで足を早く動かす練習やレッドコードトレーニング、バスケットボールまで練習に取り入れているという。雪の日の練習について、選手たちに聞いた。

写真:雪の日の練習について話す北風さん

「私も高校とか大学のときは、ここの施設はなかったので、廊下とか体育館での練習がメイン。ジャンプとか腹筋とか背筋とか。体の基礎となるような部分をメインにやっているような感じでしたね」(北風さん)

写真:雪の日の練習について話す島田さん、北風さん、馬場さん

「僕が大学のときは、靴下5枚重ねくらいして、雪上ダッシュやりました。あとクロスカントリースキーという歩くスキーがあるんですけど、クロカンダッシュみたいに、スキーを履いて『わー』ってダッシュしたことも」(馬場さん)

写真:屋外トラックで練習をする北風さん、島田さん

「短距離なんて他だったら外でずっと走れる地域もあるのに、やっぱり北海道の子たちが強いっていうのは、何かトレーニングの方法に秘密があるのかもしれません。ここでしかできない練習の仕方があるから、結果に結びついているのかなと思います」(京谷さん)

写真:北海道だからこそ、と話す中村さん

北海道という北国、雪国だからやれることがあると中村監督は考えている。
「本当にここは、すごい豪雪地帯なんです。草木だってずっと咲いているんじゃなくて、春になったらダーンと喜んで咲き誇るじゃないですか。人間も暖かい気候になると、本当に肉体も心も喜ぶというか、解放されると思うんです。それは不自由な環境、北海道でなければできないと思います」(中村監督)

弦を引く力が強いほど、矢は遠くまで飛ぶ。不自由な環境であるほど、解き放たれたときのインパクトが大きくなるということか。この地、この環境という逆境が力となり、「北海道から世界へ」を後押しする力となるのだ。

東京2020オリンピックを視野に入れながら、それぞれの夢を追いかける。

写真:屋外トラックを疾走する北風さん

「自分が現役で体を動かしているからこそ、伝えていける部分っていうのはあると思うんです。そういうのを自分の身体で体験しながら、子どもたちにも指導していきたいなっていう想いもあって掲げているんですけど、生涯現役が目標であり夢でもありますね」(北風さん)

写真:屋外トラックを疾走する馬場さん

「自分が競技を辞めても、陸上に携わっていくというのは、ずっとやっていきたいなと」(馬場さん)

写真:スタートラインで集中し構える島田さん

「自分の知らない自分を見つけてから、陸上を終えたいなと思っていて。今までと違うっていう瞬間がたまにあるんですね。それを見つけていきたいなと思います」(島田さん)

写真:いままさに走り幅跳びを飛び越えようとするきょうやさん

「『北海道って、できること少なそう』って、他の県の人に思われているかもしれません。でも、だからこそ、やれることやって、ここでだって目指せないことはないんだ、って証明したい」(京谷さん)

写真:教員としての夢を語るきょうやさん

競技者としての夢を叶えるため、北海道という場所を選んだ京谷さんには、教員という指導者としての夢もある。
「自分がすごい田舎出身で、そこから先生と出会ったことで、たくさんの経験をさせてもらった。それが今、自分の身にもなっているし、自分の人生を豊かにしてくれていると感じています。だから今度は自分が、北海道の(陸上界で)見つけられてない子どもたちを見つけて、育てて、いろんな経験をさせてあげたり、夢があるんだったら叶えてあげたりしたい。自分が今度は見つけてあげる側になれたらいいなっていうのはあります」(京谷さん)

雪が降らなければ良いのにと考えるのではなく、雪が降るなら降った中でできることを考える。受け入れて順応していく。自分がコントロールできることに集中する。そこにこのチームの強さがある。きっと、その先の道を歩むアスリートたちにも受け継がれていくはずだ。

インタビュー映像

チームのコンセプトは「北海道から世界へ」。北海道ハイテクアスリートクラブ

Youtube動画:【インタビュー】北海道でしかできない練習で、夢を叶える 北海道・陸上篇 再生する

おすすめ記事