評論家・開発者インタビュー RP-HD600N / RP-HD500B

Bluetooth®ヘッドホン「RP-HD600N」「RP-HD500B」 レビューして分かった3つの魅力 評論家:生形三郎 Bluetooth®ヘッドホン「RP-HD600N」「RP-HD500B」 レビューして分かった3つの魅力 評論家:生形三郎

パナソニックから、高音質Bluetooth®ヘッドホンが発売された。ノイズキャンセリング機能搭載の「RP-HD600N」と、HD600Nからノイズキャンセリング機能を省いた「RP-HD500B」の2モデルだ。両者は共に、「LDAC™」及び「Qualcomm® aptX™ HD」という、2種類ものハイレゾ相当音質のBluetoothコーデックに対応する。同社が満を持して完成させた、注目のフラッグシップ・ワイヤレスモデルである。とにかく完成度が高く、実は何を隠そう筆者は、本稿取材で聴いて以来、すっかりプライベートでも本機を愛用するに至ってしまったほどだ。

特に気に入ったポイントは次の3つで、(1)同社「Technics」(テクニクス)ブランドで培った技術と、高音質Bluetooth®コーデック対応による上質なサウンド(2)音楽へ没入させる自然なノイズキャンセリング品質(3)シンプルかつ確実な操作性と、そして何よりも「ファッションに溶け込む、装いやすいデザイン」である。筆者が自信を持って太鼓判を押す本機の魅力を、上記3つのポイントに絞って皆さんにお届けしよう。

RP-HD600N(ノイズキャンセリングモデル)

RP-HD500B

Point1:いい音を楽しめる

Bluetooth®が最先端

本機の大きな特徴であり、魅力となっているのが「LDAC™」と「Qualcomm® aptX™ HD」という、2つの最新高音質Bluetooth®コーデックに対応していること。これらは、ごく一般的な「SBC」や「AAC」コーデックとは異なり、LDAC™が最大96kHz / 24bit、aptX™ HDは48kHz / 24bitとCDの44.1kHz / 16bit品質を上回る、いわゆる"ハイレゾ"相当の音質で無線伝送再生が可能なものだ。それぞれ両者は、高音質なデジタルオーディオプレーヤーに搭載されている規格。そのいずれか一方だけに対応するイヤホン・ヘッドホンが圧倒的に多い中で、本機は敢えてその両方に対応している。同社が本製品に対し如何に力を込めているのかが、如実に伝わってくるポイントでもある。その意味でも本機は、幅広いユーザーに対して高音質再生への扉が開かれた、画期的な製品といえる。とにかく、ワイヤレスなのにハイレゾの旨味を十二分に味わえるのだから、たまらない。

もちろん、Bluetooth®の接続安定性も高い精度で実現されている。電波送受信の感度を高める入念な筐体構造設計から、さまざまな使用環境を想定した徹底的な接続品質テストの実施まで、しっかりと作られているので、場所を選ばずに快適に使用できる。信頼性が高いのだ。

サウンドの肝は新開発ドライバー

ヘッドホンでもっとも重要なのは、当然「再生音質」だ。しかしそこはPanasonic製。同社のHi-Fiオーディオブランド「Technics」(テクニクス)で培った技術を惜しみなく投入して、高音質が実現されている。

まず、再生の基盤となる振動板の存在。こちらは、Technics製フラッグシップ・ヘッドホン「EAH-T700」でも採用する「MLF振動板」を搭載。数百層にも積層されたフィルムによって形成され、40kHzにまで及ぶ極めて広い再生帯域の獲得と、音の時間軸方向への濁りを排除した、高解像度な再生を実現する。同様に、振動板を支えるフレームにも注力。新構造と新材料による設計で、ドライバーからの不要な振動を効果的に低減し、豊かな音場の拡がりを獲得している。贅沢にも、フレーム中心部に銅キャップを配置することで、高い音が出にくくなる原因であるユニットの高域インピーダンス上昇を抑え、振動板の素直な特性を支えていることも注目ポイントだ。

音楽ジャンル別サウンドチェック

~優しくて透明な美音に、ただただ包まれる~。「RP-HD600N」「RP-HD500B」が奏でる音を聴いてまず思い浮かんだのは、こんなイメージだった。もちろん、単に優しいだけではなく、何時間でも聴いていられる質の高い音でありながらも、あくまで音楽内容に忠実な自然な音質が実現されている。調和の取れた、上質な音なのである。

今回、本機の音質性能をチェックするために、LDAC™やaptX™ HDに対応するDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を用いて、各種コーデックを用いた再生テストを実施した。そのいずれもが、各コーデックの性能が最大限に活かされた高音質なものであった。以下に、各ジャンルのソースを用いて試聴した印象をお伝えしよう。マッチ度と表現力を5点満点で評価したので、合わせて参考にしていただきたい。近年に発売されたハイレゾタイトルを、果たして本機はどのように再生したのか。

クラシック

マッチ度:★★★★★ 表現力:★★★★☆

Rachel Podger, Brecon Baroque「Concerto for Violin and Oboe BWV 1060R - Adagio」
アルバム『Bach: Double & Triple Concertos』より
再生フォーマット:192kHz / 24bit(PCM)

クラシック音楽ソースのマッチングは、実に見事だ。低音楽器に自然な厚みを持たせて表現し、ふくよかなボトムを構築。弦楽器や木管楽器の音色が滑らかに描かれるものの、その表情が驚くほど伸びやかで、生き生きとした質感を湛える。繊細なバロックオーケストラでも音の線が細くならずに、その上質な優美さに酔わされる。

ロック

マッチ度:★★★★☆ 表現力:★★★★☆

Foo Fighters「Make It Right」
アルバム『Concrete and Gold』より
再生フォーマット:44.1kHz / 24bit(PCM)

エレクトリックベースのボトムやバスドラムの胴鳴りは適切なふくよかさで再現され、演奏のフレージングが明瞭だ。また、歪ませたヴォーカルやエレキギターのコードストロークにも、適度なエッジがある。全般的な落ち着きや聴きやすさを実現しながらも、作り手の音作りを実直に再現するその能力は、まさに本機ならではのものだ。

ジャズ

マッチ度:★★★★☆ 表現力:★★★★☆

Bill Charlap Trio「Satellite」
アルバム『uptown downtown』より
再生フォーマット:96kHz / 24bit(PCM)

まずは、ピアノの温か味ある滑らかな音色が耳に届く。ボトムにしっかりと重みがあるので、ハイトーンは明瞭ながらも音が鋭くならない。ウッドベースには適度な弾みがあるが、バスドラムの重低域にはしっかりとした制動があり、余韻が濁らない。演奏本来のリズムが乱れずに、トリオが生み出すグルーヴを十全に楽しめるのだ。

J-Pop

マッチ度:★★★★★ 表現力:★★★★★

手嶌葵「東京」
ミニアルバム『東京』より
再生フォーマット:96kHz / 24bit(PCM)

声の美しさ、瑞々しさに、思わず心が痺れてしまう。歌に込めた情感までが、胸の奥深くにまで染みこんでくるよう。ずっとこの音に包まれていたいと思わせる、ホッとする音なのだ。エレクトリックなキックドラムにも、深い沈み込みと量感があり、リスニングの充実感を一層高める。よって、アニソンやボカロもの、EDMなど打ち込み系音楽とのマッチングも高い。

生形三郎のサウンドジャッジ

本機の音質の高さは、コーデックを切り替えて比較試聴するとよく分かる。SBC、aptX™、aptX™ HD、LDAC™と切り替えていくと、次第にハイレゾソースの情報量が堪能できるようになる。ソース本来のリアリティがどんどん高まるのだ。しかしながら、何よりも、SBCやAACでも、十二分な音質を楽しませることが驚きだ。機器を問わず高音質が楽しめることが、本当に嬉しい。

Point2:強力なノイズキャンセル機能で音楽に没頭できる

シチュエーション別に最適モードをチェック

極めてシンプルな操作性を実現するとともに、ノイズキャンセリング特有の不快感をしっかり抑えていることも本機の特色だ。キャンセルの効果や質感が異なる3種類のモードを搭載し、使用するシチュエーションやユーザーの好みに応じて、柔軟に使い分けることが出来る。切替え操作も至って簡単だ。どのモードで聴いても、いわゆるあの「ツン」とした感じが薄いので、ノイズキャンセリングが苦手な人にも使いやすい。

本機のキャンセル機能は、広く深い効果、つまりは広帯域に平均的に効かせるのが特徴という。それにより、様々なノイズ環境に対応させると同時に、ノイズキャンセル独特の不快感を生じにくくしているのだ。併せて、「ボイススルー機能」も重宝する。以下に、実際に異なるシチュエーションで使用し得られた感触をご紹介しよう。

シチュエーション1:電車

快適ノイキャンモード:<A>
車輪から伝わる振動やモーター音などの低い音も多く、ノイズ成分が広帯域な環境だ。その為、効果が強いモード<A>が適切だった。中高域がほんの少し強めに感じられ、騒音の多い車内でも明瞭な音質で音楽を楽しめた。ノイズキャンセル特有の感覚は最も強いモードだが、騒音が多い環境では特に効果的である。

シチュエーション2:カフェ

快適ノイキャンモード:<B>
キャンセル効果を得つつもリラックスしたい状況では、<B>が良好。3つのモード中、独特の「ツン」とする感覚が最も弱く感じられる。賑やかなカフェでは周りの話し声が少し気になるが、オフ時に比べれば雲泥の差で、楽曲の細部や弱音時の繊細な表現もきちんと聴き取れ、音楽に集中できる。ノイズキャンセルが苦手な人に最適なモードだ。

シチュエーション3:屋外

快適ノイキャンモード:<C>
キャンセルモード<A>と同じ質感を持ちつつも、より効果が控えめなのが<C>だ。音量が小さめの繊細な曲はもちろん、音圧が高い曲でも、背景のノイズフロアが下がるため、音楽がグッと引き立ってくる。本機で音楽を聴きつつひとたび屋外を歩いてみると、眼前の風景がまるで映像作品のように目に染みこんでくる。屋外で音楽を聴く醍醐味が味わえる。

生形三郎のノイズキャンセリング機能ジャッジ

ノイズキャンセリング機能は、自然な効き具合で快適に使うことが出来ると感じた。特にモード<B>は、音楽の再生バランスが崩れにくく、ノイズキャンセル時特有の不快感が極めて控えめ。また、ボイススルー機能も実に重宝する。右側のハウジングにそっと手を添えるだけで、すぐさま音楽の音量が下がるとともに、外音が取り込まれる。よって、電車内でアナウンスを聴きたいときや、不意に会話が要求された場面でも、瞬時に対応することが出来た。

ノイズキャンセルをオンにした状態で右のハウジングに手を近づけると「ボイススルー機能」が働き、ヘッドホンをしたままでも周囲の音を聞き取れる。

Point3:デザインとフィット感に惚れた

毎日使うから、デザインも妥協できない

やはり本機で特筆すべきは、なんといってもこの秀逸なデザインだろう。おもに屋外や公共空間での使用を前提としたノイズキャンセリング・ヘッドホンは、使用者にとって衣服同様の存在といっても過言ではない。よって、音質やノイズ遮断性能だけでなく、デザイン性も極めて重要な要素となる。その点で本機は、ビジネスマンだけでなく、ファッション・コーディネートを気にする女性にとっても、ひじょうに装用しやすいデザインとなっている。

装着した際に、ヘッドホンが顔のラインに影響しないようにとデザインされたハウジング。さらに、ハウジングのフィット機構を一般的なハンガータイプとせず、敢えてボールジョイント構造とすることで、起伏の少ないシームレスな外観を獲得している。ユーザーが装うファッションへと、自然に溶け込むデザインを実現しているといえよう。色味も、穏やかなカラーがチョイスされ、派手さを抑えつつも、さりげない拘りを感じさせてくれる。どこを取っても上質感が高いのだ。特にオリーブグリーンは、メタリックなパーツのアクセントと本体カラーの対比が絶妙だと思う。

また、蛇足ながら、筆者は頭がやや大きめで、人前でヘッドホンをするのに気後れするところがあった。しかし本機では、装着時にも顔の輪郭変化が少ないため、違和感を生じずに使用できた。メガネで言うところの、「縁無し」タイプのような存在感と言える。

フィット感も抜群だ。遮音性を向上させる必要があるため、側圧自体は比較的高めで、しっかりと耳をホールドしてくれる。しかしながら、立体的なイヤーパッドが耳をすっぽりと覆う(耳たぶのみイヤーパッドが被さる)ので、長時間の使用でも、良好な付け心地が確保されている。自宅でテストしている際に、ふと気づくと数時間連続で使用していたくらいだ。

生形三郎の装着感ジャッジ

とにかくピッタリと装着でき一体感が高いので、着け心地が快適だ。ヘッドバンドの頭頂部分に僅かな凹凸が付けられるなど、デザイン性を大切にしながらも、巧みにフィット感が追求されている点が秀逸だ。また何よりも、ユーザー自身のファッションに違和感なく溶け込んでくれるので、コーディネートの邪魔にならないことが大変に素晴らしい。

生形三郎の「RP-HD600N/HD500B」総合ジャッジ

本機は「大人の上質さ」が追求された高性能Bluetooth®ヘッドホンと言えるだろう。そして、この卓越したサウンドとデザインは、年齢や性別、そして音楽ジャンルの嗜好を問わない、極めて普遍的な魅力を伴ったものだと筆者は考えている。

確かに、パッと聴き、パッと見では、派手さに欠けるきらいもあるかもしれない。昨今は、いわゆる“ドンシャリ”傾向の音質に加えて、ことさらにハイレゾ感を追求した鋭角的なサウンドに溢れているし、筐体デザインやそのカラーも実にユニークなものが多い。

しかしながら、様々な場所での毎日の快適な音楽リスニングや、使用シーンやファッションを選ばない装用性を考慮すると、最終的に手許に置いておきたくなるBluetooth®ヘッドホンは、まさに本機なのではないだろうか。少なくとも筆者にとってはそうだと断言できる。

ソース本来の音楽性を、ナチュラルかつ豊かな聴き心地で楽しませてくれる「RP-HD600N」と「RP-HD500B」。その魅力を、ぜひ一度あなたの耳と目で味わって欲しい。

筆者:生形三郎(うぶかたさぶろう)
作曲家、音楽家、録音エンジニア、オーディオ評論家。東京藝術大学大学院修了。音楽家の視点を活かした、独自の録音制作およびオーディオ評論活動を展開している。「オーディオ=録音⇔再生」に関する、多角的な創造・普及活動に取り組んでおり、2017年より東京電機大学理工学部で講師を勤める。自宅アトリエでは、自作の4ウェイおよびフルレンジをメインスピーカーに据えるこだわり派。
Webサイト:http://saburo-ubukata.com/

モデル:綱島恵里香(つなしまえりか)
モデル、女優。主演を務めたショートフィルム『マリッジブルーの空』(2012年)が2013年に伊勢崎映画祭で上毛新聞社賞を受賞。同じく2013年、第1回八王子Short Film映画祭で純グランプリを獲得した。近年は映画や舞台、ドラマなど演技を生かした活動に力を入れている。
公式ブログ:ツナエリ日和
公式ツイッター:@erikatsunashima

著者:生形三郎
WEB「Stereo Sound ONLINE」2018年3月30日掲載

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● Qualcomm aptX is a product of Qualcomm Technologies International, Ltd. Qualcomm is a trademark of Qualcomm Incorporated, registered in the United States and other countries, used with permission. aptX is a trademark of Qualcomm Technologies International, Ltd., registered in the United States and other countries, used with permission.
● LDACおよびLDACロゴはソニー株式会社の商標です。

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