東京2020特集

"2歳"のパラパワーリフター、マクドナルド山本選手インタビュー

2018年06月27日

写真:笑顔でインタビューに答える山本選手

日本財団パラリンピックサポートセンターの常勤職員として勤務しながら、選手としても東京2020パラリンピックへの出場を目指す女性がいる。パラパワーリフティングのマクドナルド山本恵理選手だ。2016年5月に初めて競技に触れ、パラパワーリフターとして "2歳"を迎えた山本選手に東京2020パラリンピックへの思いを聞いた。

2018年、最初に取り組んだのは"体づくり"

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実はカナダ留学時代、アイススレッジホッケー選手としてカナダ代表に選ばれたこともある

先天性の「二分脊椎症」のため歩行が難しく、車椅子で日常生活を送る山本選手。9歳の時に始めた水泳でパラリンピックを目指したものの、怪我のために断念。カナダに留学した際は、アイススレッジホッケー(パラアイスホッケー)※にも取り組んだ。

※下肢に障がいをもつ人たちが「スレッジ」という刃を二枚つけた「そり」にのって行うアイスホッケー。

その後、メンタルトレーナーや通訳としてパラアスリートを支えていたが、2016年、とあるイベントでパラパワーリフティングと出会い、再び選手として東京2020パラリンピックへの出場を目指すことを決意した。競技生活わずか1か月で37kgを挙げ、全日本選手権女子55kgで優勝。2017年は50kgまで階級を落とし、ワールドカップに出場したものの結果は振るわず、その後も低迷が続いた。しかし、12月の全日本選手権では自己ベストを2kg上回る53kgを挙げて見事優勝。「かなり不振が続いたなかでも、去年は記録を残せた形で終われた」と振り返る。

写真:競技のシミュレーションをする山本選手

55kgに増量し「チャレンジカップ京都」に臨んだ

2018年、まず取り組んだのは「体づくり」。炭水化物とタンパク質をバランスよく取り、試合の日には血糖値を急激にあげないためにこまめにレーズンを口にするなどし、以前よりも食に気をつけて5か月間かけてパワーリフターとしての体をつくり上げた。

そして迎えた2018年5月12日の「チャレンジカップ京都」では、1階級上の55kg級で出場。結果は53kgと、自己ベスト更新はならなかったが、「試技の精度がまだなってなかったんだな、というのは反省点なものの、パワーは付いているんだな、と実感できました」と話す。※試技の成功はしなかったが、57Kgを挙げたということでパワーがついているんだと実感しました。

数字にはこだわらない。自分のベストを尽くす

写真

ジョン・エイモスコーチ(左)と「ディスカッションできるようになった」という

昨年度からは世界的指導者であるジョン・エイモスコーチと共に練習に励む。パワーリフティングを始めて2年、アスリートとしては、「まだ、2歳」だと山本選手は話す。「ようやくトレーニングの中で、『こんなテクニックを身に付けたいんだけど、こうしたらどうか?』と、自分から提案できるようになりました」

怪我をしないため、また筋肉の成長を促すために、ベンチを挙げる練習は週3回。しかし、ベンチを挙げられなくても、常にパワーリフティングのことを考えているという。「パワーリフターとして10歳、20歳の選手がたくさんいる。その選手をいかに超えてくかを考えたときに、たとえベンチをしなくても、自分の方がたくさんパワーのことを考えなければいけない、と思っています。なので、たとえば食事に関しても...私は食べるのが大好きなので楽しくて食べ過ぎるのですが、トレーニングの一環だと思って食べるようにしています」

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「自分のベストを尽くす」と現在の目標を語る山本選手

9月には、東京2020パラリンピック参加のための必須条件となる国際大会「アジア・オセアニアオープン選手権」を控える。「(アジア大会は)国際審判がくるので、もっと厳しい判定になる」と気を引き締める山本選手に、挙上重量の目標について尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「ジョンにも言われていることで、自分のベストを尽くす、というのが毎回の目標。目指したいところはあるけれど、それを言葉にすると、数字は逃げて行く。パラリンピックでは80kgは絶対に挙げなきゃいけない。その数字はゆずれませんが、それまではこだわらずにやっていきたいです」

写真を通じて気づいた自分の"伸びしろ"

写真:CP +2018の会場の様子

LUMIXが記録している写真は、2018年3月の「CP +2018」で発表された。

2017年からは、山本選手の大会や練習、オフの様子などをLUMIXが写真家とともに記録している。

写真:インタビューに答える山本選手

写真を通して、自分の知らない表情に気付かされるという

「自分って試合の時こういう顔をしていたんだな、あの時悔しかったな、あの時すごくよかったな、というのが、写真を通して手に取るように毎回分かって、自分の成長も分かる。私はまだパラリンピックに行ったことがないのですが、ずっとずっと成長に向かっている選手として注目してみてほしい。"伸びしろ"でいえば、ほかのパラリンピアンより多いかもしれない。それを記録に残していただけるのは本当にありがたいことだな、と毎回思います」

2020年に向けて、あえて"今"を大切にしたい

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大会前には必ずネイルアートを施す。「チャレンジカップ京都」ではパラリンピックサポートセンターのロゴマークをあしらった

東京2020パラリンピックが2年後に迫るが、目標の照準はあえて"今"に設定しているという山本選手。

「毎回そうなんですけど、第1試技をやっているときに、第3試技まで思ってしまうと、気持ちが焦ってしまって、第1試技も挙がらなくなるんですね。その時にメンタルトレーナーに教えてもらったのが、『今に集中する』ということ。2020年に向けて、パラリンピックにはもちろん出たい。だけど、ずっと2020年を見てたら、私は2年の間に起こる面白い過程を見逃しちゃうんじゃないか、という気がしていて......。なので、今日の大会も含めて、よい経験、よい思い出として変えていって、一歩一歩進みたいと思います」

東京2020に向けて、一歩ずつ前に進む山本選手の姿を、LUMIXはこれからも追い続ける。

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