「それじゃあ、行ってくるわね。」
駅のロータリーで助手席から降りる妻に「楽しんでおいで」と声をかけ、
その姿を見送る。今日は高校の同窓会らしく、その前に仲の良いグループ
とお茶をする予定だそうだ。娘は大学進学と同時に家を出ているから、
今日は一人の週末になる。それじゃあ、私も目一杯楽しむとしよう。
ナビのオーディオボタンに指をかけ、プレイボタンを押すと
車内は、私だけの音楽・私だけの時間が流れる贅沢なプライベート空間へと早変わりする。
今日の目的地は、以前から少し心惹かれていた、絶景が拝めると噂の
スポット。
さぁ、誰にも干渉されない、私だけのドライブの始まりだ。
いつもと違う場所へ行く、その非日常性は甘美だ。繰り返される日常は、
そこで何が起こるか大体予想がつくものだが、違う場所を目指してみる
と、それは全くの未知。刺激的で、ほんのりと冒険の香りがする。
やっぱり、走るって……愉しい。
目に飛び込んでくる景色から、徐々にビルが少なくなっていき、代わりに
田畑や緑が目立つようになるにつれ、私の心はより一層、日常から離れて
いく高揚感で満たされていく。
「それじゃあ、行ってくるわね。」
駅のロータリーで助手席から降りる妻に「楽しんでおいで」と声をかけ、その姿を見送る。今日は高校の同窓会らしく、その前に仲の良いグループとお茶をする予定だそうだ。
娘は大学進学と同時に家を出ているから、
今日は一人の週末になる。それじゃあ、私も目一杯楽しむとしよう。
ナビのオーディオボタンに指をかけ、プレイボタンを押すと
車内は、私だけの音楽・私だけの時間が流れる贅沢なプライベート空間へと早変わりする。
今日の目的地は、以前から少し心惹かれていた、絶景が拝めると噂のスポット。
さぁ、誰にも干渉されない、私だけのドライブの始まりだ。
いつもと違う場所へ行く、その非日常性は甘美だ。繰り返される日常は、そこで何が起こるか大体予想がつくものだが、違う場所を目指してみると、それは全くの未知。刺激的で、ほんのりと冒険の香りがする。
やっぱり、走るって……愉しい。
目に飛び込んでくる景色から、徐々にビルが少なくなっていき、代わりに田畑や緑が目立つようになるにつれ、私の心はより一層、日常から離れていく高揚感で満たされていく。
この山道を登れば目的地だ。
右に、左に、連続したカーブで身体にかかる遠心力が心地いい満足感をく
れる。
平時の運転とは一味違うワクワクのあるドライブを経て、頂上付近に辿り
ついた。
車を降りると、山間から穏やかな海原が一望できる贅沢な景色が眼下に拡
がる。心が晴れ晴れとした感覚で満たされ、私は自然と大きく背伸びをし
ていた。
(わぁー)
ふと、妻の声を思い出した。
彼女は、美味しいものを食べた時や、綺麗な景色を観た時。
心が動いた瞬間は、いつも大袈裟にそれを声にする。
君はこの景色を見たら、どんな声でそれを表現するんだろう。
感情を表に出すのが恥ずかしいと思ってしまう私にとって、妻は出会った
ものへの感動を代弁してくれる存在なのだと改めて気付く。
次は、妻を誘って二人で来よう。
そう心に決め、私は愛車のドアを閉めた。
すっかり日もくれた帰路を走りながら思う。
非日常の時間。それは気晴らしとか気分転換とか、そういった意味だけで
なく、少し日常から離れることで、繰り返しだと思っていた日々のありが
たさに気づく時間でもあるのかも知れない。
私たちは、ものすごくありふれていて、何にも替えられない素晴らしい日
常の中にいるのだ。
駅のロータリーに車を停め、同窓会を終えた妻を助手席に迎えた。
それじゃあ、私たちの日常へ帰ろう。
家までの道中、車中の私たちはいつもよりほんの少し饒舌だった。
この山道を登れば目的地だ。
右に、左に、連続したカーブで身体にかかる遠心力が心地いい満足感をくれる。
平時の運転とは一味違うワクワクのあるドライブを経て、頂上付近に辿りついた。
車を降りると、山間から穏やかな海原が一望できる贅沢な景色が眼下に拡がる。心が晴れ晴れとした感覚で満たされ、私は自然と大きく背伸びをしていた。
(わぁー)
ふと、妻の声を思い出した。
彼女は、美味しいものを食べた時や、綺麗な景色を観た時。
心が動いた瞬間は、いつも大袈裟にそれを声にする。
君はこの景色を見たら、どんな声でそれを表現するんだろう。
感情を表に出すのが恥ずかしいと思ってしまう私にとって、妻は出会ったものへの感動を代弁してくれる存在なのだと改めて気付く。
次は、妻を誘って二人で来よう。
そう心に決め、私は愛車のドアを閉めた。
すっかり日もくれた帰路を走りながら思う。
非日常の時間。それは気晴らしとか気分転換とか、そういった意味だけでなく、少し日常から離れることで、繰り返しだと思っていた日々のありがたさに気づく時間でもあるのかも知れない。
私たちは、ものすごくありふれていて、何にも替えられない素晴らしい日常の中にいるのだ。
駅のロータリーに車を停め、同窓会を終えた妻を助手席に迎えた。
それじゃあ、私たちの日常へ帰ろう。
家までの道中、車中の私たちはいつもよりほんの少し饒舌だった。
翌朝、通勤のため車に乗り込み私の日常が始まる。
お気に入りの音楽で気持ちを仕事モードへ切り替えるのは、
私の朝のルーティンだ。
赤信号で停車し、ふと左手側の釣具店の駐車場に停まった車に目をやると、
買ったばかりの釣竿をキラキラした目で振っている男の子が目に入った。
君も今から冒険に出かけるのかな? いくつになってもいいもんだよな。
昨日のドライブの余韻が心に蘇る中、信号が青へと変わる。
「楽しんでおいで」と心の中でエールを送り、私は車のアクセルを踏んだ。
翌朝、通勤のため車に乗り込み私の日常が始まる。
お気に入りの音楽で気持ちを仕事モードへ切り替えるのは、私の朝のルーティンだ。
赤信号で停車し、ふと左手側の釣具店の駐車場に停まった車に目をやると、買ったばかりの釣竿をキラキラした目で振っている男の子が目に入った。
君も今から冒険に出かけるのかな? いくつになってもいいもんだよな。
昨日のドライブの余韻が心に蘇る中、信号が青へと変わる。
「楽しんでおいで」と心の中でエールを送り、私は車のアクセルを踏んだ。