珈琲がつなげる想いと、つないでいく未来 〜The Roast secret session in Ada〜【後編】

日本初のスペシャルティコーヒー「安田珈琲」試飲会と、日本のコーヒーの未来について語り合う、2日間のイベント「The Roast secret session in Ada」。前編でお伝えした農園見学では、その丁寧な栽培の様子にコーヒーのプロフェッショナルたちも驚いていました。いよいよその味への期待が高まる中スタートした、Qグレーダー試験と試飲会。日本初のスペシャルティコーヒーの点数とその味わいとは?

会場に緊張感が漂う、公開「Qグレーダー試験」

日本で初めてスペシャルティコーヒーに認定された「安田珈琲」を栽培している農園「アダ・ファーム」を見学し、その磨き上げられた栽培方法に驚く、コーヒーのプロフェッショナルたち(その様子は記事前編をご覧ください)。ますますその味への期待が高まる中、はじまったのが「Qグレーダー試験」です。

Qグレーダー試験とは、コーヒーのおいしさを客観的に評価する世界共通のカッピングテストで、米国スペシャルティコーヒー協会(SCAA)のルールに則って行うもの。そのコーヒー豆から感じられる香りや甘み、後味など計10項目を10点満点で評価し、各項目の点数の合計が80点を超えるとスペシャルティコーヒーに認定されます。

審査員は2013年世界焙煎チャンピオン「豆香洞コーヒー」オーナーの後藤直紀さん、2017年日本焙煎チャンピオン「豆ポレポレ」店主の仲村良行さん、そして「The Roast」で扱うコーヒー豆のバイヤーである石光商事株式会社の荒川正臣さんの計3名です。カッピングテストは、飲むというよりは啜るようにして、舌全体に味を、そして鼻腔に香りを行き渡らせる高度な技術が必要。審査員の口元にスプーンが運ばれるたび、「キューーー!」という機械音のような不思議な音が、緊張感漂う場内に響きわたります。生産者の徳田さんご夫妻も真剣な表情で、その様子を見つめます。

審査員全員が“スペシャルティ”と認めた、「安田珈琲」の味

気になる結果は… 3名全員が80点以上のハイスコアをつけて、平均83.7点! なかでも一番高評価の84点をつけた荒川さんは「最初は83.75というスコアをつけていたのですが、冷めたコーヒーを飲んだときに、口の中に余韻が続くボディ感(コク)が素晴らしいと思って加点しました。ナッツ、ハニー、キャラメルのような甘さがあって、とろっとしているやさしい口当たりはアーモンドクリームのようですね」と感心したご様子。

後藤さんと仲村さんも同じく、「安田珈琲」独特の甘みとその質感を高く評価していました。「The Roast」で世界中の高品質な豆をプロファイルしてきた後藤さんですが、「安田珈琲」の甘さの評価は10点満点中、20点をつけたいくらいだと感想を続けます。

「コーヒーの果肉独特の甘い香りがしました。これは産地が近い新鮮な豆だからこそ感じられる、非常にユニークな甘みです。今回採用した香りを重視したアメリカ式の評価基準ではなく、甘みと質感を重視したヨーロッパ式になるともっと高い点数がつくのではないかと思います」

新鮮なコーヒー豆が味わえるのは、この土地で栽培を行っているからこその恩恵。プロフェッショナルの評価から、「安田珈琲」は海外のスペシャルティコーヒーにも引けを取らない高品質な豆であること、そして日本の、この土地だからこそ出せる独特の味わいがあることが証明されました。

飲む人の記憶に残したい、ロースター仲村氏の想い

ゲストたちの期待がピークに達したころ、待ちに待った試飲の時間です。今回の焙煎は日本焙煎チャンピオンで、沖縄県内で「豆ポレポレ」を営む仲村さんにお願いをしました。数か月間「The Roast」を使ってテストローストを繰り返すことで「安田珈琲」と向き合い、この日を迎えた仲村さん。後藤さんには、イベント前日と当日の朝、そして1ヶ月前にも、沖縄から福岡の「豆香洞コーヒー」の焙煎所へ足を運んでアドバイスをもらったそうです。「めちゃくちゃ不安なんで(笑)、後藤さんの後押しがあると心強いんです」

しかし焙煎を終えた仲村さんの表情からは、不安ではなく、磨き上げた味への自信が感じられました。この日用意したのは、浅煎りと中深煎りの2種類。どちらも「安田珈琲」独特の甘さを生かした味に仕上げたそうです。

「初めて飲んだ時に印象的だった甘さをテーマにしました。浅煎りはその甘さと酸味を全面に感じてもらえると思います。コーヒーの厚みも感じられるように、中深煎りは苦味(ビター感)を感じる一歩手前で仕上げました。この甘みが皆さんの記憶に残ると嬉しいです」

そんな仲村さんの想いが詰まったプロファイルの名前は「AKATITI(アカチチ)」。アカチチとは、沖縄の方言で夜明けや明け方のことを意味します。この名前には「安田珈琲」が日本初のスペシャルティコーヒーとして国産コーヒーのはじまりであり、プロファイルをつくる中で「この豆の未来が明るいと思った」という仲村さんの一言が凝縮されています。

磨き上げた生豆を、磨き上げた焙煎でいただく、至福のコーヒータイム

淹れたてのコーヒーがゲストの手元に配られると、会場のいたるところから「おいしい!」という言葉が聞こえてきました。徳田さんご夫妻は「本当においしいです。ありがとうございます」と感無量の様子。今のところ県外に出荷することが多く、県内のロースターに焙煎してもらうのは1つの夢だったそうです。

仲村さんの親友であり、ライバルでもある2016年日本焙煎チャンピオンの近藤啓さんは「甘さがしっかり感じられますね。甘みの種類もバナナや柑橘系のフルーツなどが相まった、独特な甘さを感じます。さらに冷めてくるほどに、その甘さが際立ってくる、素晴らしいコーヒーです」と評価していました。

「甘みもよくあるコーヒーの甘みではなく、独特な“和”を感じるような甘みでした。他の豆にはないそのオリジナル性は、とても魅力的だと思います」という株式会社アマナ コーヒークリエイターの中川亮太さんに、東京・浅草で「菓子屋ここのつ」を営む溝口実穂さんが「私はこのコーヒーに合う和菓子を早く作りたいです」と続けます。 「私は普段コーヒーだけでいただくということがなくて。お菓子とのペアリングをいつも考えているのですが、この浅煎りにはアーモンド系のお菓子、中深煎りにはキャラメリゼしたバナナをつぶしたお菓子が合いそうです」

イベント前夜、手づくりの和菓子で、後藤さんが焙煎したコーヒーとの見事なペアリングを見せてくれた溝口さん。仲村さんが焙煎する「安田珈琲」とのペアリングもぜひ味わってみたいものです。

一杯の珈琲に重なる、たくさんの人の想い

「エスプレッソという飲み方はナッツやカカオのような風味を引き出してくれるんです。だから『安田珈琲』はエスプレッソで飲んでもおいしいと思う。早く家に帰って試してみたいです」と、グラインダーやコーヒーアクセサリーの開発・製造・販売をしている会社「Lynweber Workshops」を経営するダグラス・ウェバーさん。海外の世界バリスタチャンピオンも愛用しているという優れたコーヒーアイテムをたくさん生み出しています。

なかでもダグラスさんの自慢は、スタイリッシュな見た目が美しいグラインダー。特徴はお掃除が簡単なこと。グラインダーの掃除は通常、工具を使って1時間程度かかってしまいますが、この商品はなんと10秒程度で掃除ができるのだとか。もちろん工具も必要ないそうです。

以前はApple社のデザインエンジニアとして活躍されていましたが、コーヒー好きが高じて現在の会社を立ち上げたダグラスさん。毎日の生活に欠かせないコーヒーだからこそ生まれたアイディアなのでしょう。先ほど仲村さんが焙煎した豆を、ダグラスさんのグラインダーで挽いて、後藤さんがドリップするというコラボも実現しました。

改めてコーヒーには、ダグラスさんのような作り手をはじめ、生産者、ロースター、バリスタなど、たくさんの人の想いが存在することを思い知らされます。イベント最後に語られた後藤さんの言葉が、まさにそのことを物語っていました。

「私たちロースターは、お客様の手元にコーヒーが届くまでの、長い道のりの中の一部分。橋渡し役なんです。生産者から届けてもらった想いを次の方へ渡す、ということが仕事。その想いのイメージの共有ができれば、お客様にもっと良い形でコーヒーを届けられるはずです。今日はまさに『The Roast』の世界観を象徴するようなイベントだったと思います」

一杯のコーヒーが秘めた、壮大な世界観

では「安田珈琲」が届けたい想いとは何でしょうか?

「想いを届けるというより、僕らも橋渡しだと思っています。この沖縄の安田という場所の魅力を、コーヒーという形でお届けしているんです。僕らはこの土地が大好きだし、この土地に救われました。いまはただただこの土地に対する敬意と感謝の気持ちでコーヒーを作っています。

徳田さんご夫妻がコーヒーを通じて届けるのは、生産地である安田という場所の風や空気、自然そのもの。世界中どこで飲んでも、そのコーヒーで生産地を感じることができ、つながっていられるということ。一杯のコーヒーはそんな壮大な世界観を秘めているのです。

「僕たちはコーヒーが今後沖縄の農作物となることを信じています。一過性のブームではなく、根付かせていきたいんです」 (泰二郎さん)

国産コーヒーの未来

今回のイベントでコーヒーのプロフェッショナルたちには「安田珈琲」の豆がもつポテンシャルや可能性を知っていただき、そして生産者の徳田さんご夫妻には客観的なプロの評価をお伝えすることができました。プロである仲村さんが引き出した、豆がもつ新しい味わいに出会えたことは、徳田さんご夫妻の励みとなり、そして国産コーヒーの明るい未来につながっていくことでしょう。

県道から逸れ、森に囲まれるようにしてあるちいさな集落。時が止まったかのようなのどかな町並みを、海からの風がするりと吹き抜けます。耳をすませばかすかに聞こえるのは、葉擦れの音と、波の音。いつか皆さまのご自宅にそんな安田集落の風景をお届けできる日がくると信じて。私たち「The Roast」は、これからも「アダ・ファーム」を応援していきたいと思います。

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