【大阪府】世界に誇る1/100mmを操る貨幣製造の技術

監修・ライター:歌なし編集部
2022年5月16日 地域

キャッシュレス時代とはいえ、10円玉や100円玉といった硬貨は日常に欠かせない身近な存在ですよね。そんな貨幣をはじめ、勲章や金属工芸品の製造などを行っているのが、大阪にある独立行政法人「造幣局」です。

造幣局、なぜ大阪にあるの?

造幣局がある大阪市北区天満の一帯は、すぐ横に大川が流れ、川沿いの桜並木は春になるとお花見客や屋台で賑わうほか、10分ほど歩いたところにある菅原道真公を祀った大阪天満宮でも有名です。また、ビジネス街も近く、まるで昔と今が交差するような土地柄でもあります。

そんな立地にある造幣局では、例年「桜の通り抜け」が行われています。
こちらではさまざまな種類の桜を楽しむことができますが、ぼんぼりのようにかわいらしい花が特徴の八重桜が多く咲き誇っており、時期になると「いまか、いまか?」と待ちわびた人たちが満開の様子を愛でに訪れるんですよ。

写真:女性がノートパソコンを見ながらメモを取っているイメージ

さて、「どうして造幣局が大阪にあるの?」と疑問に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

その答えには諸説あるそうで、
①大阪遷都論が出た際に国の機関を作ろうとしたから
②王政復古の大号令に貢献した関西財界に配慮するため
③当時、江戸(東京)の治安がまだ落ち着いていなかったから
などが有力な説とされています。

ちなみに、造幣局の立地条件は、「広大な土地と、運搬のため水利がよいところ」だったそう。
それが当てはまる場所が現在の造幣局がある場所だった、という話も伝わっています。
さて、みなさんはどの説を推されますか?

日本が誇る、造幣局の技術とは?

造幣局では、貨幣などを製造する以外にもとても重要な仕事があります。
それは「種印修正」です。

種印とは、貨幣の基となる金型のこと。
すべての貨幣は種印から量産した極印から製造されています。
この金型、一度作ったあとも、年号が変わるたびに手作業で修正する必要があり、それを一手に担っているのが造幣局の技術者のみなさんです。

顕微鏡をのぞきながら、「きさげ」という道具を使って手作業で彫るのですが、その細かさは1/100mm以下の世界。
髪の毛一本よりも細かく、デザインを紙に印刷できないほど繊細な部分もあるそうです。

機械彫りにしない理由は、「カドを出すのが難しいから」と、種印修正歴39年 熟練した高度な技能を遺憾なく発揮する技術者の土堤内 靖(どてうち やすし)さん。

一番難しいとされているのは平等院鳳凰堂が描かれた10円玉で、金型を完成させるには、40から50日間もかかるのだそうです。
そのため、発行日に間に合わせるためにも、失敗することなく完成させるという完全無欠な技術が求められます。

写真:ノートパソコンの画面が映し出されているイメージ

とても繊細な作業を行なっていらっしゃるのですが、「作業が細かすぎて、手が動いてないように見えると言われることもあります」と、土堤内さんと同僚で技術者歴29年の松本 和彦(まつもと かずひこ)さんは教えてくれました。

ちなみに、2021年11月に発行された「新500円硬貨」は以前のものよりも桐の図柄が小さくなった分、より難易度が高くなったそう。
確かに、よく見ると以前より細かくなっていますね!

写真:東京2020オリンピック・パラリンピック入賞メダルを手に持っている女性のイメージ

そんな種印修正を行う技術者のみなさんですが、造幣局に6人しかおられないそうです。
しかも、専門職として入局するのではなく、配属されて初めて種印修正に関わるのだとか。
イチから修業を重ね、技術を磨き、一般流通貨幣の種印修正作業に携われるようになるには、5年から10年ほどの時間が必要とのこと。
職人さんの世界、という感じがしますね。

もちろん、技術者のみなさんは貨幣だけでなく、勲章の製造もされています。
なんと、「東京2020オリンピック・パラリンピック入賞メダル」の製造を担当したのも造幣局の技術者のみなさんなのです!

こちらは、「一生に一度、作れるか作れないかのメダルだから」ということで、ひとつの極印を作るのに20代の若手技術者も含め、6人全員で臨んだそうです。
なんだか、胸が熱くなるお話ですね。

貨幣の製造を近くで見られる!

さて、海外の人からは、「偽造防止のためにそこまでするのか!?」と言われるほど、精緻な技術を誇る造幣局の仕事ぶり。
その実力が認められ、最近は、「バングラデシュ銀行から記念銀貨幣の製造を受注しました」と、土堤内さんと松本さんが教えてくれました。

海外の貨幣まで作ってしまうなんて、なんだかこちらまで誇らしくなってきます。

写真:造幣局の外観のイメージ

今回紹介した造幣局では、一般見学を受け入れているほか、併設されている「造幣博物館」でこれまでの貨幣や造幣局の歴史を知ることもできます。
どちらも無料なので、大阪に訪れた際には、日本が誇る1/100mm以下の世界を操る貨幣製造の様子をぜひ近くでご覧ください!

今回は、AMラジオ37局で放送しているパナソニック提供の長寿番組「歌のない歌謡曲」のMBSラジオからお届けしました。

MBSラジオの「歌のない歌謡曲」は、毎週月~金 午前7:30~7:45に放送しています。
金曜日を担当しているのは、前田 春香さんです。

写真:前田 春香さん
歌のない歌謡曲

監修・ライター:歌なし編集部

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2022年5月16日 地域

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