連載第1回「骨盤のバランスが全身に影響? 体のカナメ・骨盤の働きとは」

監修:関口 由紀(せきぐち ゆき)
ライター:UP LIFE編集部
2020年1月29日
健康

「骨盤」は女性にとっても男性にとっても体のカナメといわれています。「骨盤」は骨、筋肉、臓器から成り立ち、歩く、姿勢を保つ、ためる、排泄する…といったさまざまな働きをしています。大きくて頑丈に見える骨盤ですが、実はとても繊細。今回は骨盤のメカニズムと働きについて紹介していきます。

おしりの形でわかる「骨盤の状態」

写真:手でお尻を触る女性のイメージ

突然ですが、あなたのお尻はAとBのどちらですか?

A.丸みがあってふっくらしていて触ると弾力があって温かい
B.角張っていてお尻のほっぺが凹んでいて触ると硬くて冷たい

「じつはこのお尻の状態があなたの骨盤、そしてそのまわりの筋肉の状態の目安になります」というのは、女性泌尿器専門医で女性医療クリニックLUNAグループ理事長の関口由紀先生。

「Aの人は、骨盤まわりの骨が整い、筋肉がしなやかに動き、血行がよく栄養や老廃物の代謝がきちんと行われている状態です。一方、Bの人は骨盤にゆがみがあり、筋肉がコリ固まっているため血行が悪くなっている状態。足先の血行も悪くなりやすい傾向があり、冷え体質の人に多いお尻の形です」

関口先生は多くの患者さんを診てきた経験からお尻の形で骨盤や骨盤まわりの筋肉の働きが良いかどうかわかるようになったのだとか。
「Aの人のようないわゆる美尻の人は骨盤底筋の働きがよく、体調がいい人が多い。また子宮、卵巣などの骨盤内の臓器の調子がいい人も美尻の人が多い傾向にあります」

このお尻の形は体や心の状態、体調によって変化するため、いまBタイプだからといってあきらめる必要はないのだとか。これから紹介していく骨盤のメカニズムや働きを理解するだけでも日常生活の過ごし方が変わり、Aのお尻の状態に近づくはずです。

「ためて出す」を繰り返すのが骨盤

写真:ストレッチをする女性のイメージ

「骨盤は1つの骨と大きな筋肉のかたまりでできているわけではありません。腸骨、恥骨、仙骨、尾骨などいくつかの骨と骨盤底筋群(恥骨尾骨筋、恥骨直腸筋、腸骨尾骨筋、尾骨筋など)、大腰筋、腸骨筋、大腿筋膜張筋、内転筋などのたくさんの筋肉が骨盤の形を支えています」と関口先生。

多くの骨と筋肉が組み合わさり上半身と下半身をつなぎ、安定した動きを生み出しているため、骨や筋肉の小さな不調を放っておくと、大きな不調に発展しやすいのが特徴だといいます。

画像:おしりの筋肉と骨の部位説明

「また骨盤の中には、子宮、卵巣、膀胱、大腸、小腸など生殖と排泄を司る重要な臓器があります。特に排泄に関しては、毎日『尿をためて出す』『便をためて出す』が繰り返され、人間の生理的機能の基本となる動きを行っています」

この「ためて出す」機能のほとんどを骨盤(底)が司っています。そのため、骨盤(底)のバランスが崩れると、尿モレ、便秘などの不調や姿勢が崩れるなどの症状が現れはじめるのです。

女性の骨盤がバランスを崩しやすい理由とは?

写真:走る女性のイメージ

「骨盤まわりのトラブルは圧倒的に女性に多いのが特徴です。これには3つの理由があると考えられています」と関口先生。

①筋肉を作るホルモンが少ない。

女性はテストステロンという筋肉を作る男性ホルモンの量が少ないため筋肉量が少なくなりがちです。骨盤は骨、筋肉、臓器で成り立っていて、特に筋肉は骨と臓器を支えるために重要な役割をしています。骨盤まわりの筋肉が減ると骨盤内の臓器を支えきれず姿勢を保つことができなくなり、バランスを崩す原因になります。

②膣があることで骨盤底筋が緩みやすい。

男性には尿道と肛門の2つの穴しかありません。一方、女性には尿道、膣、肛門の3つの穴があるため骨盤底筋が発達しにくい傾向にあります。また骨盤底筋自体の面積も狭いため緩みやすいと考えられています。

③出産を経験することで骨盤、骨盤底筋に負荷がかかる。

赤ちゃんを娩出する際に骨盤をゆがませ、骨盤底筋を傷つけてしまう場合があります。

骨盤底や骨盤まわりの筋肉は放っておくと衰えていきます。まずは骨盤底筋が動いているかを確かめ、意識的に動かすことで骨盤まわりの筋肉を整えていきましょう。それにより骨盤内の血行がよくなり、内臓の働きも整い始めます。

骨盤底筋が動いているか確認する方法

写真:お風呂に入っている女性のイメージ
  1. お風呂の中で体育座りになって、足を軽く広げる。
  2. 人差し指をゆっくり膣の中にいれていく。
    (※入らない場合や痛みがあるときは無理をしない)
  3. 第2関節くらいまで入れたら指を引き込むように、膣をしめる。

3.で膣をしめたときに指が中に引き込まれるのを感じたら、骨盤底筋が正常に働いている証拠です。また、お尻や太ももの筋肉が大きく動く場合は骨盤底筋が正常に機能していない可能性があります。

「まずは自分の骨盤底筋の働きを1日に1回、入浴時に確認してみましょう。引き締め緩めることができるようになったら骨盤(底)や骨盤まわりの筋肉が整ってきた証拠です」

監修

写真:関口 由紀(せきぐち ゆき)さん

関口 由紀(せきぐち ゆき)

女性泌尿器科専門医。女性医療クリニックLUNAグループ理事長。
横浜市立大学大学院泌尿器病態学修了。医学博士・経営学修士・日本泌尿器科学会専門医・日本排尿機能学会専門医・日本性機能学会専門医。2003年より横浜市立大学医学部泌尿器科で女性泌尿器科外来を担当。現在、横浜市立大学医学部泌尿器科客員教授。2005年に「横浜元町女性医療クリニック・LUNA」を開設。女性がいくつになっても、元気できれいであることを全力でサポートするクリニックを目指している。著書に『温かくてしなやかな「ちつと骨盤」が体と心を幸せにする。:女性が一番大切にしたい膣と骨盤ケア読本』(日本文芸社刊)、『いま、からだの中から変わる!女性ホルモンの力でキレイを作る本』(朝日新聞出版刊)など多数。

2020年1月29日 健康

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