Creative! Story | IHクッキングヒーター × 西島秀俊さん

IHの未来

IHの未来は、私たちのコイルが変えていく。

写真左から
工場技術 塩口 智也
生産技術 井上 真次
調理ソフト開発 竹中 明日香
商品企画 林田 章吾
設計開発 浅野 正人

火を使わずに、鍋そのものを発熱させる。

浅野:IHとは「インダクション・ヒーティング(Induction Heating)」の略で、「誘導加熱」という意味です。その原理は、「磁力線の力で鍋底にうず電流を発生させ、そのうず電流が流れる際の鍋の電気抵抗によって、鍋そのものが発熱する」というものなんですが、もう少しイメージしやすく説明します。「磁石を使って電気を発生させる」という理科の実験を覚えていますか。

磁石の上に電線で作った輪っかを置きます。磁石が動かない状態では、電線に電気は流れないんですが、磁石を回転させてS極とN極を高速で入れ替えると、ご覧の通り電気が流れます。この原理をIHは応用していまして、「電線の輪っか」が「鍋」、「回転する磁石」が「コイル」です。コイルに高周波の電流を流してS極とN極の入れ替えを擬似的に発生させると、鍋底に電流が発生する。その電流に対する電気抵抗で鍋が発熱する。これがIHの原理です。

磁石が回転すると電気が流れる

IHの歴史は、「コイルの進化」の歴史。

林田:私たちには、IHの技術で常に一歩先を走り続けてきたという自負があります。1974年に高周波型IHを、国内で初めて商品化。1990年には200VのビルトインタイプIHを国内初で発売。そして2002年には、世界で初めてオールメタル対応IHを開発し発売しました。

<1974年>
国内初の高周波型IH

<1990年>
国内初の200VビルトインIH

<2002年>
世界初のオールメタル対応IH

浅野:実は2002年以前のIHは、使用できる鍋が鉄やステンレス製のものに限られていて、アルミや銅鍋はお使いいただくことができませんでした。というのも、アルミや銅は電気抵抗がとても小さい素材で、電流を流してもうまく発熱しないのです。電気抵抗を上げるためには、より高周波の電流を流せばいいのですが、高周波になればなるほど電流は銅線の表面にしか流れなくなり、その分ロスが生じます。そのロスは、筐体の中には到底納まらないほど大きなコイルを作らない限り、補うことができなかったのです。

コイルのサイズを変えずに、より高周波の電流を流す。その課題を解決するために、まずコイルの銅線の太さを、0.3mmから0.05mmにまで細くしました。そしてその細くした銅線を1600本束ねることで、銅線の表面積を大幅に増やしたのです。その結果、コイルのサイズはそのままに、アルミや銅鍋を発熱させるために必要な高周波電流を流すことができるようになりました。この開発には20年もの歳月を費やしました。

コイル銅線断面図 非オールメタル と オールメタル
髪の毛のように細い0.05mmの銅線
コイル銅線 非オールメタル(直径0.3mm×50本) と オールメタル(直径0.05mm×1,600本)
オールメタル非対応コイルとオールメタル対応コイル

さらなるコイルの進化で調理性能を高めた、2018年モデル。

竹中:新商品のXシリーズについては、調理ソフト開発担当者ならではの目線で、調理性能の向上にこだわったコイル開発を技術のみなさんにお願いしました。まず1つ目は、焼きムラの改善。餃子の焼きあがり写真をご覧いただくとわかると思うんですが、従来のドーナツ型オールメタル対応コイルでは、鍋の材質や形状などによっては中央部分に焼きムラができてしまうことがありました。そして2つ目が、加熱スピードのアップ。アルミ鍋や銅鍋を使って加熱したときに、鉄やステンレスの鍋と比べてスピードが遅くなってしまうことがあったんです。

 

浅野:焼きムラの改善と加熱スピードのアップ、2つの両立って実は非常に難しいんです。スピードを速くするには鍋の中心を加熱すればよいのですが、それでは逆に焼きムラが一層出てしまう。そこで開発したのが、2つのコイルを組み合わせた新形状のオールメタル対応コイルです。このコイル、中央を集中的に加熱するモードと外側を加熱するモード、2つのモードを自在に組み合わせることができるんです。餃子のような焼き物調理の時は、中央集中加熱と外側加熱を交互に切り替えてムラなく均一に。湯沸かしの時は、中央集中加熱でスピーディに。従来品より格段に調理性能をアップさせることができました。

従来オールメタル対応コイルと焼き物調理性能
新・オールメタル対応コイルと焼き物調理性能
湯沸かしスピード比較グラフ 新商品Xシリーズ3分36秒,従来品Wシリーズ5分22秒 ※市販アルミ両手鍋銅底17㎝水量1L20℃から90℃への到達時間実測データ

立ちはだかる、コイル量産化へのハードル。

井上:従来コイルと比べて、とても複雑な形状になった新・オールメタル対応コイル。これを量産化するのも非常に困難でした。樹脂のベースを量産するのも難しいのですが、何よりも難しかったのが、この複雑な形状のベースにワイヤーを素早く正確に組み込めるようにすること。銅線の束を樹脂でコーティングしたこのワイヤー、長さが32mもあるんです。
まず人の手で組み込み方を試行錯誤することから始め、ロボットの制御技術の確立など、生産設備の開発には約2年かかりました。

試行錯誤を繰り返した、樹脂ベースへのワイヤーの組み込み

大きなグリルと新しいコイルで、調理の幅を広げる。

林田:新商品はグリルも大きく進化させました。グリルにもIHを搭載しているのが当社の特長なのですが、新商品は庫内の高さを約1cm高くして、フタをつけたままの鍋でも入れられるようにしました。

塩口:それに伴い、グリル搭載コイルも新開発しました。従来の楕円形状コイルでは、専用のグリル皿でしか調理できなかったのですが、丸と四角の形状を組み合わせた新コイルなら、市販の鍋でもお使いいただけます。しかも、グリル内のどこに鍋を置いてもムラなく加熱ができるんです。

竹中:グリルで鍋ごと調理ができるので、例えば本格的なパエリアも簡単につくれます。ご家庭でできる調理の幅をグンと広げることができました。

従来品Wシリーズ:高さ90mm、新商品Xシリーズ(Wフラット庫内):101mm。鍋もまるごと入る、業界No.1の有効庫内高さに。※国内市場200V家庭用IHクッキングヒーターにおいて(2018年9月1日現在)。※グリルで使えるお鍋を使う場合。底面から天井面までの高さ(Xシリーズ)。
従来のグリル搭載コイル(楕円形)と新商品のグリル搭載コイル(丸形と四角形の組み合わせ)
パエリアを鍋ごとグリル調理

企画・開発・ソフト・生産、商品価値を高めるのは総合力。

林田:IHの普及率は、まだ25%ほど。商品の仕様をさらに良くしていくことで、世の中の人にIHの良さをもっと知っていただき、普及率を50%、70%と、どんどん高めていきたいと思っています。

井上:私の役割は、技術的な要望を具現化していくこと。そのために、モノづくりの技術をもっと高めながら、みんなの総合力で、お客様により良いものを届けていきたいですね。

IHクッキングヒーター 家庭用ビルトインタイプ 200V

KZ-CX77PW

IHクッキングヒーター 家庭用ビルトインタイプ