読めば、あなたも既に持っている “しあわせ” に気付く

Our Life〜こころが動く4つのショートストーリー〜
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行き当たりバッチリ!

人生は思い通りには行かない。

俺が最初にそれを思い知ったのは、大学受験の時。第一志望の大学に落ちて、
滑り止めの大学に進学した。それまで挫折らしい挫折も無かったので、
この世の終わりのように落ち込んだものの、それもいつまでもは続かない。
どうせなら、キャンパスライフをとことん楽しんでやる! と気持ちを切
り替えた所で、彼女と出会った。

彼女は、俺の至らない所も面白がって、いつも笑顔でいてくれる。そりゃ
あ、喧嘩をしないわけじゃない。ただ、トータルで見た時、彼女は眩しい
くらいに屈託のない笑顔が印象に残る女性だ。

もう十年を越えた付き合いの中で色々なことがあった。俺が、就職活動で
希望の会社に全て落ち、唯一内定が出た企業に勤めることが決まった時も
「大丈夫! あなたなら、ガンバレる!」と励ましてくれた。実際、お題
目じゃなく「顧客第一主義」を地でいく社風は俺に合っていた。

人生は思い通りには行かない。

俺が最初にそれを思い知ったのは、大学受験の時。第一志望の大学に落ちて、滑り止めの大学に進学した。それまで挫折らしい挫折も無かったので、この世の終わりのように落ち込んだものの、それもいつまでもは続かない。どうせなら、キャンパスライフをとことん楽しんでやる! と気持ちを切り替えた所で、彼女と出会った。

彼女は、俺の至らない所も面白がって、いつも笑顔でいてくれる。そりゃあ、喧嘩をしないわけじゃない。ただ、トータルで見た時、彼女は眩しいくらいに屈託のない笑顔が印象に残る女性だ。

もう十年を越えた付き合いの中で色々なことがあった。俺が、就職活動で希望の会社に全て落ち、唯一内定が出た企業に勤めることが決まった時も「大丈夫! あなたなら、ガンバレる!」と励ましてくれた。実際、お題目じゃなく「顧客第一主義」を地でいく社風は俺に合っていた。

Strada

付き合って何年目だったかな? セミがベル式の目覚まし時計みたく、け
たたましく鳴く夏真っ盛り。二人で日帰り旅行に出かけることにし、
森林浴をしよう! と樹々の生い茂る林間部を目指し、高速を走っていた
…はずだったのだが、分岐を間違ってしまい、別の方面へ向かう車線に乗っ
てしまった。「あ……」と気まずそうな俺の声をかき消すように
「よし! 海だーーーー!」
と彼女は宣言してくれたっけ。水着も何も無かったけど、ズボンの裾をま
くって足だけ海に入ったり、岩場で蟹を見つけて、大はしゃぎしたり、
二人で出来ることを最大限に楽しんだあの感じは、幸せってこう言うこと
か、と大袈裟に思ったものだ。

来月、係長への昇進が決まった。そのお祝いに、と言う名目で彼女を旅行
に誘ってある。
今回は、まっすぐ目的地にたどり着けるといいんだけど……。少し不安に
なりつつ、明日に備えて早目に床についた。

他愛もない話をしながらのドライブ。前を走る車は、小さい男の子がいる
ファミリーだ。「かわいいねー」
と笑っている彼女を横目に俺は少し緊張している。実は、今回サプライズ
プレゼントを渡す計画があるのだ。
道中、道を間違えないだろうかという不安もあるが、こいつを計画通りに
渡せるか、も不安の種だ。
「いずれ、俺たちもあんな風になろう」
とでも言いながら、多少格好つけて渡したいんだけど……。

付き合って何年目だったかな? セミがベル式の目覚まし時計みたく、けたたましく鳴く夏真っ盛り。二人で日帰り旅行に出かけることにし、森林浴をしよう! と樹々の生い茂る林間部を目指し、高速を走っていた…はずだったのだが、分岐を間違ってしまい、別の方面へ向かう車線に乗ってしまった。「あ……」と気まずそうな俺の声をかき消すように
「よし! 海だーーーー!」
と彼女は宣言してくれたっけ。水着も何も無かったけど、ズボンの裾をまくって足だけ海に入ったり、岩場で蟹を見つけて、大はしゃぎしたり、二人で出来ることを最大限に楽しんだあの感じは、幸せってこう言うことか、と大袈裟に思ったものだ。

来月、係長への昇進が決まった。そのお祝いに、と言う名目で彼女を旅行に誘ってある。
今回は、まっすぐ目的地にたどり着けるといいんだけど……。少し不安になりつつ、明日に備えて早目に床についた。

他愛もない話をしながらのドライブ。前を走る車は、小さい男の子がいるファミリーだ。「かわいいねー」と笑っている彼女を横目に俺は少し緊張している。実は、今回サプライズプレゼントを渡す計画があるのだ。
道中、道を間違えないだろうかという不安もあるが、こいつを計画通りに渡せるか、も不安の種だ。
「いずれ、俺たちもあんな風になろう」
とでも言いながら、多少格好つけて渡したいんだけど……。

Strada

その時、ポンという音と共にナビが渋滞回避ルートを提示する。案内に従っ
て左折すると、しばらくいった先に、抜けるような青空と一面に広がる穏
やかな海が視界に飛び込んできた。あれこれ悩むことが小さなことに思え
てくる、包み込まれるような絶景……。

「綺麗―!」と声を上げる彼女を見て、フッと肩の力が抜けた。

ドライブをしていると、こんな風に思いがけず素敵な景色に出会えること
がある。それを大切な人と共有することで、一生の思い出になってくれる
ことだってある。
人生だって、きっと同じだ。

そうだ、予定通りじゃなくていい。大なり小なり人生は、思い通りに進む
とは限らない。でも、それを一緒に笑ってくれる人がいれば、その楽しさ
は無限大だ。

この先も俺たちに起こる予定外を、ふたりで一緒に楽しんで行こう。

添える言葉が、ようやく決まった。
後部座席、カバンの底にしまった指輪に心の中で「よろしく頼むよ」と告
げ、俺は車を走らせた。

その時、ポンという音と共にナビが渋滞回避ルートを提示する。案内に従って左折すると、しばらくいった先に、抜けるような青空と一面に広がる穏やかな海が視界に飛び込んできた。あれこれ悩むことが小さなことに思えてくる、包み込まれるような絶景……。

「綺麗―!」と声を上げる彼女を見て、フッと肩の力が抜けた。

ドライブをしていると、こんな風に思いがけず素敵な景色に出会えることがある。それを大切な人と共有することで、一生の思い出になってくれることだってある。
人生だって、きっと同じだ。

そうだ、予定通りじゃなくていい。大なり小なり人生は、思い通りに進むとは限らない。でも、それを一緒に笑ってくれる人がいれば、その楽しさは無限大だ。

この先も俺たちに起こる予定外を、ふたりで一緒に楽しんで行こう。

添える言葉が、ようやく決まった。
後部座席、カバンの底にしまった指輪に心の中で「よろしく頼むよ」と告げ、俺は車を走らせた。