パナソニック初の完全ワイヤレスで勢力図が一変? ノイキャン「RZ-S50W」/スタンダード「RZ-S30W」レビュー(Phile-web)

パナソニックから遂に登場!「RZ-S50W」「RZ-S30W」は本気の仕様が満載 掲載元: Phile-web(2020年3月19日) 執筆:折原一也パナソニックから遂に登場!「RZ-S50W」「RZ-S30W」は本気の仕様が満載 掲載元: Phile-web(2020年3月19日) 執筆:折原一也パナソニックから遂に登場!「RZ-S50W」「RZ-S30W」は本気の仕様が満載 掲載元: Phile-web(2020年3月19日) 執筆:折原一也

パナソニックが2020年4月、満を持して「RZ-S50W」「RZ-S30W」の2機種で完全ワイヤレスイヤホン市場に参入する。

イヤホン選びで “完全ワイヤレスイヤホン” がファーストチョイスとなってきた今、単に新規参入するというだけでは、さほど大きなトピックではないかもしれない。だが、初めてのモデルでノイズキャンセリング機能を搭載したRZ-S50Wを投入したところからも、パナソニックの本気度が伺い知れる。それでは早速、RZ-S50W/RZ-S30Wそれぞれの実力をチェックしていこう。

ノイズキャンセリング技術、アンテナ設計まで自社設計満載の「RZ-S50W」

パナソニック初の完全ワイヤレスイヤホンの上位モデル「RZ-S50W」は、2020年の完全ワイヤレスのキーワードとなる “ノイズキャンセリング” 機能を搭載し、登場した注目機種だ。完全ワイヤレスイヤホン市場の中では上位クラスにあたる。

独自のデュアルハイブリッドノイズキャンセリングを搭載

RZ-S50Wの音響技術は専用設計で、ドライバーユニットには、広帯域な特性を備えるバイオセルロール素材を採用した、8mmダイナミックドライバーを搭載。音質にもこだわっている。

音楽操作や音量調節などタップ数、長押しで操作可能。タッチセンサーの反応もよく、誤操作は抑えつつも素早く応答する

機能面での注目はやはり、ノイズキャンセリング機能の搭載だ。RZ-S50Wに搭載されているパナソニック独自の 「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」は、多くの他社製品と同じくフィードバック/フィードフォワード方式なのだが、デジタル処理とアナログ処理を最適なかたちで掛け合わせ、高精度に騒音を低減するというもの。

もちろん、音楽を聴きながら使える「外音取り込み機能」にも対応する。なお、ノイズキャンセリング技術のベースは同じタイミングで発表されたTechnics「EAH-AZ70W」と共通になっている。

RZ-S50Wの実機を手に取ってみる。完全ワイヤレスイヤホンとしてはミドルサイズ程度の大きさで、空気の流れを最適化するバックチャンバーを確保した音響構造によって、少し背の高い筐体ながら耳への収まりは良好。デザインもナチュラルな質感で、大きさを感じることなく、すんなり装着できた。

完全ワイヤレスイヤホンとしてはミドルサイズの大きさ。装着するとすんなりとフィットして収まりも良い

操作はイヤホンのフェイスプレートに備えた全面タッチパネルで行う。実はこのフェイスプレート面には接続安定性を高める工夫があり、タッチパネル基板にBluetoothアンテナを共用する「タッチセンサーアンテナ」を新設計している。

電波を通しづらい人体の影響を受けにくいようにアンテナは外側に向けて配置、ほかにもスマホとの接続は左右独立受信方式を採用するなど、通信安定性を高める数多くの工夫が盛り込まれている。これらには、パナソニックが得意とするコードレス電話機を手掛ける中で培われたノウハウが活用されているという。

実際に短時間ながら都内の電車で検証した限りでは、片側だけの途切れも含め、音途切れが一度も発生しなかった。なお、ワイヤレス部の仕様はBluetooth 5.0対応で、SBCに加えてAACコーデックにも対応している。

操作体系は、左右イヤホンのタッチ回数と長押しによって割り当てられている。例えば再生/停止は左右どちらでも1回タッチ、音量操作は左を2回タッチで音量ダウン、3回タッチで音量アップ、ノイズキャンセル/外音取り込みの外音コントロール操作は右イヤホンを約2秒タッチ&ホールドする。

通話用マイクは、イヤホンのフェイスプレートの縁にあたるマイク穴の奥に高性能のMEMSマイクを搭載した「ラビリンス構造」によって、風切り音を低減する。2つの通話用マイクを採用すると共に、送話の音声とそれ以外を区別する「ビームフォーミング技術」によって、通話時に声をクリアに伝える設計も徹底している。

バッテリー駆動時間はイヤホン本体のみで6.5時間(ノイズキャンセルON/AAC)。本体とカラーが揃えられた充電ケースと組み合わせると最大19.5時間。ノイズキャンセル対応モデルと考えれば十分過ぎるほどの長時間再生対応だ。

イヤホン周囲にマイク穴を配置。ラビリンス構造により風切り音を低減している

ケースは手のひらにおさまるコンパクトサイズ

専用アプリ「Panasonic Audio Connect」も用意。ペアリングまでのガイドや、外音コントロールの切り替え、サウンドモードとして「バスエンハンサー」「クリアボイス」も設定できる。さらにアプリを使うことで、ノイズキャンセリングおよびアンビエントモードの強度を100段階で詳細に調節することもできる。

ノイズキャンセル性能はいきなり高い完成度。外音取り込みはよりクリアに

早速実機を使い、気になるノイズキャンセル性能をチェックしてみた。まず、カフェを模した屋内で軽く騒音低減を検証してみると、周囲の雑踏や店内BGMが、瞬く間に、大きく低減した。

独自の「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」による、ノイキャン性能をチェック!

続いて都内の電車に持ち出してみる。ここでは走行に伴う低音のノイズを、遠くの位置から小さく聴こえるような感覚に抑え込んでくれた。金属の軋むような音と振動をともなう低域の騒音は少し残るものの、完全ワイヤレスイヤホンのノイズキャンセル効果として、かなり高い完成度と言える。

なお、車内アナウンスや周囲の人の声については、元の音に近い形で残すタイプ。外音取り込みについては、実際の耳で聴くより高感度に音を拾い、声をよりクリアにする傾向だ。

端正で高解像度。全帯域の情報量をしっかり引き出す正統派サウンド

音質チェックではiPhoneとペアリングして再生した。まずは女性ボーカルの楽曲から聴くと、帯域バランスはフラットな傾向で、端正でまとまりある高解像度なサウンドが感じられる。ボーカルは明確なフォーカス感と共に、声の立ち上がりも丁寧で、滑らかに伸びる声を表現してくれた。

iPhoneとペアリングして再生。端正な正統派サウンドで、どんな音楽ジャンルにも合う

オーケストラの演奏は、自然な空間の広がりのなかで、ステージに広がるハーモニーが奏でられる。低音再生はリズムに適度な強さを保ち、バスドラムの音も見通しよく拡散する。ロックバンドの楽曲では、二人の男性ボーカルの声色を空間にしっかりとセパレーションして描き分けた上で、声の抑揚も立体的に見通すことができる。バスドラムの音色はライブ感があり、空間をさらに引き立たせる。

ビリー・アイリッシュの『bad guy』は、豊かに空間を満たしてくれる低音の沈み込みと共に、ゴリゴリとした質感でリズムを刻むパワーが強烈だ。一方、ボーカルのステレオ的な音場感は想像以上の位置感で再現され、声色の表現もクリア。ストレート、かつ全帯域の情報量を引き出す正当派の高音質サウンドで、音楽ジャンルを問わず様々な楽曲に適応する、かなりの実力を備えたモデルだ。

ちなみにRZ-S50Wのサウンドは、ノイズキャンセルのON/OFFによる差はほとんど感じられなかった。アプリから設定できるイコライザー機能は、プリセットの「バスエンハンサー」「クリアボイス」ともに、該当する帯域を若干持ち上げる程度の効果。特に小音量で音楽を聴く際に低音をもう少し強めたり、ボーカルをクリアにする用途でも活躍するだろう。

専用アプリ「Panasonic Audio Connect」

サウンドモードも調節可能。プリセット2つと、イコライザー調整も可能だ

RZ-S50Wは、第1世代から高い完成度のノイズキャンセリング性能、そしてサウンドクオリティまで揃った実力十分の一台。完全ワイヤレスイヤホンの勢力図を一変させる可能性すらある注目モデルといえる。

鮮やかでハイクオリティなサウンドで勝負する弟機「RZ-S30W」

冒頭で紹介したように、パナソニックから発売する完全ワイヤレスイヤホンにはもう一つ、RZ-S30Wも登場する。ノイズキャンセリング機能を搭載しないスタンダードなモデルで、同時発売のRZ-S50Wとはいくつか別設計が施されている。

ノイキャン非搭載のスタンダードモデル。専用設計を各所に施し、音質勝負のスタンダード機だ

サウンドを決める音響技術の設計もRZ-S30W独自のもので、直径6mmダイナミックドライバーを搭載し、空気の流れを作り出すエアーダクトをハウジング内側に配置している。

ワイヤレス性能はRZ-S50Wと同じく、スマホとのペアリングは左右独立受信方式、Bluetooth5.0対応でAACコーデックにも対応というスペックだ。バッテリー駆動時間はイヤホン本体のみで7.5時間、充電ケースと合わせて合計30時間に対応している。

ケースは上位機とほぼ同様。イヤホン本体とカラーを合わせたコンパクトなケースを採用する

RZ-S30Wのイヤホン筐体は、RZ-S50Wよりもひと回り小さい専用設計。共通点として、フェイスプレートの全面タッチパネルによる再生/一時停止、音量調節までの一通りの操作が可能な点、またタッチパネル基板にBluetoothアンテナを共用する「タッチセンサーアンテナ」を搭載するところは同様だ。

RZ-S50Wよりもひと回り小さく、女性など耳穴の小さいユーザーも使いやすいサイズ

下部にあたる部分にはパナソニックロゴをプリント

専用アプリ「Panasonic Audio Connect」も共通で、「バスエンハンサー」「クリアボイス」のサウンドモード設定も行える。なおノイズキャンセリング機能はないものの、外音取り込み機能は備えられている。

RZ-S30Wも、iPhoneと組み合わせてサウンドをチェック。RZ-S50Wと同じく女性ボーカルの楽曲を聴くと、音質傾向は中高域に強めのエネルギー感を出しながら、華やかで粒立ちも良い。高域までキレ良く鳴らす現代的なサウンドだ。艶やかな声の押し出しの強さも備えているし、低音も張り出してしっかり量感を確保するようだ。

エネルギッシュで現代的なサウンドを鳴らす

ロックバンドの楽曲では、ボーカルの声の通りの良さ、そして楽曲内で用いられるピアノの華やかで瑞々しい音に感心した。ドラムも臨場感たっぷりに再現し、曲を盛り上げる勢いがある。

ビリー・アイリッシュの『bad guy』では、ゴリゴリとした重低音にボリューム感があり、密度の高い音楽空間に没頭させてくれる。華やかで粒立ちの良い中域のお陰で、女性ボーカルの声も低音に埋もれず、クリアに発揮される所が良く出来たバランスだ。

イヤーピースはS/M/Lに加えて、XSも用意(写真はイヤホンにMサイズ装着、イヤーピースは左からL/S/XS)

コンパクト設計かつ軽量で、長く装着していても疲れにくい

パナソニックの完全ワイヤレスとしてはスタンダード機にあたるRZ-S30Wだが、市場の中ではサウンドで勝負する “高音質スタンダード” といえるだろう。RZ-S50Wともひと味異なる音質チューニングなので、サウンド重視で完全ワイヤレスイヤホンを探しているなら、是非ともRZ-S30Wもチェックしてみてほしい。