Panasonic ヘルスケア

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筋量アップで老化に打ち勝つ Part.1 Part.2
筋量アップで老化に打ち勝つ
今月の先生 福永哲夫 教授
1941年徳島県生まれ。1964年徳島大学学芸学部卒業。1971年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士。現在、早稲田大学スポーツ科学学術院教授。バイオメカニクスや運動生理学、トレーニング科学が専門。高齢者対象のスポーツ教室などで寝たきり生活を予防する体力づくりを指導、講演なども行なっている。
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大西真一郎
最近、取材以外はほとんど外出する暇がなく、自室の机に座りっぱなし。そのせいか、駅階段の上り下りでさえ、肩で息をする始末。40歳、50歳の自分を思うとぞっとする。

日常生活に必要なのは“筋量”
インタビュアー
年々、体力の衰えを感じるのですが、そもそも年をとることで体力はどの程度落ちるものなのでしょうか。
  先生
その前に体力そのものについてご説明しましょう。一般に体力というと、筋力や持久力、瞬発力、バランス感覚、敏捷(びんしょう)性、柔軟性など様々なものをイメージしますね。ひと口に体力と言っても色々な意味があります。ただ、僕は体力という言葉を使わないで、“生活フィットネス”と呼んでいます。日常生活では、単なる身体能力ではなく、生活環境に適応できる身体的適応力(フィットネス)が不可欠だからです。この生活フィットネスで、最も重要なのが筋肉の量。つまり“筋量”です。よく、「体脂肪率が低いほうがよい」などと言われますが、それ以上に大事なのが筋量なのです。
  インタビュアー
私たちが生活するために欠かせない体力が筋量ということですね。
  先生
筋肉の量、“筋量”について聞いてみました。そうです。筋量は20歳くらいでピークを迎え、その後は加齢に伴って、落ちていきます。落ち方を見ると、50歳あたりまでは緩やかですが、50歳を越えると急激にダウンする。普通の生活をしていても、1年に1%くらいの割合で減少しますので、10年ではなんと10%の筋肉が身体から消えてなくなります。この際、身体の部位によって、減り具合は大きく異なります。腕など上半身はほとんど変わらないのに対し、太ももの前やお腹の筋肉(腹筋)は著しく減っていきます。
  インタビュアー
筋量が減少すると、身体にはどんな影響があるのですか。
  先生
しっかり立ったり、歩いたりすることができなくなります。体重1kg当たり、若い頃は25g程度ついている筋肉が、お年寄りでは15gくらいまで落ちてしまうケースもあります。こうなると転倒しやすくなりますし、骨折などで一度寝たきりになると、さらに筋量が減って、そのまま要介護の状態になることも多いのです。体重1kg当たりの筋量が10gを切ると完全に歩けなくなりますからね。ただ、お年寄りでも人によっては20gくらい保っているケースもある。筋量の個人差も年とともに大きくなるのです。
図:筋量が不足すると・・・
  インタビュアー
若い頃にしっかり運動していた人と運動しなかった人の違いでしょうか。
  先生
実はそうとばかりは言えないのです。若い頃にいくら身体を鍛えていても、運動しなくなったとたん、筋肉は目に見えて減っていきます。筋量は毎日の生活環境に大きく影響するもので、例えばベッドの上で何もしないでいると、2日間で1%くらい落ちます。毎日、動いているかどうかがポイントなのです。
筋量の低下はあらゆる病気を呼び寄せる
  インタビュアー
筋量の低下は病気にも関係があるのですか。
  先生
深いつながりがあります。筋肉がなくなることが、そのまま病気に直結するわけではありませんが、様々な病気を引き起こす可能性が出てきます。例えば肥満です。食べる事は必要ですが、動かないでいると筋量が減り、エネルギーが消費されにくくなるため肥満になりますし、肥満は糖尿病をはじめとする様々な生活習慣病を引き起こす引き金となります。
  インタビュアー
確かに、心筋梗塞、狭心症、高血圧、動脈硬化といった成人病は“運動不足病”と言われますね。
  先生
現代人の病気の大半は、日頃きちんと運動していないことが原因になっているのです。
  インタビュアー
最近、一見身軽そうなのに、実は体脂肪率が高いという“かくれ肥満”が増えていると聞きます。これも筋量と関係があるのでしょうか。
  先生
かくれ肥満の原因の多くはダイエットですね。かくれ肥満の原因の多くはダイエットですね。運動でなく、食事で体重をコントロールすると、確かに体重は落ちますが、同時に筋量も減ります。その結果、体脂肪率は現状維持か、場合によっては増えてしまうこともあるのです。これは、そのまま病気につながりますよ。毛細血管が少なくなるし、スタミナもなくなる。免疫力だって落ちる。どんな障害が発生してもおかしくない状況に陥ります。筋量を落とせば、基礎代謝(じっとしていても消費するエネルギー)も低下します。ダイエットでやせるつもりが、自ら太りやすい身体をつくり出しているようなものです。はけなかったズボンがはけるようになることと引き換えに、進んで病気になる危険を冒しているわけです。こうした方が最近の若い女性には多すぎますね。
  インタビュアー
怖いですね。真のダイエットはやはり運動で行うべきということですね。筋量を増やせば、太りにくい身体づくりにもつながるわけですし。
  先生
それだけではありませんよ。骨粗しょう症の予防にも効果があります。骨には必ず筋肉がついているので、筋肉が力を出せば、骨は物理的な刺激を受けます。すると骨密度が高くなるのです。逆に筋肉が力を出さないと骨密度はダウンする。こうしたスカスカの骨は骨粗しょう症に近づいていきます。運動不足が骨粗しょう症の原因とも言えます。
  インタビュアー
骨粗しょう症はとくに女性に多い病気ですよね。女性は閉経後に10〜20%の骨を失うそうですが、こうした更年期障害も原因のひとつと言われていますが。
  先生
女性ホルモンの影響は確かにあります。ただ、そういった場合でも、女性ホルモンの減少と運動不足からくる筋量低下があいまって、骨粗しょう症を引き起こしているケースが多いですね。ですから、バランスのとれた食事としっかりした運動で予防は可能です。
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