NEW Vol.3 新津保建秀 in ポルトガル 

LUMIX CHALLENGE Vol.3 新津保建秀×LUMIX S seriesLUMIX CHALLENGE Vol.3 新津保建秀×LUMIX S series

JPEGの撮って出しがとにかくいい。
すごく自然で、作為がない。

JPEGの撮って出し、撮ったままの色味がとにかく良かった。目で見た印象の階調が魅力的でしたね。今回の撮影ではモノクロでたくさん撮りました。ポルトガルの街は色調が結構ビビッドだったので、何て言うのか、いったん色という要素を省いて、光によって立ち上がる質感だけを見て撮りたいなと思って。写真集にするときはカラーのページも欲しいと思っていたので、RAWデータはカラーに設定しておいたけど。LUMIX S series は独自の絵作りを探っているなと思いました。この絵の方向性というかどんな方が決めているのかなと、開発者の方に会ってみたいと思ったくらいです。どのようにして、あの色味を決心していったのか、すごく気になっています。自然で作為がなく、いい意味でデジタル感がない。もうひとつは、階調が滑らかだなと思いました。自分は画素数よりも階調が大事かなと思っているんですけど、その階調にとても有機的な豊かさがあった。夕方の時間帯、海岸で撮っていたときに、あたり一面が霧で充満してきたときがあって、その霧のむこうにある人影を撮ったときの階調がとてもきれいだったんです。霧で光が拡散してあたり一面がオレンジ色の光に包まれている瞬間の、霧の向こうにかすかに見える人影が目で見たとおりに撮れていて嬉しく思いました。

あと、連写のモードがよかったですね。撮影していると、静止画と映像の中間のようなリズムで撮りたいと思うときがあるのですが、連写モードにしたらすごくよかったですね。読み込みのスピードがいいのか、その連写モードで生まれた間合いが自分はとても魅力的だなと思いました。

風景とともにポートレートも撮っていきたいですね、S1Rで。心の中を写真でどれだけ開いていけるか。写真はレンズで撮ることのできるところだけで見ちゃうと思うのだけど、そこをとっかかりにして、その向こう側を探っていけるのが理想。写らないところを探っていくのが、写真なんじゃないかな。でもそれは音楽とかもそうだし、どんな芸術もそうだと思うんですよ。見えるとこだけに終始するのではなく、結局は心を扱っていると言うか。心の中の時間を眼差したい。決して同じことは二度と起きない一期一会の瞬間とともに。

綾瀬はるかを撮影する新津保建秀

手にすごく馴染んだ瞬間があった。
カメラで風景に直接触るように無心でシャッターを切った。

最初の実感として重いなっていうのはありましたね。それでちょうど出発の数週間前に、友人のスタイリストさんが誘ってくれたファッション撮影にもってゆきました。その時は重いと思ったので三脚に据えて撮影しました。今回の撮影でも最初は三脚を据えて綾瀬さんを撮っていこうかなと思ったんですが、そうするとちょっと流れが止まってしまうので、手で持って撮ることにスイッチしました。そのときにはもうかなり慣れていたので、最初に感じた大きいとか重いなという感じは、あまりなかったですね。むしろ、その重さと大きさが手に馴染んできました。

特に、撮影の最終日に本当に自分の手と撮影するときのリズムに馴染んだ瞬間があって、そのときはファインダーを覗くことなく、モニターを見ることなく、片手で夢中になって撮っていました。あまり厳密に撮るんじゃなくて、ファインダーを見ないで光で照らされた様々な質感の表面を、手のかわりにレンズを使って触れていくような感じ。個々のモノというよりも、その場所自体に触っていくような感じですかね。すごく触覚的に像が捕らえられた。そのときは、とても楽しかったですね、撮っていて。そういったとき、この重さが丁度いいんだなと思いました。少しこう、自分にちょっと負荷がかかるくらいの重さが。そうやって無心で撮っていくと、予想してなかったものが撮れているんですよ。そういう時ですよね、道具としてのポテンシャルを感じるときは。

次回は、このカメラで建築とか都市の風景写真を深めていくと面白いのではないかと思いました。建物や景色に直接触っていくような感じで。その過程で、「地霊(ゲニウス・ロキ)」というか、その土地が持つ文化的・歴史的・社会的な背景などの写真には直接写らないものを探っていけたら最高ですね。

海岸にて綾瀬はるかのシルエット

ふだんは三脚が多いけど、今回はほとんど手持ち。
オートフォーカスがよかった。

バッテン(十字)でフォーカスポイントをピンポイントで選択できるモードがありますよね。あれが仕事では役に立つなぁという印象がありました。厳密にフォーカスを合わせることができるので。あとは、オートフォーカスの…人の顔に反応する顔認識がすごく精度が高いなぁと思いました。だから人を撮るときにはいいんじゃないかな。普段使っているカメラよりいい。まぁそもそも、普段はほとんどマニュアルフォーカスなんです。三脚を据えて。実はオートフォーカスに満足がいったことがなかったんです…。基本的に三脚を据えて撮ることが自分は多いので、フォーカスの良し悪しは、ハッキリは言えないです。でも今回のロケで言うと、三脚は全体で1割くらいで、ほとんど手持ち。出発前にオートフォーカスのリズムを把握していったから、そんなに不便はなかったです。スポーツとか撮る方の感想はちょっとわかんないけど。

ディスプレイを覗く新津保建秀

ファインダーは自然の光の美しさが大事。
覗いた時にグッとくるのがいい。

プリズムファインダーの光は目が疲れないだけでなく、光自体が美しいというのもある。その美しい自然の光に一回気持ちを乗せて撮るってような感じですね。たとえば、4×5大判カメラもそう。レンズを通ってピントグラスに届いた瑞々しい光の美しさというのがあって、それが自分の目の中に入ってきたときに立ち上がった触覚的な感覚に応答するように撮る。メーカーの人は光を写真という枠の中で捉えすぎていると思う。光と人間の知覚の関係をどのように解釈していくかによって、変わるのかな…とは思いました。対象を、すごくシンプルなフレームで見て、それをこう像に定着させていく、みたいな感覚です。

マーケットで綾瀬はるかを撮影する新津保建秀

いろんなレンズを試してみたい。
S1Rはそう思わせてくれるカメラです。

まず思ったのは、この素直な絵作りができるカメラで、いろんなレンズを試してみたいってことです。このボディの性能と愛着あるレンズを組み合わせると、どんな絵が撮れるのかなっていう興味はすごくありますね。S1Rも変換アダプターを使って、いろんなレンズが使えるようになっていると思うんですけど、そこがこう、よりもっと使いやすいとたくさんの人が使いたくなるんじゃないかなと思いました。最近カメラマンの人でもアナログレンズを変換アダプターでつなげて撮るっていう人もかなり増えてきているので、そこが使いやすいと、手に取りたいと思う人がもっと増えるんじゃないかなと思いました。

今はまだ少し手間がかかってしまうというか、電源を入れるたびに設定を確認する画面が出てきてしまって。その時間がシャッターチャンスを、特に手で持ってポートレートを撮る場合、ワンクッション、遅れてしまうんですよね。三脚を据えての静物撮影とかならいいかもしれないんですけど。カメラって、やはりレンズとボディのセンサーというか色の設計の相性だと思う。だから、S1Rのボディで、自分が持っているライカMレンズがどういうふうになるのかなというのが、今、一番興味があるところです。

綾瀬はるかと談笑する新津保建秀

理想のカメラは、予測可能性じゃなくて
予測不可能性をはらんでいる道具。

今のS1Rは非常に完成度が高くて、どんな人にもちゃんと応えてくれるものになっていると思います。いろいろ想定している状況があって、カメラがそれに的確に応えるようになっている。だからこそ、徹底的に間引いていったときに、どういったものが残るのかというのが気になりましたね。デジタルならではの究極のシンプルさとは何なのかって。自分が思うのは、例えば先日ある画家の方と話していたとき、キャンバスに塗った下地がうまくいったとき、描く作業がどんどん発展してゆくときの話になったのだけど、このようなカメラがあるといいなということです。うまく下地ができたキャンバスは偶然に対して開かれていて、その前に立った時に触発されます。撮影のときに偶然に対して開かれているというのが道具としての課題だと思うんですよ。デジタルカメラという道具でも、偶然が、『あれ?こんなことが起きるんだ』というのがあるといいな、と思っています。

フィルムカメラが受けてる理由ってちょっとブラックボックスな構造の中に、先ほど言った触覚性が潜んでいるところが好まれてるんじゃないのかな。それを外にある様々な要素が作用して予想を超えて偶然が起きるっていうか。画像が非常に露出オーバーやアンダーになっても対象からのリアリティが保持されている。たとえば8ミリのフィルムで端っこがたまたま露光しちゃってるときとか。デジタルカメラで、画像のエラーではなく、ああいう偶発的なものがあるのかなとか。このS1Rの完成度で、何か偶然が起きたら…。撮影者が想定してなかったことをどう起こすかが肝な気がしています。今回自分の場合はそれをファインダーを見ないで撮ることで、その偶然性に期待したのかも。

カメラの進化とは逆行なのかもしれないけど予測可能性じゃなくて予測不可能性をはらんでいる道具っていうのがいいと思う。絵具とか筆とか、ああいうシンプルな道具でわざわざ絵を描いたりするというのは、シンプルで少し扱いづらさをもった道具はそれを自分に馴染ませていく過程で、想定外のことをも表現に取り込んでいける余白がある。どこか曖昧さを含んでいる道具がいいですね。閉じていない、完成しきっていないカメラ。ちょっと不便だったり、負荷があったり。だからこのS1Rの重さ、このちょっとした負荷がよかった。

カメラを上に向けて撮影する新津保建秀
新津保建秀

1968年東京都生まれ。写真家。
東京藝術大学大学院美術研究科修了。
主な作品集:「\風景」(角川書店)「Rugged TimeScape」
(池上高志との共作、FOIL)など。
主な展覧会:
「Object manipulation」(statements、東京、2017)、
「北アルプス国際芸術祭」(大町市、長野、2017)、
「文化庁メディア芸術祭 海外メディア芸術祭等参加事業
シンガポール企画展 Landscapes:
New vision through multiple windows」
(Japan Creative Centre, シンガポール 2017)

新津保建秀プロフィール

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