血流企画 第8回「鉄分不足が原因!?気づきにくい『隠れ貧血』のセルフチェック方法」

監修:久手堅 司(くでけん つかさ)
ライター:UP LIFE編集部
2021年9月7日
健康

頭痛や肩こりがひどい。
疲れが取れず、いつも身体がだるい。

よくあるような症状で貧血を疑うというのは、なかなか難しいかもしれません。

でも、これらの症状を訴える方々の中には、貧血の一歩手前である方も少なくはないようです。

「隠れ貧血」とも呼ばれる状態は、症状が多彩で患者さんだけでなく、医師でも気づきにくいことがあるそう。

そんな厄介な隠れ貧血について、「せたがや内科・神経内科クリニック」院長の久手堅 司先生にお聞きしました。

症状が多く見つけにくい「隠れ貧血」

写真:黄色いトップスを着た女性が辛そうに額をおさえてるイメージ

「隠れ貧血」という言葉を聞いて、どんな症状を思い浮かべるでしょうか?

症状が隠れた貧血?診断しにくい貧血?貧血らしくない貧血…?

いろいろな憶測ができそうですが、今挙げたものは、どれも当てはまるようです。

久手堅先生に聞くと、隠れ貧血とは、身体がストックしてある貯蔵鉄が減ることによって起こる症状を指すようです。

「貧血」と「隠れ貧血」の違いとは

「『隠れ貧血』は、体内に鉄分のストックがない状態で起こります。
よく聞く貧血は、鉄欠乏性貧血と呼ばれ血中で酸素の運搬を担っているヘモグロビンが、主成分である鉄分不足によって数が減り、酸素を身体中に運搬できずに起こるもの。

通常、鉄分が欠乏したら、体内の貯蔵鉄を使って貧血状態をしのぐのですが、隠れ貧血の場合は、貯蔵鉄が足りない状態です。
貯蔵鉄の量を反映しているのが、フェリチンというタンパク質です。
フェリチンを測定することで、貯蔵鉄が足りているかを判断します。

この状態がつづくと、いずれは鉄欠乏性貧血に移行するのですが、隠れ貧血の状態だと、貧血に直接結びつくような症状が出ない場合もあるので、検査でフェリチンの値も見ていく必要があります」と久手堅先生。

また久手堅先生曰く、通常の貧血の検査でフェリチンの値までチェックする場合が少ないのも隠れ貧血が明らかにならない理由の1つだといいます。

それでは、隠れ貧血にはどのような症状があるのか?
そして、どのような予防や注意を行うべきなのか、順にみていきましょう。

隠れ貧血をセルフチェック!

隠れ貧血の症状は多く、さらによくある症状であることから、隠れ貧血にも関わらずいつまでも診断に至らなかったり、長らく辛い症状に悩んでいるという方が、実は多いかもしれません。

ここでは、隠れ貧血に多い症状を整理しました。
ご自身が当てはまるか、まずはセルフチェックしてみましょう。

【セルフチェック項目】1つでも当てはまれば、隠れ貧血かも!?

  • 頭痛がある
  • 肩こりや腰痛がある
  • ちょっとした動作で、動悸がする
  • のどがつまっている感じがする
  • 胃に不快感がある
  • 顔色が悪いといわれる
  • 全身が重く、ぐったりすることが多い
  • よく寝ても疲れが取れない、または疲れやすい
  • 気分が晴れない、またはやる気が起こらない
  • PMS(月経前症候群)や、似た症状を感じることがある
  • 健康診断で貧血を指摘されたことがない

上記の症状の1つでも当てはまれば実は隠れ貧血かもしれません。

女性は月経がつづく限り、貧血のリスクは常につきまとうもの。

「セルフチェックの項目で当てはまるものがある場合、一度クリニックで検査をお願いするのもおすすめです。
通常の貧血の検査とあわせ、フェリチンの数値もみてもらうと、隠れ貧血であるかどうかがわかると思います」と久手堅先生。

「隠れ貧血」は、対策をすればよくなる!定期検診をして、生活習慣を見直そう

写真:急須でお茶を注いでるイメージ

毎日のつらい症状が、隠れ貧血だとわかったらさっそく対策をしていきましょう。

久手堅先生によると、隠れ貧血の場合も鉄分の摂取が大切だそう。

「鉄分不足を解消する飲み薬や注射は、あまり選択肢がなく、吐き気などの副作用を伴う場合もあるので患者さんによっては使いにくい場合があるかもしれません。
やはり、日常生活で自然に鉄分不足を補える習慣をつけるのが早道です」と久手堅先生。

実際には、以下の方法がおすすめです。

「隠れ貧血」3つの対策

  1. 毎日のお茶は、南部鉄器などの鉄製のやかんで沸かしていただく
    南部鉄器などの鉄製のやかんで沸かした水には、ゆっくりと鉄分が溶け出しお茶などにして飲むだけで鉄分を補給することができるそう。
    南部鉄器の場合、ヘム鉄という体内に吸収されやすい鉄分が溶け出すため、フェリチン不足の身体にはピッタリです。
    南部鉄器のやかんは、内側が鉄製以外の素材でコーティングされていないものを選びましょう。
  2. 無理なダイエットをせず、タンパク質とビタミンCを摂る
    タンパク質は鉄分と同じくヘモグロビンの材料となる栄養素であり、ビタミンCは、体内に吸収されにくい非ヘム鉄の吸収率を上げます。
    無理なダイエットによって、これらの栄養素に偏りが生じると隠れ貧血の解消は難しくなります。
  3. 婦人科系の基礎疾患がないか、定期検診をする
    婦人科系の基礎疾患で月経量が増えた状態だと隠れ貧血はいつまでも解消されません。
    定期的に検診を受け、必要に応じて治療を行うことで隠れ貧血のリスクを予防していくことができます。

いかがでしょうか。
上記以外には、鉄分を多く含む肉類や魚を、意識して摂るのもおすすめです。

身体の怠さをひきずりながら過ごしている方は、隠れ貧血の可能性を疑ってみるのもよいと久手堅先生は話します。

「隠れ貧血は命に関わる症状ではないですが、慢性化すると重い貧血に移行したり、その結果、心臓に負担がかかることも。

逆に、隠れ貧血はしっかり対処すれば症状がなくなる可能性が高いのも事実。
検査など医療の力も借りつつ、実践しやすい生活習慣を取り入れ快適な毎日を過ごせるようしましょう!」。

監修

久手堅 司(くでけん つかさ)さん

久手堅 司(くでけん つかさ)

せたがや内科・神経内科クリニック院長。東邦大学医学部卒業後、同大学付属病院などに勤務。天候の変化によって生じる気象病に着目し、クリニックでは「気象病・天気病外来」を設置、さまざまな患者の悩みに対応している。そのほか情報番組や雑誌などで、気象病をはじめとしたコンテンツの監修なども担当。著書に「最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方」(クロスメディア・パブリッシング)、また、監修書に「面白いほどわかる自律神経の新常識」(宝島社)がある。

2021年9月7日 健康

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