環境音楽家に聞く「家事がはかどる音楽のチカラ」とは

家事がはかどる音楽について 家事がはかどる音楽について

パナソニックが新しく提案する“家事がはかどる音楽”の楽曲制作にあたっては、環境音楽家の小松正史氏からアドバイスをいただきました。「GREAT JOB」に込められた音楽のチカラについて、ご紹介します。

家事がはかどる音楽をつくるポイント

小松先生写真

「音楽には、人の行動を変えるチカラがあります」

私は音環境のデザインに取り組んでいますが、音楽には見える風景の印象をはじめ、人の行動や心を変えるチカラがあり、「音には魔法がある」と感じています。ですから、"家事がはかどる音楽"を作りたいと相談されたとき、それが物性的なものではなく、心理的なアプローチによるものであることから、音楽のチカラに対して同じ思いであることに共感し、協力を快諾しました。

楽曲づくり 4つのポイント

[POINT1]頭に残るメロディー[POINT2]リズムの速さ[POINT3]イントロダクションでの耳引き[POINT4]エンディング [POINT1]頭に残るメロディー[POINT2]リズムの速さ[POINT3]イントロダクションでの耳引き[POINT4]エンディング

”家事がはかどる音楽”という課題に対し、最初に4つのアドバイスを行いました。

1.まず頭に残るメロディーを作ること。頭に残りやすいメロディーや誰もが口ずさめるような歌詞を作ることや、サビ部分ではキーワードを繰り返すことも効果があります。

2.家事という単純作業をはかどらせるためには、リズムの速さも重要です。140bpm~160bpmのリズムが最適で、速さに脳の偏桃体が反応し、快感や充足感を生み出します。

3.高い音やシャープな音による違和感やテンションを上げていく曲調など、イントロダクションでの耳引きも大事で、最初の注意喚起は楽曲に対するモチベーションアップにもつながります。

4.エンディングでは、家事が無事終了したような感じを醸成すると良いと思います。例えば拍手やドラの音などの効果音で、“終了感”と家事をしたことを褒められる“承認欲求”を満たす、といった工夫です。

「GREAT JOB」に込められた音楽のチカラ

イメージ写真

ネガティブな気持ちをポジティブに切り替える、「GREAT JOB」に込められた音楽のチカラとは?

今回完成した楽曲を聴いて、すごく大きなパワーをもらえる音楽だなと思いました。この曲なら、家事に対するイヤな気持ちや抵抗感をうまく切り替えることができそうです。音楽はさまざまな要素がかけ合わされることによって、気分を切り替え、気持ちを鼓舞させることができるわけですが、この楽曲にはその要素がちりばめられており、楽曲全体の総合的な躍動感がだんだん積み重なり、気持ちのスイッチを切り替えるポイントになると感じました。

「GREAT JOB」躍動感のヒミツ

[音韻の整った歌詞][重なるメインメロディー][低音のビート][赤ちゃんの声や笑い声][あえて組み込んだ不協和音] [音韻の整った歌詞][重なるメインメロディー][低音のビート][赤ちゃんの声や笑い声][あえて組み込んだ不協和音]

音楽の重要な要素となるのはリズムやテンポですが、この楽曲は躍動感のあるリズムやテンポが気持ちを鼓舞させ、低音のビートが心理的なやる気と、動くチカラを与えています。人は繰り返される規則的な低音を聞くと、自然と動きたくなるものなのです。
また、歌詞は言葉が短めで音韻が整っているので、記憶に残りやすく定着しやすい。だから、家事をしながら口ずさみやすい、というアウトプット効果も期待できそうです。
メロディーについては、アーティストがメインのメロディーを繰り返し歌いながら、それをキーボードや編曲の音が追っかけて重ねています。そのことでメロディーの定着が図られるとともに、リズムの速さと相まって体を動かしたくなり、家事をするための効果的な環境作りにつながっているようです。
周波数が高い人の声は注意を惹きつけやすいのですが、この楽曲には赤ちゃんの声や笑い声が適度に使われており、慣れて飽きないように、耳をひきつけるよい効果をもたらしています。
また、一般的には不快とされる不協和音があえて組み込まれており、この部分が家事に対するネガティブな気持ちを表現しています。
疲れるとかやりたくないとか、キレイごとだけではない家事のリアルさを描き、聴く人の共感につながると考えられます。

“家事がはかどる音楽”は家事に対する心理的なはかどりをサポート “生活の質”を高める試みに

今回のプロジェクトは名称こそ「家事がはかどる音楽」ですが、家事の物性的な「はかどり」ではなく、家事をする人の心情面での「はかどり」をサポートすることが重要ではないか、と思います。作業時間を短縮し、効率をあげるためではなく、家事に対するモチベーションやコミットメント、さらには家事に対する自負や家族に対する愛情にまで影響する。音楽にはそのようなチカラがあると考えています。「家事がはかどる音楽」は家事そのものの重要性に気づかせてくれるのではないでしょうか。

小松正史(こまつ・まさふみ)さん 環境音楽家・作曲家・ピアニスト・音育家 工学博士

1971年、京都生まれ。音楽だけではない「音」に注目し、それを教育・学問・デザインに活かす。学問の専門分野は、音響心理学とサウンドスケープ論。BGMや環境音楽を制作し、ピアノ演奏も行う。多数の映像作品への楽曲提供や音楽監督を行う。また、京都タワー・京都国際マンガミュージアム・京都丹後鉄道・耳原総合病院などの公共空間の音環境デザインを行う。聴覚や身体感覚を研ぎ澄ませる、独自の音育(おといく)ワークショップも全国各地で実践。2018年現在、京都精華大学人文学部教授。