今年こそ、夏バテに負けない!「東洋医学×食事」で考える夏バテの原因と対策
監修:樫出 恒代(かしで ひさよ)
ライター:UP LIFE編集部
2022年7月27日
健康
食欲がなくなり、だるさが増す「夏バテ」。東洋医学で考えると、夏バテは1年の疲れが影響しているそう。
夏を乗り切るための方法を、漢方薬剤師の樫出 恒代先生にお聞きしました!
夏バテはなぜ起こる?東洋医学で考える夏バテとは
気温が上がり、空気が湿気を帯びる季節の到来。
食欲が落ち、気だるさが身体を覆う「夏バテ」の季節でもありますが、東洋医学の視点からみると、意外な発見がありました。
「東洋医学で夏バテは、1年を通した身体の巡り(めぐり)に関係した症状と考えられています。春や、さらには冬からの疲れが原因の場合も」と樫出先生は話します。
東洋医学でよく聞く、身体の“巡り”や“疲れ”とは、いったい何なのでしょうか
東洋医学では、1年を通した身体の状態を考える
身体は本来、春夏秋冬、4つの季節に自然と適応するようにできているそう。
「夏は汗をかき、ストレスも発散できる一番のデトックス季節。夏にデトックスできれば、秋には栄養補給に適した身体がつくられ、冬にはその栄養分を温存できるようになります。冬に保った栄養で、春のスタートにエネルギーを放出するというのが理想的な身体の状態ですが、その循環のどこかが欠けると“夏バテ”として症状に出てくるんです」と樫出先生。
つまり、夏バテの対策は春から。夏バテしやすい方などは、冬の段階から取り組むのがおすすめなのです。
でも不調に気づいた時点から、改善していく方法もあるそう。
東洋医学の、“巡り”や“疲れ”の意味
ちなみに、東洋医学でいう“巡り”とは、生命エネルギーである「氣」※1と、栄養としてとらえる「血」、リンパ液などの「水」の3つが、互いに充分に補われ循環する様をあらわします。これらの氣―血―水の調和が乱れると、巡りが悪くなり、“疲れ”となって身体に表れるそう。生理的な疲れや体調不良はもちろん、巡りの悪さによってメンタル面にも影響があり休息を必要とする状態が、東洋医学的な“疲れ”といえます。
※1 「氣」という字は、部首が天の気(エネルギー)を、米が地の気を表しており、天と地の気の間に人がいるという状態を表している。氣が足りない時には、天の気である呼吸法を取り入れ、地の気が集約された旬の食物をいただくことで、身体中に氣をまわしていくことができると考えられている。
食欲不振にも理由がある
また、夏バテの症状というと、真っ先に食欲不振を思い浮かべる方が多いと思いますが、東洋医学的にはこれも当然のよう。
「胃腸はお腹の中心で、“氣”をつくって巡らせていく場所。氣が減ったり、氣の流れが乱れると胃腸に不調があらわれ、栄養分がうまく吸収できなくなります。胃腸が整ってこそ3度の食事を摂ることができますし、その食事から栄養素を吸収して氣や血としてまわしていくことができるんです」と樫出先生。
すでに夏バテの兆候があったり、巡りの悪さや疲れを感じている人は、どうしたらよいのでしょうか?
まずは以下に挙げるセルフチェックで、自分の身体の状態を確認してみましょう!
舌とお腹を確認!漢方的セルフチェックで、夏バテサインを見逃さない!
樫出先生いわく、身体の状態を知るために、一般の方々にもできるチェック方法があるそう。
「舌の状態をみる舌診と、お腹を触る腹診は、はじめてでも行いやすいはず。最後のチェック項目と一緒に確認してみましょう」。
チェック1:舌診で夏バテチェック
舌を鏡に映し、舌の表面にある舌苔(ぜったい)の状態を観察する。理想はきれいな薄ピンク色の舌で、うっすらと苔がついている状態。【A】のように白い舌苔があったり、灰色っぽい舌苔がついている場合は、身体が疲れ食欲不振に陥っている。【B】のように、舌の真ん中部分に苔が濃かったり、亀裂がある場合は、すでに胃腸が疲れているという現れ。
チェック2:腹診で胃腸チェック
仰向けに寝て、へその下を両手で軽く押す。跳ね返るような弾力がなく、マシュマロのように沈み込む感触があれば、漢方的には腎※2が弱っている証拠。体力・氣力が落ち、すでに夏バテに突入しているか、放っておくと夏バテになる可能性がある。へそ回りを軽く押して弾力がなかったり、冷えている時は胃腸の働きが落ちているサイン。
※2 東洋医学の「腎」は、成長や発育、生殖などにかかわる泌尿器、生殖器、腎臓の働きを指し、生命力のもとと考えられている。
チェック3:チェックリストで最終夏バテチェック
- 朝は食欲がわかない
- さっぱりしたものが食べたくなる
- 冷たいものが食べたい
- 食事のあと、すぐに眠くなる
- 細切れの便が出る
- 倦怠感がつづいている
- 慢性的に眠気を感じる
舌を見て、お腹をさわり、さらに最後のチェック項目で該当するものが多いほど、巡りが悪く、疲れを溜めこんでいることがわかります。結果的に、これからの季節に身体がうまく慣れず、最終的に夏バテにいたってしまう可能性があります。
それでは、夏バテの予防や、症状の軽減のためには、何をすればよいのでしょうか?
食事を見直そう!夏バテの予防と対策
夏バテの予防や改善で大切なのは、弱った胃腸をいたわることだと樫出先生は言います。
まず、氣―血―水の“水”を巡らせるために、水分が多く、さらに利尿作用もある食物をいただきましょう。
具体的には、メロンやスイカ、ゴーヤなどがおすすめ。いずれも、暑さの中でも食べやすい食材です。
また、滋養強壮作用がある豚肉、うなぎ、すっぽんなども良し。枝豆やそら豆、とうもろこしなどの豆類は、エネルギーをつくりだすだけでなく、疲れをとり、胃腸にもやさしい食材です。ビールなどは冷やし過ぎず、枝豆などをつまみに適度にいただくのもよいかもしれません。
これからの時期に食べることが多い素麺は、薬味をたっぷりに。生姜、大葉、みょうが、梅干しは食欲を促します。
巡りを滞らせるベタベタ食材とは?
逆に糖分が多い甘いものは、要注意。糖分が多く手にベタベタつく食材は、身体の中でもベタつき、巡りを滞らせてしまうそう。スイーツなどは適度にしておいたほうが良さそうです。
「個々の生活習慣や体調で、夏バテを和らげる食材は異なりますが、上記は基本なので、知っておくと役立つはず」と樫出先生。
しかし体調がすぐれない日が続くのなら、漢方薬などにたよるのも一つの選択肢だといいます。
「物理的な身体の要素だけでなく、“氣”も重要な東洋医学では、自分を大切にするという気持ちも重要。自らを振り返ることで、夏バテのような体調不良を起こしても速やかに回復できるというのが、東洋医学の考え方でもあります。ご紹介したのは、今日から使える知恵ばかり。ぜひ取り入れて、自分の身体をいたわってあげてくださいね」。
樫出 恒代(かしで ひさよ)
漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター、漢方カウンセリングルームKaon代表、Kaon漢方アカデミー代表。
漢方カウンセリング歴30年、ひとりひとりのこころとからだにていねいに向き合うことをモットーに「対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座」内の漢方カウンセリングルームKaonでカウンセリングをおこないながら、漢方アドバイザー育成のためのスクール「Kaon漢方アカデミー」を主宰。「漢方をもっと身近に。もっと自分らしく」、より多くの方に漢方の良さを伝え、元気な毎日を送ってもらうために、東京・新潟・大阪などでセミナー、メディアでの活動などを行なっている。
趣味は筋トレ、文字や絵を描くこと、わんこと遊ぶこと。
2022年7月27日 健康
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