つらい肩こりの原因は、筋肉だけでなく心も影響!整形外科医がすすめる「ほぐし&ストレッチ」で、スッキリ解消!
監修:正田 修己(しょうだ なおき)
ライター:UP LIFE編集部
2022年12月26日
健康
身体も心も重くする「肩こり」。痛みがあっても我慢を続けていませんか?つらい肩こりの解消法について、東京新宿メディカルセンターの正田 修己先生に教えてもらいました!
冬場は肩こりが増える!?肩こりの原因とは?
日本人の多くが感じている「肩こり」。もはや国民病ともいえるこの痛みは、なぜ起こるのでしょうか?
みなさんのご想像通り、肩こりの原因は、肩周りの筋肉の緊張による血行不良なのだそう。
「首や肩は、約4キロもの重さがある頭部を支えています。また、両腕の重さもありますから、そもそも疲れがたまりやすい部分でもあります。特に女性は、なで肩などで骨格的にも肩周りの筋肉への影響が大きい傾向にあります。このように物理的や精神的ストレスに晒されると交感神経が優位になり、筋肉の緊張が高まります。筋肉が緊張すると、筋肉内の血管が圧迫されて、どんどん血流が悪化してしまうのです。このメカニズムが肩こりの原因と考えられています。肩こりが長引くほど血行不良がすすんで、症状がひどくなるという悪循環にはまってしまいます」と正田先生。
冬は肩こりになりやすい!?環境の影響が大きい肩こり
寒い時期は、肩こりになりやすい印象もあります。実際はどうでしょうか?
「寒さによって身体が縮こまる時間が続くと、肩こりは起きやすくなります。縮こまることで身体が緊張状態に陥るわけですから、寒さも物理的なストレスだといえるでしょう。また、天気の崩れで肩が張る方は、気圧変化によるストレスを身体が受けているのです」。
肩こりが起こる条件は、私たちの身の回りに溢れています。それでは、心にも身体にもストレスが多い現代に、肩こりを感じない・自覚しにくい人はいるのでしょうか?
心の痛みが、身体の痛みに!?肩こりとストレス(心)の関係
正田先生によると、肩こりを感じにくい人もいるといいます。
痛みは心の状態と関係が深く、メンタルに問題があると身体の痛みとなって現れることも。したがって、ストレスが少なかったり、良い具合に肩の力を抜いて過ごせている人は、肩こりとは無縁かもしれません。
「精神的ストレスを多く感じている方は、肩こりや腰痛などの痛みを患いやすく、さらに鬱症状や神経症のある方は、肩こりなどの身体の痛みが治りにくいというデータがあります。肩こりが慢性化すると、精神の安定を欠くこともあるので、単なる肩こりといえど、甘くみてはいけないのです」。
女性の方が肩こりになりやすい?
上記の傾向には性差もあり、男性より女性のほうが心因性の肩こりを訴える方が多いそう。
前述の女性の骨格も関係ありますが、職種や実際の作業面から考えても女性は肩こりになりやすいといえます。
「肩こりのある患者さんにお話を聞くと、職場での仕事量が多い激務の方が多いです。職種では、現場業務の4割、技術職は半数、事務職においては6割の方が肩こりを感じているというデータもあります。事務職で仕事量が多いと、当然座り作業が長時間におよびますし、姿勢の崩れや長時間のコンピューター使用による疲れ、仕事のプレッシャーなどで、いつのまにか肩こりが慢性化している方は非常に多いと考えられます」。
それでは、肩こりを改善するには、どうしたらよいのでしょう?
整形外科医が伝授!圧痛点を探してほぐし&ストレッチ
肩こり改善のポイントは、ずばり「圧痛点(あっつうてん)」だと正田先生は話します。
「まず、凝っている部分から“圧痛点”を探してみましょう。触ったり軽く押すと特に痛む部分が圧痛点です。圧痛点を見つけたら、そこを中心に周辺まで揉みほぐしましょう」。
また、圧痛点を中心としたストレッチもおすすめです。
圧痛点を利用したストレッチ
コツは“イタきもちいい”範囲で伸ばすこと。無理に伸ばしすぎると筋繊維を痛めてしまう可能性があります。
- 仰向けに横になる
- 肩の圧痛点から少し離れたところに手をおく
- おいた手と反対方向に首を伸ばす・たおす(10秒ほど)
- 顔の向きを逆方向に向ける(10秒ほど)
ストレッチのほかに、マッサージツールを使用し、筋肉のこわばりにアプローチするのもおすすめです。
肩こりは温めて血流改善を!生活の中でできる肩こりの予防法
また、肩こりの予防と治療は生活の質を高めます。
「痛みがある部分をあたためると、血流が改善します。できるなら痛みがある部分だけでなく、身体全体を温める入浴をしっかり行うことも効果的です。温熱効果によって血行が良くなるだけでなく、副交感神経が優位になることで全身の緊張がほぐれ、精神的なストレスの改善も期待できます。体温よりわずかに高い40度程度の湯につかり、じっとりと汗がでるくらい浸かりましょう」
水位はみぞおちぐらいで、呼吸の負担にならないように、つかりながらミネラル分豊富な麦茶で水分補給するのも良いそう。精神的なリラックスも意識して、音楽やアロマなどを活用するのもおすすめ。
また、普段の生活でもできることがあります。
たとえば、就寝時の枕。頭の重量を後頭部だけでなく、後頭部と首全体に分散させるような形の枕を選んだり、タオルで首の後ろを支えるように工夫することで、首や肩にかかる負担を軽減できます。また仕事では、PCを使用した作業が1日3時間を超えると明らかに肩こりが多発します。少なくとも連続作業は1時間までにして長時間の同一姿勢は避ける、照明やPCディスプレイの明るさを適切(明るすぎないように)に設定する、休憩時間には少し歩いて血流改善を促したり、窓の外や遠くを見て、目と心を休ませる…などもおすすめです。
直接的に肩こりに働きかけなくとも、目や首の疲れを回避する手段は、肩こりにも有効です。
「厚生労働省の国民生活調査によると、肩こりは健康問題の中でも常に上位の悩みです。肩こりによって仕事や生活に差し支えが出ることは、大きな経済的損失でもあります。セルフケアや予防を行なっても改善しない痛みは、迷わず整形外科に相談をしましょう。クリニックでは、投薬だけでなく物理療法や理学療法などのリハビリも組み合わせて肩こりの治療を行えます。
また、心のケアも大切に。肩こり改善への道は、自分の心を見つめ直すことにもつながっているはずです。ぜひ、自分の身体と心の状態に耳を傾けてみてください」。
監修
正田 修己(しょうだ なおき)
整形外科専門医。JCHO東京新宿メディカルセンター骨粗鬆症センター長/リハビリテーション科部長。大学卒業後、東京大学医学部付属病院、ワシントン大学、国立国際医療研究センター病院などで研鑽を積み、2019年にJCHO東京新宿メディカルセンターに入職。脊椎脊髄外科部長を経て2021年から現職。
2022年12月26日 健康
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