肌悩みという課題に確かな実感で応えたい。コラーゲン産生を促すRFの研究者。

北村 央 北村 央

そこにあるのは、肌悩みをもつ人への大きな愛。課題解決のためのさまざまな知識と手法をもちながら、未知なる領域へと常に思いを巡らせている技術開発者、北村 央。
パナソニックビューティ フェイスケアのキーパーソンのひとりです。

ゼロから生み出すもの作りの流れを取材しました。

メカニカルエンジニアになりたかった

大学で機械工学を専攻しており、メカニカルエンジニアとしてもの作りに携わりたいなと思ってさまざまな業界を検討しました。自動車メーカーや産業用ロボットメーカーなどを回る中で旧松下電工の研究所を見学し、高い生産技術のレベルに惹かれて入社を決めました。当時から生産設備にAIの概念を取り入れるなど考え方が進んでいたんです。

入社して10年ほど、社内生産ラインの設備開発を担当していました。生産ラインの稼働率を上げるために種々の情報を収集するシステムを構築したり、設備そのものを作ったりする仕事です。当社の生産は少量多品種という特徴がありますので、さまざまなものに幅広く触れることができました。

写真:パソコンを見る北村 央さん

その後、ヘアケア商品の設計に携わり、現在はフェイス・ボディケア商品の技術開発を担当しています。

肌悩みに対して的確な答えを絞り込む

今の仕事は、ゼロから新しいものを生み出すような感覚です。解決したいお題、つまり肌や顔にまつわる悩みがあり、それに対して調査を行なって生体的な作用機序をリストアップする。アプローチできる技術的な手段を具現化し、技術的難易度やコスト、大きさと重さ、特許、安全性などさまざまな面を考慮して絞り込みます。それをもって詳細設計をし、専門の評価担当者をパートナーに効果検証を行うまでが私の仕事です。

写真:スチーマーをマネキンで試している北村 央さん

具体的には、企画担当者と話をしている中で、こんな肌悩みを解消したい、肌質をこう変えられたらいいのに、といった話が出てくるわけです。それに対してどんなアプローチをすればいいかを絞り込み、試作を繰り返しながらより良い条件を見つけて、当初の目的を達するスペックへと落とし込んでいく。同時に安全性も入念に検証します。

その後、設計担当がデザインなどを作り込み、商品化へと進みます。

RFの効果実感、心地よさ、安全性のバランスを目指して

今は、RF(注:ラジオ波)の研究をしています。RFは、表面を温めるヒーターとは異なり、物体の電気が流れた領域に“ジュール熱”という熱エネルギーを発生させ、物体そのものを温めるもの。そのため、保温効果が持続しやすくなります。肌に使うと、温感による血行促進効果によってコラーゲン産生を促すなど、一般的にさまざまな効果が期待できるとされています。

写真:RF(注:ラジオ波)の研究をしている北村 央さん

RFの特性を活かすためにさまざまなアプローチで研究を重ね、電極を4つのウェーブ状に並行配置するヘッドを新たに開発しました。これにより、幅広く帯状に加温することができるので温まりが早く、かつ均一になります。

電解質を含んだ液体で固めた寒天で、従来品との温度分布の違いを見る実験も行いました。ウェーブ状の方が温まりが早く、加熱領域が広く、保温時間も長くなることが確認できています。

写真:ウェーブ電極の場合とポイント電極の場合のイメージ

RFは出力さえ上げれば加温効果が高まるものですが、効果実感と心地よさ、安全性という3つのバランスにこだわった形に着地させています。これは何を作る上でも同じです。最近は多少痛いもの、イコール効果があるというような考え方もありますが、個人的には心地よいものの方が長く使い続けていただけると思っているので、熱さや痛みがなく、使っていてウトウトと眠くなるような心地よさがあること。さらに、1回使っただけである程度効果を実感できることを大切にしています。

そのためには自分で体感することも必要なので、美容機器は長年試していますね。お陰さまでたまに肌を褒めていただけます(笑)。以前、まつ毛カーラーを開発したとき、カールの持続を見るために毎日マスカラをつけて出社していたこともありました。

なくてはならない美容機器を作れたら

女性の皆さん、最近は男性も加わり、メイクをしないと外出できないという方は多いですよね。そんなイメージで、ライフスタイルに自然と組み込むことができ、毎日必ず使いたくなるようなものを作れたらいいなと考えています。ビフォア&アフターが明確に違うからやめられない、みたいな…。まだ実現できてはいないのですが、課題としては常に心にあります。

写真:スチーマーを使用する北村 央さん

最近は昔に比べて肌や顔だちの悩みが多様化、細分化していますね。大きなトレンドが見えづらくなっていますが、そうしたリアルな声からニーズを見出し、なくてはならない美容機器を発明できたらいいなと思っています。

プロフィール

北村 央(きたむらひさし)

大学で機械工学を専攻し、卒業後に旧松下電工へ入社。社内生産ラインの設備開発を経て、商品構造と工法と同時に開発するテーマを担当し、商品設計に業務がシフト。ヘアケア商品群などの開発を経て、フェイスケアではスチーマー、毛穴洗浄機、イオンエフェクター、かっさ、EMS、RFの技術開発を担当。

写真:北村 央さん
  • インタビュー内容は2022年9月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です