『月刊ドライバー』
2020年2月号に「Blue Battery caos」が掲載されその実力が実証されました
クルマのバッテリーは想像するよりも酷使されている。特にアイドリングストップ車は頻繁に繰り返されるエンジン始動に耐える専用品の搭載が指定される。交換時の悩みどころはやはり価格が……。価格重視か、せっかく交換するのだから大容量タイプか、安心してドライブするために選ぶべきバッテリーを検証する。
文=本誌・兒嶋 写真=金上 学photo by Manabu Kanagami
冬のバッテリー上がりにご用心
気温の低い早朝に突然のバッテリー上がり。これはバッテリー性能の低下によるもので、ある程度使用していると起こりうる。暖かい季節ならはともかく、外出先でエンジンがかからず、寒さに耐えながらレスキューサービスを待つのはつらいし、最悪、命に関わるかもしれない。
バッテリーは想像以上に酷使されている。特に、頻繁にエンジン始動を繰り返すアイドリングストップ車であればなおさらだ。加えて最近はスマートフォンの充電など、クルマの電力消費量はますます増加。これらが積み重なって弱ったバッテリーに、寒さが追い打ちをかけるのだ。
いざ新品へ交換となると、何を基準に選べばいいのか?重視すべきは、標準装着品と同等以上の「性能ランク」。これはバッテリーの能力を数値化したもので、値が大きいほど電気を多くため込め、安定した電力供給が可能となる。ただ、性能ランクが高い製品は少々値が張るのも事実。ならば純正相当の安価なものでいいのでは?と思ってしまうが……。さっそく実装テストした。
●2台のスバルレヴォーグ1.6ℓに高性能バッテリー「カオス」と格安な「X」を装着。走行条件を合わせて検証を行った。取材日の天候は晴れ。気温は2~6℃で、エアコンは22℃設定
高性能と安価でどう違う?
比べてみたのは、大容量かつ充電受入性能の高さが特徴のパナソニック「caos(カオス)アイドリングストップ車用」と、安価な製品「X(仮名)」。それぞれをス
バル レヴォーグの1.6ℓモデルに装着して検証。
純正装着のバッテリー型番は「Q85」。これと同等の格安海外製「X」は、インターネットの通信販売で購入(価格は約1万2000円)。
「X」に対し「カオス」は、性能ランク「Q100」と業界最高水準を誇る。この2モデルを同条件で走行し、アイドリングストップや始動性、充電制御の様子をチェックした。
アイドリングストップ中は、バッテリーの電力により電装品を駆動する。長くエンジンを止めれば、その分だけバッテリーの電力を消費し、再始動に必要な電
力量を下回らないところで解除される。頻繁なゴー&ストップを繰り返すと十分な充電ができず、アイドリングストップしないので燃費も悪化する傾向にある。
バッテリーはサイズが規定され、数種類用意される。基本的にはサイズが大きなほうがより大容量となるわけだが、車両の電力消費量などを考慮した容量のものが搭載される。大容量タイプは、ざっくり言うと電気を溜めておく仕組みに、高度な技術や素材を採用。高密度化が図られている。例えばレヴォーグに標準搭載されるのはサイズがQで性能ランクは85だが、「カオス」は、性能ランクが100と業界最高水準を実現。
しっかり仕事をする安心感
これを解決するのが、より性能ランクの高い製品。たとえ同じサイズでも、ため込める電力量が多くなるので余裕が生まれる。だから、より効率のいいタイミングで充電する。そしてアイドリングストップ時間が長い状態が持続し、省燃費性も高まるのだ。ただし、レヴォーグのアイドリングストップは120秒で解除されるため、今回の新品同士のテストではほとんど差が出なかった。
注目は波形の違いだ。ざっくり言うと大容量の「カオス」は余裕のあるぶんだけメリハリのある発電を行っている。充電受入性能の高さについても、減速時の軽負荷時にしっかりと発電させて、加減速によるエンジン負荷に対応して無駄なく充電を制御しているのが見て取れる。
ちなみに「X」の製品保証は1年半(走行距離3万㎞)。「カオス」は2年(最大3年※)で日本製。これらも安心感のプラス材料となるはずだ。
アイドリングストップ車のバッテリーは安くはない。だからこそ信頼できる製品を選びたい。「カオス」なら、日々のアイドリングストップ時間が長くなり燃費もよくなるし、しかもそれが長期間持続する。
さらに、バッテリーが長持ちすれば交換頻度も減り、結果的にコストを抑えられる。もちろん、突然のバッテリー上がりのリスクも減らせる。アイドリングストップ車こそ、本当に“価値ある製品”を選ぶべきなのだ。「カオス」なら、クルマ好きな読者でもきっと満足できるだろう。
※別売の製品保証延長キットで同時購入バッテリーの製品保証を1年延長し、最大3年となる
- [グラフの見方]
- :通常の発電
- :減速もしくはエンジン負荷のかからない積極的な発電
- :走行中の発電を伴わない電力消費
- :エンジンの再始動による電力消費
- :加速中の電力消費
テスト条件:2つのバッテリーにデータロガーを装着し、同条件で走行。走行中の加減速やアイドリングストップ、エンジン再始動での電圧の変化を計測した
「カオス」は充電受入性能が高い。クルマはオルタネーターで発電するが、そのたびに回転数が高まり、燃料を余計に消費する。加速時には、エネルギーを食われる。今回のテスト結果を見てみると、「カオス」は減速時にしっかりと充電。十分な電気をバッテリーにため込んでいる。つまり、エンジンに無駄な負荷をかけないから、ガソリンの消費が抑えられるのだ。
大容量だから無発電時の電圧落ち込みもなだらか。エアコンやオーディオに加え、スマホの充電な
ど電力を消費する機器が増えても安心感が高い。
省燃費だけじゃない!!
発電効率が高まり、加速も力強くなった!
アイドリングストップからの再始動時は、「カオス」のほうが明らかに電圧の落ち込みが少ない。これは、ため込む電力が大きいので、電圧が下がりにくいのだと推測できる。始動時の電圧の落ち込みも軽減されている。実際、始動性は良好だった。
さらに、「カオス」はアイドリングストップ持続時間が長いだけでなく、その状態が従来品の1.77倍も長持ちする。バッテリーの寿命末期まで、長時間のアイドリングストップ状態を保ち続けるという。長期間使うほど、その実力が実感できるはずだ。
寒い朝の始動性に差が出た
寒さでバッテリー性能が低下するとスターターモーターのまわりが鈍くなりがちだ。劣化したバッテリーだとこれがバッテリー上がりの要因にもなる。今回のテストは新品だったのでどちらも1発始動だったのだが、体感的には「カオス」の力強さが際立っていた。軽やかですぐにかかる印象。これは左上グラフの始動時の電圧降下率が低い点とも符合する。大容量かつ高性能バッテリーなら寒さにも強くなるのだ。
バッテリーの状態がわかる転ばぬ先の杖
「カオス」への交換装着時に、同時に取り付けておきたいお薦めのアイテムが、カーバッテリー寿命判定ユニット「LifeWINK」。これを装着しておくと、バッテリーの劣化状況を5段階のLEDで表示。寿命の見える化を実現する。さらにライトの消し忘れなどで放電して充電不足となった場合にも個別にお知らせ。この場合は劣化ではないので、充電すればそのまま使い続けられる。また、車両の充電系に異常があって充電できない場合もわかるので、むやみにバッテリー交換をしなくても済むのだ。
実際にLEDが要交換エリアに近づき、寿命を迎える前に余裕を持って新品に交換できた経験がある。見えることのありがたさを実感したのだ。
*『月刊ドライバー』2020年2月号「Blue Battery caos」掲載記事より抜粋