座りっぱなしは、余命を縮める?!太ももへの刺激が、健康リスクを減らすワケ
監修:岡 浩一朗(おか こういちろう)
ライター:UP LIFE編集部
2022年3月25日
健康
在宅勤務が定着し、1日の大半をデスクで過ごす方も多いはず。
今回は、座りっぱなしが引き起こす心身の影響について、早稲田大学の岡 浩一朗先生にお聞きしました!
余命が縮む!?座りっぱなしが引き起こす病気のリスク
「座りっぱなしがつづくと、寿命が短くなるというデータがあるんです」と話す岡先生。
世界的にみても長時間労働をしている日本人には、危惧すべき話かもしれません!
実際には、長時間労働だけが座り時間を多くする要素ではないものの、一般的な日本人のライフスタイルは座っているシーンが非常に多いと考えられます。
加えて、日本の文化背景として、立っていること自体にどこかネガティブな印象もあるような気がします。
体育の時間も体育座りをする習慣は、きちんとした印象を与えますが、健康という視点で考えるとどうでしょうか。
「足には全身の7割におよぶ筋肉が集中しています。これらの筋肉は、30分動かないだけでも血流が滞り、代謝を下げていきます。その結果、糖や脂肪の分解がうまくいかなくなり、血圧や血糖値に影響を与え、のちに生活習慣病などリスクの高い病気を誘引する可能性があります」と岡先生。
約22分!余命を縮める“座りっぱなし”
実際に行われた研究※1では、座りっぱなしが、がんやそれ以外の病気による死亡リスクを急激に高めることがわかりました。
「1日8時間以上、座り続けている人は特に要注意です。また、テレビの視聴と座りっぱなしの関係も大きく、オーストラリアの調査※2では、テレビ視聴のために1時間座り続けると、平均余命が22分短くなるという結果を報告しています」。
さらに座りっぱなしによって、仕事の効率や認知機能の低下を引き起こす場合もあるそう。
在宅勤務がすすんだ昨今は、私たちのライフスタイルも一変しました。かつては通勤が運動にもなっていましたが、今はそれもなし。
前代未聞の足の運動不足が起きているといっても過言ではないかもしれません…!
※1 van der Ploeg HP, Chey T, Korda RJ, Banks E, Bauman A. Sitting time and all-cause mortality risk in 222 497 Australian adults. Arch Intern Med, 2012; 172: 494-500.
※2 Veerman JL, Healy GN, Cobiac LJ, Vos T, Winkler EAH, Owen N, David W Dunstan DW. Television viewing time and reduced life expectancy: a life table analysis. Br J Sports Med, 2012; 46: 927-930.
どのくらい長く座ってる?“座り度”チェック!
では、私たちは現在、どのくらいの時間を座りっぱなしで過ごしているのでしょうか?岡先生の監修のもと、座りっぱなしの度合いをチェックするリストをつくってみました。
さっそく確認してみましょう!
あなたは動けてる!?座りっぱなしリスクチェックリスト
- テレビの視聴時間が長い(1日に3時間以上)
- 移動手段は車がメインだ
- 電車やバスに乗るときは、一目散に空席に座ってしまう
- 毎日、7時間以上のデスクワークをしている
- PCやスマートフォンにさわっている時間が長い
- 身体を動かさない趣味や、友人とのおしゃべりで長い時間を過ごすことがある
上記に複数チェックが入る場合は、“座りっぱなし”度が高く、後々健康に与えるリスクも上がるかもしれません…。
「座っているという行為は、サイレントな状況なんです。座っていてもどこかが痛くなったり、疲労でどうにかなってしまうなんてことはないですよね。でも夕方に感じるあのグッタリ感は、まぎれもなく座りっぱなしから導かれたもの。日々の疲れだけではなく、健康習慣としても今後は座りっぱなしにメスを入れていくべきだと思います」と岡先生。
太ももやふくらはぎへの刺激で、座りっぱなし対策を
座りっぱなしを解消し、足から健康を保つためには、どうすればよいのでしょうか?足のケアというと第2の心臓ともいわれるふくらはぎを刺激して血流を改善させる方法もよく聞きます。
「ふくらはぎはたしかに重要。ですが、太ももに人の身体で最も大きな筋肉があることも忘れてはいけません。太ももの大腿四頭筋を刺激するのも大切です」と岡先生。
具体的には、スクワットがおすすめだそう。スクワットというとキツいイメージがありますが、以下のような軽めのものでよいとのこと。
座りっぱなし対策に!すぐにできる楽ちんスクワット
① 足を肩幅ぐらいに開き、まっすぐ立つ。バランスのとりにくい人は椅子やデスクなどの端をつかむ。
② そのまま座るようにゆっくりと腰をおろす。無理せずおろせるところまででOK。このとき、膝がつま先よりも前に出ないよう注意する。
足全体の血流改善は、負荷の小さい運動をこまめに行うと効果的
上記のスクワット以外に、足全体の血流改善には、足踏みやかかと上げもよいそう。
「強い強度の運動を行うことも大切ですが、こまめに負荷の小さい運動を行うこともかなり効果が大きいことが知られています。30分に一度、3分程度の軽めのスクワットとか、同じぐらいの足踏みを行うでも良し。要は座りっぱなしを定期的に制御するのが大事なんです」。
そんな軽めの運動さえもできない日もあります。何もできなかった…(涙)という日は、どうしようもないのでしょうか?
「運動ほどの効果はのぞめませんが、筋肉への刺激という意味ではマッサージも1つの手です。大腿四頭筋のある太ももまで刺激できれば尚良いですね。疲れがひどい日もありますから、何もせず放っておくよりも、そういう日はマッサージに切り替えてもよいかもしれません」。
足に意識を向けるタイミングは、決めておくのがおすすめ
運動を行う機会も、ワークスタイルと組み合わせて考えるのがうまくいくコツだそう。たとえば、“ポモドーモテクニック”を取り入れるのもおすすめ。25分間集中して、5分程度の休憩をはさみ、また25分集中といったプロセスを数回繰り返したら、少し長め(15~30分)の休憩を取る時間管理術です。短い休憩をはさむことで集中力が増すだけでなく、休憩時間には軽い運動を挟み込むことができます。
「仕事やテレビなどの視聴で座りっぱなしを防ぐには、立ち上がりの機会づくりが何よりも大切。そのためには、足に意識を向けるタイミングをしっかり決めておくとよいかもしれません。集中と休憩を繰り返すなど生活に緩急をつけることは、仕事や家事の精度をあげることにつながりますし、それができなかったとしても救済措置としてマッサージをするという1日の終え方もあります。方法を決め、自分に合うようカスタマイズしていくことで、足からも健康に近づけるはずです!」
監修
岡 浩一朗(おか こういちろう)
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。博士(人間科学)。早稲田大学大学院を修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都健康長寿医療センター研究所介護予防緊急対策室主任を経て、現職。ベイカー心臓病・糖尿病研究所のネヴィル・オーウェン教授とともに、座りっぱなしの悪影響とその対策について共同研究中。著書に「長生きしたければ座りすぎをやめなさい」(ダイヤモンド社)、「『座りすぎ』が寿命を縮める」(大修館書店)など。
2022年3月25日 健康
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