免疫力アップ企画 第4回「毎日笑って健康に!『笑い』と免疫力アップの関係」

監修:大平 哲也(おおひら てつや)
ライター:UP LIFE編集部
2021年9月30日
健康

これまでの記事では、免疫について、和漢診療学の観点からお話ししてきました。

免疫企画の最終回では、「免疫と笑い」の関係に迫ります。

笑うと、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化し、癌予防や痛みの緩和につながるといわれていますが本当なのでしょうか?

調べてみると笑いは、癌だけでなく呼吸器や血圧、認知機能など人の健康に幅広く影響を与えるようです。

今回は、そんな「笑い」の効果を研究する福島県立医科大学の大平 哲也先生にお話しをお聞きしました!

笑うと免疫力がアップする!笑顔が与える効果とは

写真:女性2人と男性1人が座って談笑しているイメージ

「もともと、笑いと免疫力を直結させて考えていたわけではありません。
でも、笑っている人のほうが健康的に見えたり、長寿の秘訣を、よく笑うことだとお話しされる方もいますよね。
また、癌患者さんの痛みも笑うことで和らぐ場合があり、笑いと健康には、何かしら関係があるはずだと思っていました」と話す大平先生。

笑いのような抽象的な行為が、人の寿命を伸ばしたり、痛みを緩和させるなんてなんだか不思議な気がしますよね。

でも、ストレスのような精神的なダメージが免疫力を下げるのも事実。
笑いが人の健康に影響を与えるのも、おかしくはありません。

大平先生によると、癌患者の方に漫才やお笑いのコントを見てもらい免疫力の変化を検証した研究や、参加者を無作為に2つのグループに分けて笑わせたグループとそうでないグループで比較した研究では、笑う機会の多かった人やグループのほうが免疫力がよりアップしたそうです。

海外に目を向けると、米ハーバード大学の付属医療機関であるダナ・ファーバー癌研究所では、“Humor”というコーナーがあり、笑いと癌の関係を説明したコンテンツも提供しているそう。

しかし、なぜ笑うと免疫力が上がるのでしょうか?

笑いが身体に与える3つのメリット

笑うことで癌細胞を攻撃するNK細胞が活性化する話は有名ですが、大平先生によると、そのほかにも笑いが身体へ与えるメリットはあるようです。

その1つめは、運動効果。15分笑った場合の消費カロリーは20〜40kcalほどで、これは、公園を同じ時間散歩したのと同等の運動量です。

2つめは、ストレス解消。笑うと自然に腹式呼吸になるので、身体をリラックスさせ、脳をリセットすることができます。

3つめは笑うことで、人が集まるようになり、ソーシャルサポートを受けられる機会が増えるのだそう。

また、笑いと寿命の関係を調べた興味深い研究も。

「メジャーリーガーのプロマイドで、歯を見せて笑っているプレイヤーと、そうでない人の平均寿命を比較すると、笑って写っている人のほうが7歳も平均寿命が長かったんです。

さらに、山形県内の検診に来た人を対象に行なった調査では、週1回以上声を上げて笑った人と、1ヶ月以上笑っていないという人では、5年間の死亡率に、約2倍の差ができました」と大平先生。

そのほか、笑いがもたらす効果とは

そのほかに、よく笑う人のほうが、糖尿病の発症率が低く、血圧も安定していたり、よく笑う人はそうでない人に比べ、3年後の要介護率が3倍も低かったそう。

さらに、笑いは理解力に直結することから、認知機能とも関係があります。
認知機能が低下すると笑いが減り、さらに認知機能が下がるという悪循環にはまる場合も。

また、笑いでのどの筋肉を使うことで、唾液の分泌量を保て、歯の本数も維持することができるそう。

笑いが、将来の病気や介護の可能性と深く結びついていることが、わかるかと思います。

こんな人は要注意!“笑い不足”チェック!

写真:中年男性が考え込んでるように顎に手をそえているイメージ

驚くべき「免疫力と笑い」の関係と健康への影響ですが、生真面目な日本人の場合は、他の民族と比べて、笑う機会自体が少ないということもありそうです。

大平先生に聞くと、笑いの頻度を日米で比較すると、日本人女性は、米国人の男女と同じぐらい笑うそう。

対して、日本人男性はそれに比べ笑う機会が少なく、特に40〜50代以降はよりその傾向が顕著になるそう。
なんとなくわかる気がしますよね。

そもそも笑いは、どのようなシーンで起こるものなのでしょうか?

大平先生曰く、一番笑う機会が増えるのは、家族や友人と話すときで、2番目がテレビや映画などを見ているとき、最後が子や孫と接するときだと言います。

“人と接する機会の有無”が、笑いの頻度に大きく関わっていると言えます。

以下に、“笑い不足”の方にありがちな項目を挙げました。
多く当てはまる方は、笑いの頻度が少なく、健康にも影響があるかもしれません…!

【笑い不足チェック】あなたはいくつ当てはまる?

  • 男性である
  • 未婚あるいは、ひとり暮らし
  • 仕事や日常で、人と接する機会が少ない
  • ふだんから、不満が多く、怒りをためている
  • 運動習慣がない
  • 緑黄色野菜を食べる機会が少ない(メンタルを整えるビタミンB2や葉酸の摂取が少ない)

人との関わりが少なく、ストレスを発散できていなかったり、運動習慣や栄養管理ができていないと、笑う機会も少なくなってしまうのかもしれません。

笑って実践!「笑いヨガ」で免疫力をアップ!

写真:11人の成人男女が笑顔で笑っているイメージ

それでは、笑い不足に当てはまった人や、ふだんからもっと笑って免疫力をアップしたい!という方はどうしたらよいのでしょうか?

大平先生は、良い笑いのポイントを3つに絞り、教えてくれました。

「1つめは、人と話す機会をつくること。よく笑う友人であれば尚良いですね。
難しい場合は、人が笑っている声を聞くだけでもOK。
演芸場などで観客の笑い声を聞くのもおすすめです。

2つめは、笑いのテッパンを知っておくこと。
赤ちゃんや動物は、人が自然と笑顔になるテッパンネタなので、それらの動画を見るだけでも違うはず。

3つめは、「笑いヨガ」を取り入れること!
笑いヨガは、もともとインド人医師によって開発されました。
おもしろいことがなくても、笑いヨガをするとおもわず笑ってしまうというちょっと不思議なヨガです」と大平先生。

ここでは免疫力を上げる、とっておきの笑いヨガを伝授しましょう。

今日から取り入れたい!簡単&おもしろ「笑いヨガ」のやり方

【その1:朝、目覚めたら「アロハ笑い」でひと笑い】
アロハ笑いは、有酸素運動とストレッチの2つの効果が得られます。
息をとめずに、しっかり呼吸しながら行うのがおすすめ!

アロハ笑い、1.足は肩幅にひらき、片足を半歩前に出す、2.両手を真上に上げ、前に出した足に向かって、「アーーーー」と言いながら、お辞儀をするように前傾姿勢になる、3.「ローーーー」と言いながら、上体を起こして伸びをする、4.「ハハハハハハハ!」と言いながら、上体を下ろす
  1. 足は肩幅にひらき、片足を半歩前に出す
  2. 両手を真上に上げ、前に出した足に向かって、「アーーーー」と言いながら、お辞儀をするように前傾姿勢になる
  3. 「ローーーー」と言いながら、上体を起こして伸びをする
  4. 「ハハハハハハハ!」と言いながら、上体を下ろす

【その2:日中は「ミルクセーキ笑い」で気分転換】
肩こりや緊張を解き、仕事などのストレスを発散してくれます。
昼におすすめのヨガ!

ミルクセーキ笑い、1.片手にミルク、もう片方にシロップを持つイメージをする、2.「イエーイ!」と言い、腕全体で大きな弧を描きながらシロップをミルクに入れるイメージで動かす、3.「イエーイ!」と言いながら、今度はミルクをシロップに入れるイメージで腕をまわし、2と3を数回繰り返す、4.最後にできたミルクセーキを「ハハハハハハハハ!」と言いながら飲む動作をする
  1. 片手にミルク、もう片方にシロップを持つイメージをする
  2. 「イエーイ!」と言い、腕全体で大きな弧を描きながらシロップをミルクに入れるイメージで動かす
  3. 「イエーイ!」と言いながら、今度はミルクをシロップに入れるイメージで腕をまわし、2と3を数回繰り返す
  4. 最後にできたミルクセーキを「ハハハハハハハハ!」と言いながら飲む動作をする

【その3:就寝前は「ストレスのゴミ箱笑い」でひと息】
疲れをとり、ストレスや不安をリセットする1日の締めくくりにおすすめ。
声、動きともに控えめに、吐く息を意識して行いましょう!

ストレスのゴミ箱笑い、1.腕の中にゴミ袋を抱えるイメージをする、2.腕の中のゴミ袋の中に、日中にあった嫌なことを言うイメージで息を吐く、3.2を何度か繰り返したら、ゴミ袋の頭をしばって足で蹴り上げる、4.「ハハハハハハ!」と言いながら、空中に蹴り上げたゴミ袋を指先から出る“笑いビーム”で退治する
  1. 腕の中にゴミ袋を抱えるイメージをする
  2. 腕の中のゴミ袋の中に、日中にあった嫌なことを言うイメージで息を吐く
  3. 2を何度か繰り返したら、ゴミ袋の頭をしばって足で蹴り上げる
  4. 「ハハハハハハ!」と言いながら、空中に蹴り上げたゴミ袋を指先から出る“笑いビーム”で退治する

いかがでしょうか?
実際に挑戦してみると、おもしろくなくとも、自然と笑いが起こってしまう楽しいヨガです。
ぜひ実践してみてください!

大平先生は、マスク着用が常識となったコロナ禍では、余計に笑いを意識しにくいといいます。
笑うときに使われる大頬骨筋は、使われないとどんどん退化してしまうそう。

「大頬骨筋が使われないと、いざというときにぎこちない笑いしかできず、なおさら笑いにくくなります。

どんなときも大切にしてほしいのが笑顔。
笑顔になることでストレス解消にもつながりますし、笑顔でいれば、人から話しかけられる機会も増えて、笑いも増すはず。

笑いで免疫力を高め、健康の良いサイクルを生み出していきましょう!」。

監修

大平 哲也(おおひら てつや)さん

大平 哲也(おおひら てつや)

医学博士。福島県立医科大学医学部を卒業後、米ミネソタ大学 疫学・社会健康医学部門の研究員や、大阪大学大学院公衆衛生学の准教授を経て、2013年に、母校医学部疫学講座の教授に。内科や心療内科の臨床経験から、笑いが身体におよぼす影響を研究中。笑いと呼吸法、ストレッチなどを組み合わせた「笑いヨガ」の啓発に取り組むかたわら、NHK総合「あさイチ」や、テレビ朝日「モーニングバード」等、メディアでも活躍中。著書に「感情を“毒”にしないコツ」(青春出版)も。

2021年9月30日 健康

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