かっさやイオン機器など自らの経験を活かして、美容男子が美顔器開発。

前川大樹 前川大樹

どんな商品づくりにも、欠かせないのはユーザー目線。パナソニックの美容機器は、細部にわたり使い心地の良さを追求した〝使い続けたくなるクオリティ〟に定評があります。そのキーマンであるのが、普段から美容機器を愛用し、この仕事は天職だと語る設計者、前川大樹。譲れないこだわりと、それを支える技術についてインタビュー。

自分でも使う美容家電を、もっと満足度高く

大学院で、針を刺さずに使える、痛みを伴わないスマートウォッチ型の血糖値測定機器の開発に取り組んでいました。この経験を通して生体の奥深さと、ヒトに接する機器の社会貢献度の高さを実感し、仕事でも生体に関わる機器の開発に携わりたいと思い始めました。個人的にスキンケアや美容が好きだったこともあり、美容機器を作る仕事は天職だと思っています。

写真:白衣を着た男性と話している前川大樹さん

もの作りという点において美容機器の魅力は、自由度の高さです。一般的な家電と比べて固定観念が少なく、アイデアも形も自由、私が担当する設計面でも自由度が高いです。試作品を含めていろんな美容機器を実際に使ってみて「ここがこうだったらもっといいのに」と感じるポイントを、製品のクオリティにしっかり反映できたらと思っています。

肌に触れる部分の均一な温感が、心地よさにつながる

設計というのは、技術開発者が作った技術、企画担当が立案した美容機器のアイデア、デザイン部門のイメージなどをもとに、実際に量産可能な製品に落とし込んでいく仕事です。たくさんの人の思いを受ける仕事ではありますが、それだけではなく、設計には担当者の細かいこだわりも入っています。その具体例をいくつかお話しします。

まずは「バイタリフト かっさ」です。EMSがメインの商品ですが、もうひとつの機能である温感も、使い心地の良さを叶えるために重要だと考えました。
ただし本製品こだわりのかっさ形状は、凹凸があり非常に複雑な構造のため、温熱が均一に伝わりにくくなるというデメリットがあります。一方、どの場所もお客様の肌に当てて使うので、ムラなく温感をしっかりと感じていただく必要があります。ふたつのEMS電極とかっさ形状の各部を均一な温度にするため、何度も伝熱部品の修正を重ね、心地よい温感を実現しました。

こうした細かい工夫はなかなか伝わりづらいのですが、使ってくださる方に違いを感じていただけるよう、こだわっています。その結果、今回の「バイタリフト かっさ」では、SNSや口コミで「温感が気持ち良い」「温かさが絶妙」というお声をいただけていて、とても嬉しいです。

音を抑えて使えるシーンを増やす

次は新製品の「イオンブースト マルチ EX」。お手持ちのスキンケアコスメと一緒に使い、美容成分の角層への高浸透を実現する美顔器で、新たにEMS、防水機能も搭載しています。この製品にも心地よい温感と、そして肌を引き締める冷感モードを設計しました。スキンケアコスメを角層まで浸透させるモード(MOISTモード)で肌にあてる面には、電極が3枚ついています。この3枚が均一な温かさ・冷たさになるよう、パソコン内部の放熱に使われることもある伝熱材を、パナソニックビューティでは初めて使用しました。心地良い温冷を実現するため、これまでの当たり前を打ち崩すことに挑戦しました。

写真:パソコンを操作する前川大樹さん

こういった肌を冷やして引き締め感を与えるモードが搭載されている美容機器には、一般的に、製品内部の部品を排熱するために製品本体に穴が空いています。しかし今回は防水仕様も搭載しているため、絶対に穴は空けられません。この相反を両立させるために、「イオンブースト マルチ EX」では開発時に製品構成を根本から見直し、今まで当たり前だった製品本体の排熱穴をなくしました。これにより振動音なども静かになり、使用時のストレスを低減できると考えております。また、TVを見ながらリビングで…など、気軽に使っていただく可能性が広がり、防水仕様も実現したため使い勝手が向上しました。

パーツの紛失を防ぎ、安全性を配慮した細かな工夫も

同じく「イオンブースト マルチ EX」では、スキンケアコスメを角層浸透させる際に化粧水を含ませるコットンを装着できるようにしています。ただコットンを装着する、という最低限の機能を満足するだけでない、使用感を楽しんでほしい。そんな思いから、パナソニックビューティでは初めて金属製コットンリングを採用しました。世の中の様々な種類のコットンを取り付けられるようなサイズを見つけることに苦労しましたが、何種類ものコットンを実際に取り付け、見直しを重ねることで実現できました。

写真:機器を操作する前川大樹さん

コットンをしっかり安定して装着でき、たとえば水洗いのときに振ったとしても、簡単にリングが外れて飛んでいってしまうことがないように。保管時や持ち運び時にものがあたってぽろっと外れることもないように。細かい点ですが、使い勝手の良さにつながる部分も重視して開発を進めています。

実際に美容機器を使用する者ならではの細かい視点にこだわって、これからも製品開発を続けていきたいです。

プロフィール

前川大樹(まえかわだいき)

1995年生まれ、2020年入社の若手ホープ。学生時代から生体に関わる機器の開発を仕事にしたいと考えており、美容が好きだったことから、就職活動の面接時には「美容家電がやりたい!」と人事に直訴。夢が叶い、さまざまな美容機器の設計を担当している。もの作りの過程でほぼ毎日のように起こるトラブルと向き合いながら、ひとつずつ改善して製品の完成度を高めるべく邁進中。

写真:前川大樹さん
  • インタビュー内容は2023年10月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です