骨盤底筋を鍛えよう!産後の尿もれや腰痛の対策になる骨盤底筋トレーニング
監修:山崎 愛美(やまさき かなみ)
ライター:UP LIFE編集部
2022年5月26日
健康
産後に多い尿もれや、腰痛など、女性の不調と関係深いと考えられる「骨盤底筋」。
今回は、骨盤底筋のケアについて理学療法士の山崎 愛美先生にお話しを聞きました!
腰痛や尿もれ、体型の崩れまで。幅広い症状と関係がある「骨盤底筋」
最近よく耳にする「骨盤底筋」という言葉。名前は聞いたことあるけれど、どこにあって、いったい何に関係するのかわからないという方も多いはず。
「骨盤底筋は、字の通り骨盤の底に位置する筋肉の集まりのこと。尿道や膣、肛門を囲む複数の筋肉の総称で、骨盤底筋群と呼ぶこともあります」と話す山崎先生。
骨盤底筋群は、身体の中の筋肉なので、直接触ることはできません。また、身体の表面に近い骨盤底筋群の一部をのぞいて、知覚することや、動かすことに慣れが必要な筋肉といえます。
これらの骨盤底筋群のゆるみが、腰痛や尿もれなどの症状につながるそう。
「骨盤底筋群は妊娠や出産で引き伸ばされ、線維が傷つくことも。すると、筋肉の収縮がスムーズにできなくなり、どんどんゆるんでいくのです」と山崎先生。
また、便秘でいきむ癖がついている人も注意が必要。さらには、筋肉が硬くなる場合も要注意。筋肉は痛みが強いときに硬くなる性質があり、分娩時の裂傷や会陰切開、骨盤周りの痛みで筋肉に硬さが増し、結果的に骨盤底筋の働きの低下につながるのです。
骨盤底筋のゆるみが、不調を引き起こす
そんな骨盤底筋ですが、さまざまな不調との関係性も示唆されています。骨盤底筋のゆるみと不調には、どのような関係があるのでしょうか?
「尿もれや腰痛、臓器下垂や、ぽっこりお腹、体型の崩れなどと骨盤底筋は、医学的に関連性があるといわれています。尿もれは骨盤底筋群がゆるんで、尿道をしめる力が弱くなることで引き起こされますし、腰痛はゆるみによって骨盤にかかる圧力が不均衡になり、関節にゆるみやズレが生じることで起こります」と山崎先生。
臓器下垂は、骨盤の中におさまっている膀胱や子宮などが膣口から出てきてしまう症状。こちらもやはり、臓器の支えにもなる尿道や膣を締める力が弱まることで起こります。体型の崩れは、骨盤底筋群のゆるみが骨盤底筋とつながりがあるお腹の筋肉にも影響し、いわゆる「下腹ぽっこり」に至るそう。
これらの症状を改善する方法はないのでしょうか?
低い負荷で続けるのがコツ!産後ケアにもおすすめ「骨盤底筋トレーニング」
山崎先生いわく、骨盤底筋群のゆるみには、ずばり体操がおすすめだそう。呼吸とともに行う「骨盤底筋トレーニング」を、生活のサイクルに取り込むことで、尿もれや腰痛も徐々に改善されていくそうです。
さっそく、骨盤底筋体操の方法を見ていきましょう!
なんども反復!寝ながらできる!簡単・骨盤底筋トレーニング
- ベッドや床に仰向けに横になり、膝を立てる。
- 両手はへその下に置く。
- 息を吐きながら、尿やおならを我慢するイメージで骨盤底筋をキュッと締める。このときに下腹部が膨らまないように注意する。
- 息を吐き終わったら、反動で勝手に息を吸いこむ動作にともない、自然と骨盤底筋がゆるむ。
これを5回1セットで、まずは1日2セットから。忘れないよう、寝る前や朝起きた直後に行うのがおすすめです。
「骨盤底筋体操は、低い負荷で頻回に、持続的に行うことで骨盤底筋群にスイッチを入れることができます。知覚しにくいのでコツをつかむまでは大変ですが、続けることで感覚がつかめてくるはず」と山崎先生。
体操のほか、トイレの際の姿勢を改善するのがおすすめ。
理想的なトイレの姿勢は「考える人」
便器に座る際にふつうに腰掛けると、直腸が曲がり便が通りにくくなる。
考える人の姿勢で座れば、直腸の角度がまっすぐになり、便が出やすくなる。
トイレの姿勢は、前傾姿勢の「考える人」スタイルに。足の下にわずかな高さの台を起き、前傾になることで、腸と肛門がまっすぐになり、便が出やすくなります。トイレで5分以上いきみ続けると、骨盤底筋に負荷をかけて機能低下させることもあるため、考える人スタイルでスルリと出す習慣をつけましょう。
フェムテックって知ってる?女性の健康をサポートする技術も参考に!
「骨盤底筋は外から見ることができませんし、感覚もつかみにくい筋肉です。上記の骨盤底筋体操をつづけても、変化がわかりにくいため、モチベーションを維持するのが大変かもしれません。そんなときには、フェムテック商品を使用するのもおすすめです」と山崎先生。
フェムテックには、骨盤底筋トレーニングを座ったままできる商品も!
フェムテックとは、Female×Technologyのことで、女性の健康にテクノロジーを介してアプローチするサービスやプロダクトを指します。月経の管理・予測アプリなどはフェムテックサービスの1つといえるでしょう。骨盤底筋の改善を目的としたプロダクトには、機器の上に座るだけでトレーニングができるものも。
「フェムテック商品によっては、スマートフォンと連動させ、骨盤底筋の収縮や弛緩の様子を確認することもできます。クリニックではエコーを使って骨盤底筋のトレーニングを行うこともあるんですよ。家庭での体操も、フェムテック商品を使うことで、より筋肉に意識を集中することができかもしれません」。
継続が必要なトレーニングだからこそ、便利なツールをうまく取り入れていくのが良さそうです。
「骨盤底筋体操は、続けていけば、感覚がつかめる時がくるはず。2ヶ月ぐらいで尿もれや腰痛の改善を感じる方が多いですよ。取り組めばきっと身体は応えてくれるので、あきらめないでトライしてみてください!」。
監修
山崎 愛美(やまさき かなみ)
理学療法士。産後リハビリテーション研究会代表。海外で行われている産前産後の母親に対するリハビリテーションに感銘を受け、医療職に向けた産前産後の母体へのリハビリを提案する「産後リハビリテーション研究会」を立ち上げる。川崎市を拠点とする「Woman’s Body Labo」も主宰。助産雑誌「ウィメンズ運動療法」(医歯薬出版)の執筆や、「たまごクラブ」(ベネッセコーポレーション)の監修も。
2022年5月26日 健康
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