【教えて木原さん】親子で学ぼう!防災対策

親子で学ぶ防災の心がけについての監修:木原 実(気象予報士・防災士)
ライター:PHPのびのび子育て編集部
2020年3月10日 防災

春は新生活のスタートの季節です。この時期に親子で家庭の防災を見直してみませんか?
気象予報士でおなじみの木原実さんは、実は防災士としても活動されています。
今回は、親子で学びたい防災の心がけについて、教えていただきました。

教えて木原さん!

ママ:家の中で、もしものために、備えておくべきことは何ですか?

木原さん:家での被災を避けるためには、キケンを1つひとつ解消しておくことが減災につながります。とくに子どもがよくいる場所は、念入りにチェックしてください。

ママ:防災持ち出し袋や水や缶詰なども、一応用意はしているのですが、何をどのくらい用意するのがベストですか?

木原さん:以前は水や食料を3日分くらいと言っていましたが、今は、1週間~10日分くらいの水や食料などの用意をしてくださいと言っています。

  • 水(3ℓ/1人1日)
  • カセットボンベ(最大燃焼で1本約1時間使えます)
  • 缶詰や乾麺
  • 米(できれば無洗米) など。

家庭の非常用持ち出し袋も、できれば家族の人数分用意しておくようにしましょう。
置いておく場所も、逃げ道がどうなるかわからないので、玄関やベランダの非常口近くなどに分散しておいてもいいかもしれません。
ちなみに私は、毎日持ち歩くカバンの中に、小さなポーチに防災グッズを入れています(絆創膏、電池式充電器、マスク、ライター、携帯トイレ、手ぬぐい(包帯にもなる)、万能ナイフなど)。

ママ:水も缶詰もいつのまにか賞味期限が過ぎていたりして、もったいないなと思うこともあるのですが……。

木原さん:食料品などは、ローリングストック法で日常使いしながら、消費したら買い足していくという方法がおすすめです。月1くらいでチェックして備蓄を絶やさないようにしていきましょう。

家の中に潜む子どものキケンをチェックしておこう!

地震は揺れる前の9割で決まる!どれだけ心がけや準備をしているかが重要なのです。
ここでは、子どもがよくいる場所のチェックポイントをご紹介します。

本棚・くつ・懐中電灯

【子ども部屋】
タンスや本棚などがベッドの上に倒れてきたり、部屋の扉をふさがれたりしないように、L字金具とネジで壁に固定しておきます。
そして、暗闇でもすぐに手に取れる場所に、懐中電灯や靴を置いておきましょう。

【リビング】
家族みんながよくいる場所です。揺れが起こった後に集合するときは、照明器具が落ちたり、窓が割れたりしてガラスが散乱している恐れがありますので、各自、部屋に置いておいた靴やスリッパを履いて移動しましょう。

【トイレ】
トイレにひとりでいるときに地震が起こると、怖くてすぐそこから飛び出しそうになりますが、柱に囲まれたトイレは安全な場所とも言えます。
逃げ道となる扉をふさいでしまうものがないかいつもチェックしておきましょう。そして、揺れがきたときは、まずは扉を開けて逃げるための道を確保し、揺れがおさまってから避難しましょう。

“防災ごっこ”のすすめ

地震がきたときに大切なのは、パニックにならないことで、親が慌てていたら子どもも不安になってしまいます。あまり地震を「怖い、怖い」と言いすぎると、子どもはその場ですくんでしまって、適切な行動が取れなくなってしまいます。
まずは、親がしっかりと地震について説明し、日頃から家庭内訓練をしておきましょう。
地震は最初の2分間の行動が重要です!すぐに落下物などから身を守る態勢を取れるよう、普段から、クイズ形式で子どもに考えさせ、親子でシミュレーションをしておきましょう。

家の中で

【トイレにいるときは?】
扉を開けて逃げ道を確保して、揺れがおさまったら、家族の名前を呼んで、スリッパを履いたまま、リビングなどに集合する。

【キッチンにいるときは?】
倒れてきそうな冷蔵庫や食器棚からすぐに離れて、テーブルの下や部屋の角(柱があって強い)に隠れる。倒れてきそうな家具には十分注意する。

外で

【道を歩いているときは?】
自動販売機の近くや大きな看板の近くを歩いていたら、素早く離れましょう。
また、自動車が止まっていたら、前輪のエンジンのあるあたりにしゃがみこむという方法もあります。(エンジン部分は強いので、上から何かが落ちてきてもつぶれる可能性が低い)

【電車に乗っているときは?】
すぐに近くの棒につかまって、飛ばされないようにする。そして1人のときは周りの大人に頼る、駅員さんなどに助けを求める。

番外編

【①でんでん虫のポーズ】
学校の防災訓練で教えている地震が起こったときの態勢で、体を丸めて頭を守る「だんご虫のポーズ」というものがあります。木原さんはそれを少し進化させて、「だんご虫ができたら、でんでん虫に変身だ!」と教えられているそうです。頭を隠してしまったら周りが見えなくなって、何かが倒れてきたり、落ちてきたりしてもわからないこともあるので、少し目を出して、触覚のようにキョロキョロとまわりの状況を見極めて監視するのです。

【②机の下に隠れる】
ある小学校の避難訓練で、昼休みに緊急地震速報で避難指示の放送を流したところ、校庭にいた子どもが「机の下だー!」と言って教室に向かって走り出し、他の子どもたちもそれに続いたそうです。それは、いつも訓練で「地震がきたら机の下に身をかくしなさい」と言われていたためで、校庭にいる方が安全なのに、わざわざ教室に戻って机に隠れようとしたのです。
木原さんは、普段から親子でいろんな話をして、臨機応変に自分で考え、見極められるようにすることの重要性を感じたそうです。

地震が起きた!自宅避難をすることに……。さあ、どうする?

被災すると、慣れた家の中での暮らしも一変します。
「~できない」と気分も落ち込みがちですが、いまは便利な防災グッズもあるので、工夫をしながら乗り切りましょう。

ママ:東日本大震災のとき、ライフラインがストップして、子どもが小さかったので本当に大変でした。一番困ったのはやっぱり食べることですね。

木原:そういう不安な状況の中で、温かいごはんが食べられれば、子どもも元気でいられます。そこでおすすめなのが、「ポリ袋調理法」です。
透明のポリエチレン袋に、無洗米(1合)と水(200cc)を入れ、上を縛って沸騰したお湯の中に入れて20分程加熱して蒸らせば、ホカホカご飯のできあがり!同様に、缶詰の中身を出してポリ袋に入れて温めてもいいですね。
それから、水が貴重なので、基本は「洗い物を出さない」ということです。お皿にはラップを巻いて汚さないようにしたり、フライパンにもアルミホイルやクッキングシートを使い、混ぜたりするときも、全部ポリ袋の中でやってしまいましょう。

ママ:なるほど!それなら洗い物もなくて簡単にできそうですね。

木原さん:最近は、キャンプが流行っていますが、そこでご飯を作ったりするのもいい訓練になりますよ。

ママ:それから心配したのが、震災後、ストレスを感じているのか、子どもの元気がなくなってしまったことです。

木原:いつもの生活が一変するので、子どももストレスを感じているはずです。そんなときは、子どもと一緒に料理や片づけをするようにしましょう。親子のコミュニケーションにもなりますし、「手伝ってくれて助かるわ!」「ありがとう」と声をかけると、子どもは達成感を味わい、楽しくなってストレスも和らぐはずですよ。
それから、日頃から地域のコミュニティの活動に参加するなどして、つながりをもっておくことも大切ですよ。子どももたくさんの人たちと触れ合い、声をかけてもらうことで、孤立せずにすみます。

あってよかった!お助けgoods

ここでは、被災されたママさんがおすすめする「これがあってよかった!」というグッズを紹介します。

懐中電灯・ランタン

簡易ランタン:コップの中に懐中電灯を入れ、その上に水を入れたペットボトルを置く 水に少しの牛乳をまぜるとより光が広がる

電気やガスがストップしてしまうと、いかに「明かり」が大切か痛感します。明かりがあるだけで、子どもの不安な心も緩和されるでしょう。
懐中電灯をペットボトルに当てると広範囲に光が届くというワザもあります。各自の部屋ごとに備えておきたいですね。
ろうそくの明かりも、癒しポイントはとても高いのですが、火事には十分気をつけましょう。
それから、ラジオがついていたり、手回しで充電できたりするものなど、種類も豊富です。
今は、「フェイズフリー」といって日常と非常時、どちらでも使えて、見た目もおしゃれな製品も登場していますので、普段使いで活用していきましょう。

モバイルバッテリー(電池式)

被災時の情報収集や連絡にはスマートフォンが欠かせないので、モバイルバッテリーがとても便利。乾電池と充電池のどちらでも充電できるものもあり、必須アイテムの1つです。乾電池の備蓄も忘れずに!

通電火災に気をつけよう!

通電火災とは、停電から復旧したときに起こる火災のことです。
まず、停電になったら必ずブレーカーを落とし、電化製品のプラグをコンセントから抜くことを忘れないように。ブレーカーのある場所をしっかりチェックしておきましょう。
倒れた電気ヒーターなどの暖房器具の破損した電気配線に通電したときや、倒れた衝撃でストーブに溜まっていたほこりが出て、それに引火して火事が起こったり、ガスが漏れているところで通電して、発火したりする場合など、さまざまな原因があります。
火災は時間差で起こることがほとんどです。復旧したときは、必ず1つひとつていねいに点検していきましょう。

「ライター/PHPのびのび子育て編集部」
プロフィール:月刊誌「PHPのびのび子育て」は、親と子がしあわせになる子育て応援誌です。子育てに悩む親の気持ちに寄り添いながら、教育者やカウンセラーなど専門家による解説やアドバイスなど、さまざまな情報をお届けいたします。

この記事で紹介した商品

親子で学ぶ防災の心がけについての監修:木原 実(気象予報士・防災士)

お天気キャスターとして人気を博し、ナレーターや舞台俳優としての顔も持つ。 2004年には、防災士としての資格を取得。翌年に、日本防災士会常任幹事に就任。ジュニア防災検定(防災検定協会)理事もつとめる。
阪神大震災のときに、いろんな情報が錯そうしている中、カメラの前で何も伝えられなかった自分を悔しく思い、その後、防災士の資格を取得。東北大震災のときには、防災士として先頭に立ち、安全確保などの情報をテレビからみんなに訴えた。

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