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栃木県

オリンピアンの夫と日本一になった妻。同じ競技、夫婦で挑む、東京2020オリンピック

2019年06月24日

写真:景色の良い丘で馬の手綱を握り2人並んでいる様子

障害馬術でシドニー2000オリンピックに出場した夫の広田龍馬(ひろた・りゅうま)さんと、2018年の全日本チャンピオンになった妻の広田思乃(ひろた・しの)さん。男女のクラス分けがない障害馬術で、2人はともに東京2020オリンピックを目指している。栃木県那須塩原市、夫婦で営む乗馬クラブ「那須トレーニングファーム」で話を聞いた。

父から譲り受けた拠点、那須トレーニングファーム。

広田夫妻が営む乗馬クラブ『那須トレーニングファーム』は、障害馬術場だけでなく、馬場馬術場や最大数百頭の馬を入れることのできる厩舎など、大きな大会も開催されるほどの本格的な馬場。もとは、龍馬さんの父から譲り受けたものだという。

写真:インタビューに答える広田りゅうまさん

「うちの父はサラリーマンを辞めて、そして牧場を切り拓いて、那須の地に移り住んだ。この施設は僕を世界レベル、オリンピックに行かせるために作ってくれた施設なので、国際大会で自分が選手として名を挙げて、そしてこの那須トレーニングファームや日本全体のレベルが上げられればいいなと思っています」(龍馬さん)

競技とともに取り組む、ホースセラピー※。

広田夫妻は、那須トレーニングファームに「乗馬スポーツ少年団」を立ち上げ、青少年の健全な心身の育成と乗馬技術の普及向上を目的とした活動を行っている。また、那須塩原市が公立小学校で採用している「馬の授業」でも、授業現場となる市営「那須塩原市ホースガーデン」の管理・運営を行っている。

広田夫妻は、馬と触れ合うカリキュラムを通して、セラピー効果が期待できると話す。
社会福祉士の資格を持つ思乃さんに、ホースセラピー※について聞いた。

写真:インタビューに答える広田しのさん

「元々、子どもの福祉施設で働きたいとずっと思っていたんですね。栃木の福祉大に来て4年間ずっと児童養護施設で勉強を教えるボランティアをしていたんですけど、家のこととか、施設のこととか、学校のこととか、いろいろ悩んでる子どもたちが多くて。私が高校生の頃、病気をしたり悩んだりしたとき、一番の助けになったのが馬の存在だったんです。それで施設の子どもたちにもそういう経験をさせてあげたいな、馬に乗せたら悩みも少なくなるんじゃないかなって思って、ホースセラピーという活動をしています」(思乃さん)

※:那須トレーニングファームのホースセラピーは乗馬や馬の手入れを通じて、精神機能と運動機能を向上させることを目的としたカリキュラムです。

「ちょっと熱とかあるときも馬に乗ると調子が良くなって、お腹痛い、頭痛がするようなときも、馬の運動をすると良くなっていました。なんなのかわからないですけど。一言では言えないんですけど、馬は私の生活の、人生の一部みたいな感じで。馬がなかったら今の私はないし、これからもないかな。そんな存在です」(思乃さん)

写真:広田りゅうまさんの障害馬術の練習の様子

「お馬さんは競技スポーツだけではなくて、癒しのパートナーでもあると妻の思乃から教えてもらった。僕も自分の競技生活だけを考えていたんじゃダメだと、お馬さんの素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらって、そしてコミュニケーションを取れないで苦しんでる人たちをもっと幸せにすることが、自分の人生の使命じゃないかなと思って、そういう活動を始めるようになりました」(龍馬さん)

写真:馬の手入れをする広田りゅうまさん

オリンピアンの夫、日本一になった妻。その関係性とは。

写真:笑顔で少し照れくさそうな表情をみせる広田しのさん

二人三脚で活動をしている龍馬さんと思乃さん。お互いどんな印象を持っているのだろう。
「第一印象はすごい不思議な人でした。名前は知っていて、オリンピックに出た人っていうのは知ってたんですけど、ちょっとイメージと違っていて。楽しい人だな、不思議だなあと。やっぱりずっと小さい頃から馬をやっているので、もう馬のこと全部わかっている感じなんですよ。子どもたちが乗れない難しい馬でも、ちょっと乗り替わっただけで簡単に乗れちゃう。昔からいろんな馬に乗ってきて経験しているんだなって思います」(思乃さん)

写真:真剣な表情の広田りゅうまさん

「やっぱりすごく純粋ですね。お馬さんに対する感情移入能力って、うちの父は言ってましたけど、馬に心を入れる力がものすごいです。初めて会ったときから、すごく心が綺麗な子だなと思って、それで一緒になりたいなと思ったんです。常にお馬さんのために一生懸命できるところ、余計なものすべて捨てて打ち込めるところが、本当にすごいし素晴らしいなって尊敬しています」(龍馬さん)

写真:インタビューに答える広田やまとさん

息子の大和(やまと)さんにとって、両親はどのように映っているのだろう。
「お父さんは普段は面白い人。馬の上では、いつも見ないようなキリッとした姿になります。お父さんの方がよく教わります。どっちかっていったら厳しい方だと思います。でもお母さんの方が厳しい。姿勢のこととか細かい点とか。お父さんは足の使い方とかそういうことを教えてくれます。お父さんとお母さんのような選手になりたいです」(大和さん)

写真:笑顔でインタビューに答える広田しのさん

障害馬術は男女のクラス分けがない競技。夫婦で競い合うことはあるのだろうか。思乃さんは話す。
「ワールドカップの予選のとき、私、初めて大きい競技で満点だったんですね。『これ優勝するかもしれない』って勝手に思っちゃって、龍馬さんも『すごく良かったじゃん。思乃、今までも一番良かったよ』って。そしたら次の出番が龍馬さんで、出ていったときから全力で走っていて。シャーって走っていって、そのまま龍馬さんが勝ったんです。それで1位が龍馬さんで、2位が私だったんですよ。もう『へ?』ってなって。私、あのときのことは一生忘れないです(笑)」(思乃さん)

写真:並んで馬に乗る広田夫妻

龍馬さんも振り返る。
「追い越したときは、怒られましたね(笑)。でも奥さんがこれだけ良い走行をしたら、旦那も負けてられないというか。ちゃんと良い走行しないとね。夫婦としてお互い高めていかないといけないんじゃないのかなと。僕にとっては、かけがえのない、一緒に育ってきた分身でありパートナーですね。まずは彼女が良い走行してくれれば、僕はもっと良い走行ができそうな気はしますけどね」(龍馬さん)

写真:障害を並んで越える広田夫妻

同じ競技の選手でも、勝ちたい相手ではなく、高め合う存在。二人の関係について、思乃さんは考えている。
「ライバルではないんですけど、やっぱり競技で順位はつくものなので、それでちょっとずつお互いが上に行こうっていうのはあって、お互いが良くなっていくんじゃないかなと思っているんですけど」(思乃さん)

オリンピック出場の先にある、もう1つの目標。

写真:競技練習中の広田しのさん

今後の目標を2人に聞いた。
「馬を多くの人に知ってもらいたいし、多くの人に乗ってもらいたいっていうのはありますね。メダルを獲りたい、勝ちたいとかよりも、練習してきたことを発揮できるような走りをしたいので。良い状態の馬のことを知ってもらいたいですね」(思乃さん)

写真:競技練習中の広田りゅうまさん

「馬術というスポーツを知ってもらいたい。そのためにはホースガーデンのように地道な活動にプラスして、やっぱりオリンピックとかでメダルを獲らないと注目されないので。オリンピックでとにかくメダルが欲しいです、どんな形であれ。2人でオリンピックを目指すとなると、経済的に回っていかないんですけど、ただ1回しかない人生で、馬がいて、そういう選手がいるんだから、目指さないわけにはいかないだろうと。夫婦一緒に力合わせて、東京2020オリンピックを目指して頑張りたいと思っています」

オリンピック出場という目標の先には、馬をもっと知ってほしい、馬にもっと乗って欲しいという、より大きな目標があった。龍馬さんと思乃さんは力を合わせて、様々な障害を飛び越えていく。

インタビュー映像

那須トレーニングファームに所属する障害馬術の選手広田龍馬さん・思乃さん夫妻のインタビュー。

Youtube動画:1回しかない人生、2人で世界を目指さないわけにはいかない。 栃木・馬術篇 再生する

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