目の健康 第1回「眼精疲労は筋肉の疲れ?自分にあった改善策で疲れを軽減しよう」
監修・ライター:田 聖花(でん せいか)
2021年1月28日
健康
私たちの目は、PCやタブレット、スマートフォンなどの普及によって昔よりも知らず知らずのうちに眼精疲労になりやすくなっています。しかし、もともとの視力によって眼精疲労のパターンが違ってくることはあまり知られていません。一人ひとりに合った改善策で、眼精疲労を改善してみましょう。
眼精疲労はピント調節の筋肉の疲れ。筋肉が衰えると老眼に。
私たちの目は、PCやタブレット、スマートフォンなどの普及によって、昔よりずっと知らず知らずのうちに眼精疲労を生じやすくなっています。
ではなぜそういった眼精疲労は起こるのでしょう。
眼精疲労の原因は、ピント調節に使う筋肉の疲労
眼精疲労はさまざまな原因で起こりますが、多くは調節障害=ピント調節力の低下として説明できます。
私たちは物をみるとき、距離や明るさによって絶えず茶目の部分(虹彩・こうさいといいます)と水晶体(瞳の奥にあるレンズの部分)を動かしてピントを合わせています。
虹彩や水晶体を動かしているものは筋肉なので、眼精疲労は筋肉疲労、筋肉痛と同じということになります。
とくに近い距離では、虹彩をぎゅっと絞り、眼球の位置も少し内側に寄せてものを見ています。
ですので、PCやスマートフォンをずっと同じ距離で見ていると、眼精疲労になりやすいのです。
暗い場所で近くを見すぎると、疲労に繋がる
また、暗いところでは虹彩は少し開きますから、暗いところで近くを見ることは、虹彩を開きたいのに絞らないといけないということになり、たいへん疲れることになります。
近いところを見続けると眼精疲労になりやすいということは、もともと遠くがよく見える、いわゆる視力のいい人は、実は眼精疲労をきたしやすいといえます。
老眼も筋肉が衰えてピント調節ができなくなることが原因
加齢によって、近くのものが見えづらくなったりする「老眼」も筋肉が原因です。
歳を重ねるとピントを司る筋肉が衰えてしまい、ピントを合わせるのに時間がかかってしまう、これが老眼の正体です。
自分に合ったピント調節の方法で、疲労を軽減しよう
眼精疲労は近くにピントを合わせるストレスを減らすことで、軽くすることができます。
目のほうでできることと、見る対象物のほうでできることに分けて対策するとよいと思います。
視力がよい人は、近距離(あるいは「近見」)用のメガネのお試しを
まず、眼鏡やコンタクトレンズを使ってこなかった目のよい人は、近く用の眼鏡を使いましょう。
いわゆる老眼鏡で、抵抗のある方もおられるかもしれませんが、いちばん軽い度数のものを掛けるだけでも、ずいぶん楽になります。
近眼の人は、度数の見直しで眼精疲労が軽減することも
近視で眼鏡やコンタクトレンズを使っている人は、度数を見直しましょう。
目は年齢とともに遠視化しますので、近視の度数を弱くする必要があるのです。
若いときにつくった眼鏡のままではいけません。
自己購入は要注意!適切な度数を知って、眼精疲労の予防
また、最近は処方度数の入力のみでネットでコンタクトレンズが買えてしまうため、ずっと同じ度数で自己購入してしまっている人も多いと思いますが、眼精疲労が強い場合は、ぜひ眼科を受診して、どれくらい度数を変更すべきか検査してもらってください。
スマホやPCは、40cm以上離して使用を
PCやタブレット、スマートフォンのほうはどう対策すべきでしょうか。
コロナ禍でPCワークやweb会議が増えた方も多いと思います。
PCとの距離を近づきすぎないように、40cmは取るようにしましょう。
その距離で見辛ければ、フォントサイズを大きくするなど、PC側の設定を見直します。
明るすぎは目に疲れの原因に
また、コントラストの強さも目の疲れに影響しますので、照度は差し支えない範囲で落とすとよいでしょう。
PCやスマホの画面は、白黒反転で使うと驚くほど目がラクに!
またPCに内蔵されている白黒反転機能を使って、文書作成ソフト(Wordなど)使用時では、背景が黒で文字が白の設定にすると、驚くほど楽になります。
スマートフォンもナイトモードにするなどコントラストを弱くすると疲れにくくなります。
なにより長時間見続けないことが大事で、1時間使えば10分休むなど、ピント麻痺・ピント固定といった現象が起きないようにするとよいと思います。
寝る前のブルーライトは百害あっても一利なし
最近、ブルーライトが目や体に及ぼす影響が知られるようになってきました。
PCやスマートフォンのディスプレイからはブルーライトが発されていて、眼精疲労の原因になっているとも言われていますし、睡眠障害になりやすいとも言われています。
実はブルーライトは太陽光にも含まれていて、ひとの体内リズムを司るのに重要な役割を担っており、ただ悪者であるだけではありません。
とくに日中に適度にブルーライトを浴びることは、健康な体内リズムを刻むのに大事です。
つまり、夜間にブルーライトを浴びることが目や体を疲れやすくするのです。
夜にPCの仕事が多くなる場合は、ブルーライトカットレンズの眼鏡を、普段眼鏡を使わないひとは度数0(いわゆる素通し)でよいので、掛けるようにするとよいでしょう。
作業直後はクールダウン。1日の終わりは温めがオススメ。
体の疲れと同様、目の疲れを簡単に直接的に治してくれる薬は、現代の医療をもってしてもまだありません。
目を使わず休めることがいちばんですが、そうも言っていられません。
なにか自分でできることはあるでしょうか。
酷使した目にはクールダウンを
先に述べたように、眼精疲労はピントを司る筋肉の疲労ですので、長時間PCワークなどをした直後は、クールダウンさせると気持ちよくなります。
筋トレ後のクーリングと同じですね。
冷蔵庫で冷やすタイプのアイマスクが売られていますし、保冷剤をハンカチに包んでまぶたにのせるのも、簡単でお勧めです。
長時間冷やすと血流が悪くなって逆効果ですので、数分にとどめるのがよいでしょう。
1日の終わり、目の周りの筋肉を温めてリラックスを
お昼休みや、夜など1日の終わりには、ゆっくり温めて血流をよくし、筋肉を和らげることが効果的です。
いろいろな種類のホットアイマスクが市販されていて便利です。
点眼薬は使いすぎに注意
お薬はどうでしょうか。
眼精疲労に効くという点眼薬が多数市販されており、お悩みの方が多いことがうかがいしれますが、メントール含有によって清涼感を得るものが主流です。
疲れの強い時、長時間ディスプレイを見続けたあとなどに時々使用するには問題ありませんが、市販の点眼薬には防腐剤や安定剤などが含まれており、目の状態によっては、日になんどもさすなど常用するのには向いていないこともあります。
常用しないとつらすぎる場合は、眼科を受診したほうがよいでしょう。
ビタミンBは目の疲労回復にも効果的
内服薬なら、ビタミンB群が肉体疲労に効果的です。サプリメントがいろいろ市販されています。
また、体内のエネルギー供給物質であるアデノシン三リン酸(ATP)を主な成分とするお薬も市販されています。
まとめ
いつの間にか蓄積してしまう眼精疲労。自分に合う改善策を見つけて、ひどくならないようにしたいものですね。
監修・ライター
田 聖花(でん せいか)
東京慈恵会医科大学眼科講師。角膜や結膜といった前眼部領域を得意とし、ドライアイから角膜移植まで、幅広く専門性の高い診療を行っている。レーシックなどの屈折矯正手術も手掛ける。日常のお悩みやニーズを丁寧な問診で拾い上げるよう、心がけている。
2021年1月28日 健康
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