Digital FUN! 「メアリと魔女の花」映像演出 奥井敦氏が語る4K有機ELビエラの魅力


「メアリと魔女の花」は、魅力をよりよく伝えるために、4K HDR※1でリマスターされ、Ultra HDブルーレイ版もパッケージ化されました。4K HDR化にあたっては映像の元データに遡って再度編集が行われています。その作業に4K有機ELビエラは必要不可欠な存在でした。
映像演出を担当された奥井氏のインタビューをご紹介します。


Q.なぜ制作に4K有機ELが必要だったのでしょうか?
マスターデータを制作する場合、30インチくらいのマスターモニターを基準に最終調整しますが、メアリは映画作品なので大画面での視聴を想定しています。
ご家庭にあるテレビに30インチ以上が多いことを考えると、マスターモニターのみのチェックでは足りません。
一方で、一般的な大型テレビではマスターモニターの様に正しく色や階調を表現することはできません。
そのため、大画面でマスターモニターに近い環境を再現できる4K有機ELビエラが制作現場に必要でした。
●マスターモニター:映像編集に用いられる業務用のモニター。入力信号の階調や色を忠実に表示する高度な性能が求められ、HDRの映像編集には数百万円もするマスターモニターが用いられることが多い。

【4K HDR(Ultra HD ブルーレイ)※1】

【2K SDR(ブルーレイ)※2】
※1 4K=3840×2160画素、HDR=ハイ・ダイナミックレンジの略
※2 2K=1920×1080画素(フルハイビジョン)、SDR=スタンダード・ダイナミックレンジの略
Q.チェック用モニターとして、不可欠な表現力はなんでしょうか?
コントラスト感ですね。浮かない黒や階調の忠実な再現能力が重要です。
それに加えて、色を忠実に再現できることです。一般的な液晶はどうしても入力信号に対して、暗部の色がズレて表示される傾向があります。
有機ELビエラはそれらを解消できているというので、期待していました。
Q.有機ELビエラで編集作業をされていかがでしたか?
制作ではPCのツールを使うため、液晶モニターで作業します。
しかし、小さい画面でいくら完成度を高めても、大画面でイコールになるとは限りません。
映画用なら最終的にプロジェクターでスクリーンに映してチェックしなければならない。これがあるかないかで大きく変わります。
同じことで、4K HDRならリビングのテレビを想定して光の感じがどうなるのかを確認していかないと、最終的なパッケージとして品質が保証できなくなります。
4K有機ELビエラは光の輝き、暗部の階調性、コントラスト感を確認する上で正しく表示されるという安心感がありました。



Q.作品のHDR化で苦労された点を教えてください。
2Dの手描きアニメーションはSDRで制作しているため、HDR化できる情報を持っていません。SDR映像では明るく鮮やかな色は表現できず、白に近づけるかコントラストで見せるしかないのです。
HDR化のために、制作の前段階に遡って光らせたい部分、光らせたくない部分のマスクを用意しました。
これにより、意図しない場所が明るくなるのを避けながら、グレーディング(色調整)ができます。
その結果、今までは白くなってしまった明るい光に色をのせられるようになりました。
例えば、朝陽の黄色がかったオレンジ色といったものに有効です。
今回、有機ELビエラの画面でチェックしながら調整が行えたので、HDR化の完成度を高めることができました。
苦労したのは、色がのりすぎるのを抑えたり、初めての作業のためスケジュールの組み方が大変だったことですね。
Q.最近ではHDRの作品が数多くあります。「メアリと魔女の花」ならではのHDRのポイントを教えてください。
HDRはシャドウから明るいピーク輝度までの階調表現です。他の作品の作業はわかりませんが、SDRがベースという点では同じだと思います。中間調からハイライト、ピーク輝度までの階調処理のつなぎ方、滑らかさにこだわりました。
冒頭は炎のシーンから始まりますが、そのインパクトは非常に重要です。爆発や炎、手前に飛んでいる火の粉などの輝きがより印象に残るように表現できたと思います。

Q.前モデルと比較して新機種のFZ1000はいかがでしょうか?
前モデルのEZ1000でも十分、マスターモニターに近い映像表現でしたが、新しいFZ1000ではさらに細かく改善されていると思います。火の粉などのピークの輝きはもちろん、そこからつながる面積の広い炎のシーンがより自然になっていますね。

奥井氏と共に、4K HDR化を担当した
パナソニックの柏木も同席
マスクワーク、マスクデータ※を使ったHDRのグレーディング(色調整)は今回が初めてです。有機ELを使いながらマスクワークでグレーディングしたことにより、思ったように色がのることを確認できたのは大きいですね。HDR化がうまく活きた、と自負しています。
パナソニック次世代AVアライアンス担当部長 柏木吉一郎
※映像データをパーツ化し領域指定に用いることで、領域ごとに明るさや色を細かく且つ正確に調整可能とする作業などのこと。

Q.「Tuned by Technics」のスピーカーについてはいかがでしょうか?
薄型テレビはどうしても音が弱いという印象があります。ですが、今回の有機ELビエラはきちんとチューンされたスピーカーで音に厚みを感じられます。
特に映画を見る場合は、劇場で体感した音が耳に残っているので、それをどこまで再現できるかが大きな要素だと思います。
テレビを買ってきて設置するだけで、ある程度再現できるのは非常にいいことだと思います。

Q.有機ELビエラをご家庭で使う場合の魅力を教えてください。
自分たちの作品の映像がそのままご家庭のテレビで再現されて欲しい、という想いが強くありました。
今までは、実現することは難しかったのですが、有機ELビエラを使うことによって、制作者の意図に近い画面が楽しめるようなったと確信しています。
私も有機ELビエラを自宅用に早速購入してしまいました(笑)。
Q.最後に作品のご紹介をお願いいたします。
「メアリと魔女の花」、米林宏昌監督の独立第1作目となります。
彼の持っている感性が詰まった作品になっています。ぜひご覧ください。

■奥井 敦
1982年に旭プロダクションに入社。『ダーティペア(劇場版)』(87年)で初の撮影監督に。以後『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』(88年)などで撮影監督を務め、『紅の豚』(92年)などの撮影監督としてスタジオジブリ作品に参加。以後、ジブリに入社し、多数の作品に撮影監督として参加。『借りぐらしのアリエッティ』(10年)、『思い出のマーニー』(14年)などでは映像演出を務めた。

◆奥井敦氏 インタビュー動画版
4K有機ELビエラ FZ1000/FZ950シリーズ
「メアリと魔女の花」の4K HDR化に使われた
有機ELビエラ 最新のフラグシップモデル
FZ1000シリーズ[65v|55v]☆
・レベルゼロの「漆黒」を再現できる4K有機ELパネル採用
・有機ELパネル専用エンジン「ヘキサクロマドライブ プラス」搭載
・「Tuned by Technics」によるパワフルなスピーカーシステム
映像の美しさに磨きをかけた
有機ELビエラ スタンダードモデル
FZ950シリーズ[65v|55v]☆
・レベルゼロの「漆黒」を再現できる4K有機ELパネル採用
・有機ELパネル専用エンジン「ヘキサクロマドライブ プラス」搭載
●画面はハメコミ合成のイメージです。
●シーン写真、機能説明写真はイメージです。
●製品の定格およびデザインは改善等のため予告なく変更する場合があります。
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