僕は、独身時代から釣りが趣味だ。
息子が小さかった頃はご無沙汰だったが、最近になって妻の許しが出た
ため、二、三ヶ月に一度くらいのペースで昔の仲間と釣りに出かけている。
ただし! と前置きする妻の顔はよく覚えている。
「あの子は連れてっちゃダメよ、まだ小さいし危ないから」
その言いつけを守り、釣り道具は息子の目に触れないところにしまっていた。
そんなある日、息子はお手伝いのため掃除機を取り出そうと押入れを開けたところ僕の釣り道具を見つけてしまう。
「これ、おさかなつるやつだよね!」
と興味津々でハシャぎ、触らせて! とせがむ息子を
「もう少し大きくなったらね」
となだめて、その場を収めた。
……つもりだったけど、
一度火のついた好奇心は何者にも止められない。
「シュッ!・・・・ポチャン。シュッ!・・・ポチャン」
あの日以来、息子はチラシを丸めて釣竿を作り、効果音を口ずさみ、
軽快なリズムで想像の世界の釣りを楽しんでいる。
早く大きくなりたいなー! と唱えながら。
僕は、独身時代から釣りが趣味だ。
息子が小さかった頃はご無沙汰だったが、最近になって妻の許しが出たため、二、三ヶ月に一度くらいのペースで昔の仲間と釣りに出かけている。
ただし! と前置きする妻の顔はよく覚えている。
「あの子は連れてっちゃダメよ、まだ小さいし危ないから」
その言いつけを守り、釣り道具は息子の目に触れないところにしまっていた。
そんなある日、息子はお手伝いのため掃除機を取り出そうと押入れを開けたところ僕の釣り道具を見つけてしまう。
「これ、おさかなつるやつだよね!」
と興味津々でハシャぎ、触らせて! とせがむ息子を
「もう少し大きくなったらね」となだめて、その場を収めた。
……つもりだったけど、
一度火のついた好奇心は何者にも止められない。
「シュッ!・・・・ポチャン。シュッ!・・・ポチャン」
あの日以来、息子はチラシを丸めて釣竿を作り、効果音を口ずさみ、軽快なリズムで想像の世界の釣りを楽しんでいる。
早く大きくなりたいなー! と唱えながら。
「一度、連れて行ってあげたら?」
ようやく息子が寝てくれた後のリビングで、妻が笑いながら言う。
意外な妻の言葉に、いいのか? と尋ねる。
「だってさ、あんなに目をキラキラさせて、パパのやってることに興味津々なんだもん、止めちゃ……可哀想だよね。」
言葉では納得しているものの、どこか寂しそうに妻は続ける。
「子どもって、親が思ってる以上に、自分を持ってるんだなぁ」
妻の言葉にハッとする。
危ないことはさせたくない、と遠ざけていても、いつの間にか自分の
「好き」を見つけて、それを主張するようになっていく我が子。
その姿は、成長が嬉しい反面、いつか大人になって僕らのもとを離れてい
くアイツを想像させ、それが妻にはたまらなく寂しいのだ。
「だったらさ……」
え? と顔を上げた妻に僕は続ける。
「三人で行こうよ! 来週」
僕の提案に、私できるかな? と一瞬困惑の色を浮かべた妻だったが、
すぐに嬉しそうに「うん……そうしよう」
と同意してくれた。
「一度、連れて行ってあげたら?」
ようやく息子が寝てくれた後のリビングで、妻が笑いながら言う。
意外な妻の言葉に、いいのか? と尋ねる。
「だってさ、あんなに目をキラキラさせて、パパのやってることに興味津々なんだもん、止めちゃ……可哀想だよね。」
言葉では納得しているものの、どこか寂しそうに妻は続ける。
「子どもって、親が思ってる以上に、自分を持ってるんだなぁ」
妻の言葉にハッとする。
危ないことはさせたくない、と遠ざけていても、いつの間にか自分の「好き」を見つけて、それを主張するようになっていく我が子。
その姿は、成長が嬉しい反面、いつか大人になって僕らのもとを離れていくアイツを想像させ、それが妻にはたまらなく寂しいのだ。
「だったらさ……」
え? と顔を上げた妻に僕は続ける。
「三人で行こうよ! 来週」
僕の提案に、私できるかな? と一瞬困惑の色を浮かべた妻だったが、
すぐに嬉しそうに「うん……そうしよう」
と同意してくれた。
車内で、もうチラシを丸めたおもちゃじゃない、念願のマイ釣り竿を振り
ながら大声でハシャぐ息子。
車を買う前、移動手段が電車かバスだった頃は、息子のワンパクに
「静かにしなさい」と注意しなければならなかったけど、車ならばその
必要もない。
元気いっぱいの息子の姿を気兼ねなく見守れるしあわせを噛みしめ
ながら、その様子を妻と微笑ましく見ていた。
その時、ふと「僕らも一緒に楽しむぞ!」という決意のようなものが湧き
上がってくる。
「よーし! 出発だーーー!!」
年甲斐もなく大きな声を出す僕に
「おーーーーーーー!!!」
と妻も息子も大声で調子を合わせてくれる。
誰に気兼ねすることもない、家族だけの時間が流れる車内は、その時、
僕たちをもっと家族にしてくれた気がする。
車を降り、はやる気持ちを押さえきれない息子の肩に手をかけ、
道路を渡るタイミングを図っていると、老夫婦の乗った車がブレーキを
かけ、道を譲ってくれた。
頭を下げる僕らを、手を振り優しい笑顔で見送ってくれている。
僕ら家族のアドベンチャーへの心温まるエールを受け取り、
僕らは釣り場へと向かった。
帰りの車中、初めて釣った魚の感触が忘れられないのか、釣竿を握ったま
ま、眠る息子の姿がバックミラー越しに目に入る。
これは、僕らがこれから重ねていく冒険の第一歩だ。
次は、どんなワクワクが待っているのかな。
座席で眠る二人を起こさぬよう、ゆったりとしたスピードで走りながら、
僕は気が早いと思いつつも、次の冒険を想像し一人、笑顔になる。
車内で、もうチラシを丸めたおもちゃじゃない、念願のマイ釣り竿を振りながら大声でハシャぐ息子。
車を買う前、移動手段が電車かバスだった頃は、息子のワンパクに「静かにしなさい」と注意しなければならなかったけど、車ならばその必要もない。
元気いっぱいの息子の姿を気兼ねなく見守れるしあわせを噛みしめながら、その様子を妻と微笑ましく見ていた。
その時、ふと「僕らも一緒に楽しむぞ!」という決意のようなものが湧き上がってくる。
「よーし! 出発だーーー!!」
年甲斐もなく大きな声を出す僕に
「おーーーーーーー!!!」
と妻も息子も大声で調子を合わせてくれる。
誰に気兼ねすることもない、家族だけの時間が流れる車内は、その時、僕たちをもっと家族にしてくれた気がする。
車を降り、はやる気持ちを押さえきれない息子の肩に手をかけ、道路を渡るタイミングを図っていると、老夫婦の乗った車がブレーキをかけ、道を譲ってくれた。
頭を下げる僕らを、手を振り優しい笑顔で見送ってくれている。
僕ら家族のアドベンチャーへの心温まるエールを受け取り、僕らは釣り場へと向かった。
帰りの車中、初めて釣った魚の感触が忘れられないのか、釣竿を握ったまま、眠る息子の姿がバックミラー越しに目に入る。
これは、僕らがこれから重ねていく冒険の第一歩だ。
次は、どんなワクワクが待っているのかな。
座席で眠る二人を起こさぬよう、ゆったりとしたスピードで走りながら、僕は気が早いと思いつつも、次の冒険を想像し一人、笑顔になる。