Panasonic ヘルスケア

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腸内環境について考える Part.1 Part.2
腸内環境について考える
今月の先生 後藤利夫先生
1959年生まれ。'88年東京大学医学部卒業。'92年東京大学付属病院内科助手を勤め、現在は大隅鹿屋徳洲会病院のほか千葉西総合病院や湘南あつぎクリニックなどに勤務。実父の大腸ガンを機に「大腸ガン撲滅」を目標に掲げ、独自の無麻酔・無痛大腸内視鏡検査法を開発。全国各地の医療機関で、その検査を実地している。また便秘外来を行っている数少ない医師のひとり。
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ライター・編集者。
最近、以前とは明らかに腸の調子が変わってきました。これは年齢によるものなのか、それとも…? 不規則な生活ながら、健康には気をつけようと心がけている今日この頃です。
腸の不調は身体全体に影響を及ぼす
インタビュアー
腸の不調は、どうして起こるのか教えてください。
先生
腸の調子が悪くなると便秘や下痢を引き起こしたり、ガスがよく出る、ガスの臭いが強すぎるという症状があらわれます。みなさんは、便秘や下痢などの症状についてばかりを気にされますが、その原因を知ることが大切です。まずは腸内に病気がないかを調べ、何もなければなぜ調子が悪いのかを検討します。腸が汚れていることや、大腸の中で善玉菌より悪玉菌が優位になっていることが、主な原因の場合として多いですね。
図:大腸の構造
  インタビュアー
便秘や下痢が、病気によって引き起こされることもあるのですか?
  先生
もちろんです。ポリープやガンかもしれませんし、今増えている潰瘍(かいよう)性大腸炎になっているのかもしれません。たかが便秘と思わずに、早めに病院にかかることをお勧めします。
  インタビュアー
善玉菌、悪玉菌という名前はよく耳にしますが、どういったものなのでしょう?
  先生
どちらも大腸の中に住みついている細菌で、便宜的に分けて呼んでいます。大腸の中には、およそ100種類・100兆個の菌がいますが、その中で身体に無害または有益なものを作り出すものが善玉菌、毒性のものを作り出すのが悪玉菌です。代表的な善玉菌にはビフィズス菌などの乳酸菌があり、悪玉菌はウエルシュ菌などが有名です。加えて、どちらにも分類されない日和見(ひよりみ)菌というものもあるんですよ。日和見菌は、腸内の環境によって、いい働きをしたり悪い働きをしたりと定まらない菌のことで大腸菌などが挙げられます。
  インタビュアー
先ほど、悪玉菌が善玉菌よりも優位になると腸の不調が起こると伺いましたが、どうしてでしょうか。
  先生
悪玉菌の作り出す毒素が、ガスとしてどんどん身体から排出されれば問題はないのですが、一度便秘になるとガスが身体の中にたまってしまいます。たまった毒性のガスが、腸の働きも動きも悪くさせるので、さらに便秘がひどくなります。便秘になると、便の腐敗が進みますます悪玉菌が増えるという悪循環になります。
  インタビュアー
便秘が起こると、腸内だけではなく身体全身に悪影響が出るのですか?
  先生
便秘により毒性物質が身体中に広がり、全身に影響がでます。便秘というのは、腐敗便が体内にとどまっている状態のことなのです。腐敗便は、悪玉菌のすみかになって、さらに悪玉菌が増えるという悪循環を引き起こします。また腐敗便から出た毒性物質が、大腸の血管から取り込まれて身体中に広がっていきます。全身に及んだ毒性物質の一部は肝臓で代謝されますが、皮膚から体外に排出されたものは肌荒れの原因に、呼気から排出されたものは口臭や体臭のもとになったり肺の病気を引き起こすこともあります。まさに全身に影響が及んでしまうんです。こうしたことからも、いかに腸内環境を良好に保つことが大切かわかると思います。
  インタビュアー
腸内環境の悪化から大腸ガンが増えていると聞きますが。
  先生
大腸ガンは、遺伝などでなることももちろんありますが、腸内環境の悪化もひとつの要因になっていますね。近年急激に食生活が西洋化して、日本人は食物繊維の摂取量が減りました。このことも大腸ガンを増やしている一因です。おおよそで言うと、現在日本人は2人に1人がガンになり、3人に1人はガンで亡くなる時代です。2004年度以降、大腸ガンは女性のガン死亡率トップになりました。男性でも、近い将来胃ガンを抜いて死亡率1位になると言われています。
  インタビュアー
そんなに増えているとは、知りませんでした。
  先生
大腸ガンは早期ガンであれば97%、進行ガンでも70%が助かるガンにも関わらず、多くの方が亡くなっています。大腸ガンになった方の人数はわかりませんが、治りやすいガンであることを考えると、かなりの方が罹患されているはずです。ですから便秘を軽視せずに、将来のガン予防という意味をこめて腸の健康には気をつけてほしいですね。
腸内細菌のバランスを保つ
  インタビュアー
便秘以外にも、悪玉菌が増えてしまう原因はありますか?
  先生
実は、現代の日本人の食生活は、悪玉菌を増やすことにつながってしまうことばかりなんですよ。肉などのタンパク質や脂質の過剰摂取も、その一因です。
  インタビュアー
それは、どういうことですか?
  先生
タンパク質や脂質は、悪玉菌のエサになるものだからです。小腸で消化・吸収できるだけの量を摂取している分には問題ないのですが、過剰に摂取をすると消化が十分にされないまま大腸に運ばれてきます。タンパク質には窒素や硫黄が含まれていて、悪玉菌が分解をすると窒素酸化物や硫黄酸化物ができます。これらは臭いもきつく、毒性もあるものです。
  インタビュアー
タンパク質の過剰摂取のほかに、悪玉菌を増やしてしまうものはありますか?
  先生
不適切な調理をしたものや、長期保存したものの多量摂取は、腸内環境を悪化させます!WHO(世界保健機関)は、不適切な調理方法もよくないとしています。肉を必要以上に高温で焼いてコゲを作ったり、長期保存したものなども含まれます。それらはタンパク質を変性させる恐れがあり、人間の酵素と合致しなくなる可能性が出てきます。酵素が分解できないタンパク質は、大腸まで運ばれ悪玉菌のエサになってしまうのです。スナック菓子などのジャンクフードなども長期保存された食べ物ですから、多量摂取をしている人の腸内環境は、悪化していると考えられます。
  インタビュアー
反対に善玉菌を増やす食事というのはありますか?
  先生
ヨーグルトがいいのは、よく知られていますよね。そのほかにオリゴ糖も挙げられます。オリゴ糖は、人間が分解できない炭水化物として腸にまで届き、善玉菌のエサになることが知られています。またオリゴ糖が分解されると酢酸ができて、腸内を酸性にしてくれるという働きもあります。酸性は、善玉菌には住みやすい環境なんです。そのほかには食物繊維と水分をしっかり摂って、便秘を防ぐことも善玉菌を増やすことにつながります。
  インタビュアー
善玉菌を増やす食品さえ食べていれば、腸内環境は整いますか?
  先生
いえ、ただその食品だけを食べていればいいというわけではありません。例えば、体調を崩して抗生物質を飲むと、体内の病原菌だけではなく大腸の菌にもダメージを及ぼします。風邪をひいて飲んだ抗生物質が、腸内の特定の善玉菌を壊滅的な状態に追い込んでしまうという可能性もあるのです。ですから腸内細菌は、いろいろなものがほどよくブレンドされている方が安全なんですよ。
  インタビュアー
それは、どういうことですか?
  先生
抗生物質を飲んで、多くの善玉菌が死滅してしまったとしましょう。そうすると、腸内環境がいつもとは違いますよね。普段は目立たない日和見菌が、そういった非常事態ともいえる環境下では、悪玉菌の増殖を抑えるなどのいい働きをしてくれる可能性があるのです。つまり、善玉菌を増やす特定の食品だけを食べるより、いろいろな食品をまんべんなく食べて、腸内細菌の適応能力に幅を持たせたほうがよいのです。それが腸内バランスを良好に保つことにつながるんですね。
図:腸内細菌と健康とのかかわり
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