東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授  和泉 雄一先生 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授  和泉 雄一先生

歯周病は「感染」する

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授
和泉 雄一先生

歯周病の原因や感染経路、全身の健康への影響について、 東京医科歯科大学の和泉先生にお話を伺いました。

歯周病が人から人へ感染するというのは本当ですか?

はい。歯周病は感染症の一種ですので、他人の唾液を媒介して感染します。親から子供への食べ物の口移しなども、感染の原因になります。犬や猫、小鳥など、ペットの動物と人との間で感染するという研究もあります。このような「感染」の心配があると同時に、歯周病は「生活習慣」とも強い関係があります。

そもそも、口の中には600〜700種の菌がいて、菌は食べカスの中で増殖します。菌は、最初はすぐに歯から取れますが、放っておくと接着剤のようなものを出して、歯の周りに貼り付いてしまいます。これを歯垢(プラーク)と言います。歯垢(プラーク)に接している歯ぐきに炎症が起きると、歯ぐきが歯からはがれてポケットを形成します。深い歯周ポケットの中には空気を嫌う嫌気性の菌がすみつき、増えていきます。この菌が出す毒素と身体を守る細胞との戦いの結果、炎症が強くなり、歯周病が悪化していきます。

親子間の感染

親子間の感染

動物からの感染

動物からの感染

生活習慣

生活習慣

歯周病が進行すると、どうなるのでしょうか?

歯周病には、歯肉炎(歯ぐきだけが腫れた状態)と歯周炎(歯と歯ぐきが付着した部分が破壊され、歯を支える骨が溶けた状態)という段階があります。歯周炎が悪化すると、歯を支える骨が根元まで溶け、歯が抜けてしまいます。軽度の歯肉炎は10代後半から増え始め、30代、40代で悪化が加速し、歯周炎が増えていきます。中等度から重度の歯周炎は50〜70代が多いですね。歯周病は痛みがほとんどない慢性炎症なので、気づかないうちにじわじわと進行してしまいます。

歯周病は全身の健康にも影響をもたらします。特に歯周炎が重症になると、歯周病菌が増え、炎症も強くなります。強い慢性炎症によって炎症物質が多く産生され、血液中に入り込みます。さらに、歯周病菌も血液中に入って、全身に送られ、様々な病気を引き起こしたり、悪化させたりします。 重度の歯周病の患者さんの場合、炎症を起こしている歯周ポケットの表面積をすべて合わせると、手のひらくらいの大きさになります。これはつまり、口の中に手のひら大の「菌や炎症物質の入り口」があるということなんです。

口の中に手のひら大の「菌や炎症物質の入り口」があるといえる 口の中に手のひら大の「菌や炎症物質の入り口」があるといえる

具体的に、どんな病気と関係があると言われていますか?

一番注目されているのは糖尿病です。世界的に研究が進められていて、歯周病と相互関係があると言われています。あとは、関節リウマチも歯周病と相互関係があると言われていますね。

動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などの循環器系疾患も、歯周病と関連があると言われています。血中に入った歯周病菌が血管につくと、マクロファージと呼ばれる体を守る細胞が寄ってきます。その細胞と歯周病菌との戦いの結果、脂のかたまりのようなものが血管壁につき、それが剥がれると末梢の血管を詰まらせてしまうんです。

他には、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎、アルツハイマー病などにも関連があると言われています。

糖尿病

糖尿病

関節リウマチ

関節リウマチ

循環器系疾患

循環器系疾患

早産・低体重児出産

早産・低体重児出産

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎

アルツハイマー

アルツハイマー

歯周病を防ぐには、どんなケアをすれば良いのでしょうか?

歯周病には、 「生体因子」、 「細菌因子」、「環境因子」という、3つのリスク因子があります。

歯周病には、 「生体因子」、 「細菌因子」、「環境因子」という、3つのリスク因子があります 歯周病には、 「生体因子」、 「細菌因子」、「環境因子」という、3つのリスク因子があります

「生体因子」は、体質的に歯周病の炎症が起きやすいか、進行しやすいかどうかという問題なので、変えることはできません。残りの2つの因子は、自分でリスクを減らすことができます。

「細菌因子」を減らすには、正しいブラッシングが大切です。特に注意が必要なのは、歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間。歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシを使わないとなかなかキレイに出来ない場所です。嫌気性の菌がひそむ歯周ポケットも、ブラッシングでケアしましょう。

ただし、歯ブラシを強くあてすぎると、歯や歯ぐきを傷つけてしまう可能性があります。歯の根元にくさび形の削れができている方は、力の入れ過ぎです。正しい力加減と動かし方で、丁寧に磨くよう気をつけましょう。

「環境因子」は、喫煙や食生活などの生活習慣を改善することでリスクを減らせます。タバコに含まれる成分は、体を守る細胞の機能を抑えてしまいますし、歯周病菌を増殖させてしまいます。喫煙すると血行も悪くなるので、禁煙あるいはタバコの本数を減らし、歯ぐきを適切な方法でマッサージして、血行を良くするというのもケアのひとつですね。また、繊維成分の多い野菜を良く噛んで食べることも、歯周病予防に効果的です。