評論家・開発者インタビュー RP-HD600N / RP-HD500B

音質やデザインも納得の完成度! 心地良さを重視したノイズキャンセル機能が新鮮! パナソニック ワイヤレスステレオヘッドホン RP-HD600N 音質やデザインも納得の完成度! 心地良さを重視したノイズキャンセル機能が新鮮! パナソニック ワイヤレスステレオヘッドホン RP-HD600N

今や高い人気を誇るBluetooth®内蔵のワイヤレスヘッドホン。ワイヤレスというと、音質よりも利便性というイメージがあったが、Bluetooth®のためのICなどの音質向上も進み、音質にこだわったワイヤレスモデルも数多く登場してきている。パナソニックも、ワイヤレスの快適さを備えながらも、しっかりと音質にこだわったモデルを投入してきた。それが、RP-HD600N / HD500Bだ。

左からRP-HD600N-K(ブラック)、RP-HD600N-G(オリーブグリーン)、RP-HD600N-T(マルーンブラウン)、RP-HD500B-K(ブラック)

両者の違いは、RP-HD600Nがノイズキャンセル機能とボイススルーを備えているという点だけ。ハウジングなどボディの設計も同じだし、使用するユニットも同一となっている。ノイズキャンセル機能の有無で内部の電子回路が多少異なるので、音質にはわずかな差が生じるが、音のチューニングとしてはどちらのモデルも同じ方向性で仕上げているという。

そのほかRP-HD600Nは、ブラックのほか、オリーブグリーン、マルーンブラウンの3色が用意されるが、RP-HD500Bはブラックのみ。付属する収納用のアイテムもRP-HD600Nはキャリングケース、RP-HD500Bはキャリングポーチという違いがある。

キャリングケース(左)とキャリングポーチ(右)には、ヘッドホン、USB充電ケーブル、着脱コードを収納できる

ワイヤレスながら高音質をアピールするモデルは多くのメーカーから登場しはじめているが、RP-HD600Nもなかなか気合いが入っている。

口径40mmのドライバーユニットには、有線接続の高音質モデルのRP-HD10や、テクニクスのEAH-T700でも採用されている超多層フィルム(MLF)振動板を採用。数百層も積層された多層フィルム構造により、優れた音響特性を実現している。振動板が玉虫色の光沢を持っている見た目も独特な魅力がある。

また、ドライバーユニットは、新開発の「制振フレーム」によって支えられており、不要なユニットの振動を抑え、広がり感のある音を実現している。

超多層フィルム(MLF)振動板

制振フレーム

Bluetooth®によるワイヤレス接続は、標準コーデックのSBCだけでなく、高音質コーデックであるAACやLDAC™、Qualcomm® aptX™ HDに対応。使っているプレーヤーがLDAC™のみ、またはaptX HDのみということは少なくないが、どちらにも対応できるというのは便利だ。

なお、LDAC™は今年登場予定のAndroid 8.0の標準コーデックとして採用されることが決まっており、Android端末を中心にますます対応モデルが増えていくことが予想される。この流れに一足早く対応しているわけだ。再生機器側の環境が整うことで、今後はますますワイヤレスの高音質化が期待できそうだ。

不自然さをなくすことにこだわったノイズキャンセル機能を試す

まずは、RP-HD600Nの大きな特長であるノイズキャンセル機能について試してみた。

RP-HD600Nのノイズキャンセル機能は、マイクをハウジングの外側に装備するフィードフォワード方式と、ドライバーユニット側にマイクを配置するフィードバック方式の両方を組み合わせたハブリッド型。飛行機や電車、屋外、屋内とさまざまな環境に合わせて切り替えられる、A、B、Cの3つのモードを用意している。

ノイズキャンセルの強度を切り替えるボタン

強度を切り替えながらノイズキャンセルの実力を検証

各モードの違いはノイズキャンセルの強度で、Aが強、Bが中、Cは弱となっている。ところが実際に試してみると、単純な強、中、弱とは違う感触だった。

モードA(強)は、低域から中高域の広い帯域のノイズに効いており、実際に周囲のノイズのほとんどがかなり低減される。音楽を再生せずにノイズキャンセルだけ効かせた状態では、近くにいる人の声は多少聴こえるが、それでも耳障りにならない程度に弱まっている。

モードB(中)は、ちょっと面白いことに、3つのモードの中で一番中低域のノイズが目立つ。静かな部屋のエアコンや換気のためのファンの音が聴こえてしまう。ノイズキャンセルオフに比べれば多少静かになっているのだが、ほかのモードと比べると周囲のノイズが耳に入る印象だ。

モードC(弱)は、中低域のノイズをきちんと抑えているが、中高域のノイズはひろってしまうという印象。屋外や電車内といった騒がしい場所ではノイズキャンセル効果が足りないと感じるが、静かな室内だと騒がしさも気にならず、耳に付くエアコンなどの動作音がスッっと消える。

【モードA】ノイズキャンセル強度:強 乗り物をはじめ、様々な場面でノイズキャンセル効果を求める方向け
【モードB】ノイズキャンセル強度:中 外出先でノイズキャンセル効果を求める方向け
【モードC】ノイズキャンセル強度:弱 ノイキャン効き過ぎによるストレスを感じやすい方や、室内の静かな場所でもより静寂を好まれる方(受験生等)向け

好みに合わせてノイズキャンセルの効き具合を選択できる
※ 特性はイメージです。

各モードの違いについては、ノイズキャンセルに使う周波数帯をコントロールしているのかと思ったが、そうしたチューニングだけでなく、フィードフォワード方式とフィードバック方式のノイズキャンセル量のバランスを変えているのだという。

この2つの方式を利用するのは、ノイズキャンセル機能を使ったときの違和感をなくすため。ノイズキャンセル機能の効果は、アクティブにノイズを消すことが難しいとされる中高域帯まで拡大しているという。

グラフ「広帯域に平均的に効いている」

中高域帯までノイズキャンセルの効果がある
※ 特性はイメージです。

ただし、単純にキャンセル量を強めてしまうと、耳なりのようなキーンとした感じや、無響室に入ったときの閉塞感を感じてしまい、静かだが不自然な感じになってしまう。そうした違和感のある静かさではなく、心地良い静けさを求めて、チューニングされているというわけだ。

実際に屋外を歩きながら使ったり、電車の中や街の喫茶店などいろいろな場所で試してみたが、騒がしい場所ではモードA(強)というような選びかたというよりは、聴き心地の良さ、使いやすさで選んでいた。

電車の中や地下鉄のホーム内といった騒がしい場所はモードA(強)が良好だが、モードC(弱)も案外相性が良い。というのは、車内のアナウンスなどが少々耳に入るので、音楽に夢中になって乗り過ごさずに済む。低周波域だけのキャンセルでも騒がしさはずいぶん解消される。

モードA(強)は、他社のノイズキャンセル機能と比べて見劣りすることのない実力がある。それでいて、ノイズキャンセルの不自然さは少なく、聴き心地の良さが大きな特徴と感じた。

モードB(中)は、近くの自動車の走行音などが聴こえるので、路上などを歩いているときに使うのが良さそう。ただし聴こえにくくなるのは確かなので、安全には注意して使用したいところ。静かな室内だと暗騒音がちょっと耳に入るが、完全に周囲から遮断されず、適度に周囲の様子がわかるので使い勝手が良い。

モードC(弱)は、静かな部屋で心地良く過ごすのにぴったり。不快な暗騒音はしっかりと除去されるので静けさは十分だし、それでいて過度に静かすぎて不自然になることもない。感覚的には心地よい風が吹いている森の中で音楽を聴いている感じ。風の音や木々のざわめきは騒音レベルでいうと不快なほうなのだが、多くの人は心地よさや静けさを感じる。そんなイメージだ。

筆者自身も意外だったが、数日使っていて一番好ましいと感じ、比較的よく使っているのは、暗騒音が目立つモードB(中)だったりする。耳ざわりになりやすい中高域を中心としたノイズキャンセルは、案外使い勝手がよく、屋内、屋外を問わず幅広く使える。

こうした使用感は筆者の印象なので、すべての人に当てはまるものではないし、自分の好みで使いわければいいと思う。

ちなみに、ノイズキャンセル+音楽再生で周囲の声やアナウンスが聞こえないときは、右側のハウジングの上側を手で押さえると、音楽をミュートし周囲の音をマイクで拾って再生する「ボイススルー」モードになる。

使ってみて良さを感じる装着感とシンプルなデザイン

RP-HD600Nを数日間使ってみて気付いたのは、装着感の良さだ。一般的なヘッドホンは、ハウジングをホールドするハンガー部分がヘッドバンドに接続されているが、RP-HD600N / HD500Bはハウジング部に3Dボールジョイント機構が採用されている。

普段オーバーヘッドタイプのヘッドホンを装着するときは、ハウジングを耳に当ててからぴったりフィットするように微調整することが多いのだが、RP-HD600Nだとスポっと被る感じでハウジングを耳に当てれば、微調整することなく優れたフィット感が得られる。

このフィット感は、3Dボールジョイント部が上下左右だけでなく、中心軸方向にもわずかに動くことにより実現されている。一般的なハンガータイプほど可動範囲が大きいわけではないが、最適なフィット感を得るには十分な範囲で柔軟に可動するようになっている。

また、イヤーパッドの形状も人間工学に基づいて設計された形状になっている。

最近のイヤーパッドは上側と下側でパッドの厚みが違うことが多いが、それもピタリとフィットさせるための形状だからだ。平面的な形状だと、下側にすき間ができやすいためだ。

RP-HD600N / D500Bの場合は、さらにパッドの前側と後ろ側でも厚みが違う。後ろ側のほうが厚みがあり、なかなか複雑な形状をしている。どうしてなのか、それは自分の耳の後ろ側をさわってみればわかる。上側や前側に比べて、一番広がりのある形をしているのが耳の後ろ側~下側なのだ。

パッド内部は低反発ウレタンフォームが充填されていて、耳の周囲全体にぴたりと密着する感じだ。密着度は高いが肌触りはさらっとしていて不快さも少ない。

筆者はわりと汗っかきで、密閉型のオーバーヘッドタイプは蒸れを感じることも多いのだが、これだけフィット感が高いのに、長時間装着していても汗や蒸れで不快になることが少なかった。これは、ちょっと使ってみただけではわかりにくいが、見逃せない大きな魅力だ。

また良い意味でヘッドホンらしくない、シンプルなフォルムも好ましい。ハンガー部がないためヘッドバンドからハウジングに連なるラインがストレートで、メカっぽさがなく、実にスマートだ。

カラーにしてもしっとりとしたマット調の仕上げに、ヘッドバンドの両端とハウジング周囲のリングをメタルパーツとするなど、落ち着いた印象ながらちょっとしたアクセントを加えて質感を高めている。

装着したまま街中を歩いていても、オーバヘッド型の大げさな感じはしないから気にならないし、落ち着いたカラーも含めて、服装などにも合わせやすい。派手さはないが、大人が使っても恥ずかしさのないデザインだ。ファッション性は好みもさまざまだが、こうしたモダンで落ち着いたデザインは、使う場所を選ばずに愛用できると思う。

ワイヤレスと有線で音質をじっくりとチェック

では最後に本機の音質について紹介しよう。まずはBluetooth®によるワイヤレス接続。使用したプレーヤーはAstell&UltimaのSP1000で、コーデックはaptX HDだ。

最近愛聴している「交響組曲ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」から「序曲」を聴いたが、Bluetooth®接続による高域の荒れた感じや音の痩せた感じもなく、スムーズで聴き心地の良い音だ。解像感も十分で、弦楽器の音色もきめ細かく表現する。

低音域はドカンと激しく主張するタイプではないが、思った以上に伸びがあり、エネルギー感も充実している。オーケストラで音楽を支える、コントラバスのような低音楽器のゆったりとした響きが朗々と再現される。それでいて、バトルシーンの曲のような、ドラムや打楽器が激しく打ち鳴らされる曲を聴いても、アタックがにじむようなことはなく、歯切れの良さと力強さもしっかりと出る。

ボーカル曲もしっとりと落ち着いた感触で、ニュアンスが豊かで色っぽい気配も濃厚に感じさせてくれる。情報量はしっかりと出していながらも、感触が柔らかできめの細かい表現は聴き心地がよい。

次に有線接続で聴いてみた。RP-HD600Nは、ノイズキャンセル機能が付いていることもあり、有線接続でも電源とノイズキャンセルをどちらもオンにして使うことができる。音質的にもこちらのほうが有利でおすすめの使いかただ。バッテリー切れ(電源オフ)の場合でも、有線接続で聴くことが可能で、その場合でも音質的には不満のないように仕上げている。

RP-HD600Nを有線接続し、電源オン、ノイズキャンセルはモードB(中)で聴いたが、ノイズキャンセルによる音質の差はほとんどなく、周囲の環境に合わせて好みのモードを選んでも問題はなさそうだ。

有線接続ではきちんとハイレゾ対応であり、情報量はさらに増す。「交響組曲ドラクエXI」では、楽器の粒立ちがさらによくなり、バイオリンなどの弦楽器の艶やかさ、金管楽器の勢いの良い音の出方など、個々の音のディテールが際立つ。なかなかの高解像度な表現だが、決してカリカリの硬い音にはならず、しっとりとした感触はそのままだ。

内蔵するアンプで駆動しているメリットとしては、低音域のエネルギー感がさらに充実したように感じること。低音楽器の重厚な響きはもちろん、打楽器のパワフルな打音も力強さを増している。軽く電源オフでも聴いてみたが、解像感や情報量はすぐれるものの、低音域のエネルギー感はやや控えめになり、ちょっと低音がタイトになったと感じる。雄大に広がりスケール感もやや小さくなる印象だ。

再び電源オンで聴くと、豊かなスケール感が再現されることもあり、音場の広がりや響きが空間に広がっていくような表現もかなり優秀であることがわかる。ハイレゾ音源の醍醐味でもある、音場の豊かな再現はなかなか良好。高域の歪みのようなクセっぽい音が出ないのはもちろんだが、高音域の伸びも濁りのないみずみずしいもので、持ち味であるきめの細かい表現力がより上質に楽しめる。

清らかで瑞々しい音は、ともすると繊細かつ、ひ弱な感じにもなるのだが、低音域の質が高いことで、雄大さやエネルギー感が不足するようなことはない。落ち着いたトーンではあるが、音の実力はかなり本格的。家の中でじっくりとハイレゾ音源を楽しみたいという人にとっても、十分に満足できる音だ。

気軽に使えて音質も良好
日中付けたままでいたくなる「RP-HD600N」

筆者は家の中でこそワイヤレスヘッドホンを利用する。仕事中などはずっと付けっぱなしにして、トイレに行ったり、飲み物を取りに行くことが多い。移動距離に制約のない自由さは、家の中のほうがその良さを実感できると思っている。

装着感も含めて、ずっとヘッドホンを付けっぱなしでいたい人におすすめの製品だが、そこで気になる連続再生時間も、RP-HD600Nが約20時間(ノイズキャンセル:オン、コーデック:SBC)、RP-HD500Bが約35時間(コーデック:SBC)と十分なバッテリー寿命を実現している。家の中だけでなく、外出時に持ち歩く場合にも頼りになる実力だ。

そして、音声アシスタント機能との連携も可能。スマートスピーカーのように、音楽の選曲をしたり、ニュースを聴くことができるほか、スケジュールの確認なども音声でやりとりできる。ますますヘッドホンを付けっぱなしでいたくなってしまう。しかも音質的にも不満のないレベルだし、ノイズキャンセルON時も聴き心地がよく、実に好ましい製品だと思った。

このように、RP-HD600N/HD500Bはワイヤレスヘッドホンに求められる機能と性能が充実した優秀モデル。ワイヤレスヘッドホンはなかなか激しい競争が展開しているが、今後大きく注目を集めることになりそう。ワイヤレスの快適さと音質の良さの両方を求める欲張りさんこそ、ぜひとも注目してほしい最新モデルだ。

お話を伺った商品技術部 ヘッドホン設計課 主務 鈴木達也氏(左)、商品企画部 ヘッドホン商品企画課 課長 桔梗圭悟氏(右)

著者:鳥居一豊
WEB「AV Watch」2018年3月30日掲載

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