【専門医監修!】足の血管が浮き出る「下肢静脈瘤」を予防する!手のひらマッサージ
監修:広川 雅之(ひろかわ まさゆき)
ライター:UP LIFE編集部
2023年8月2日
健康
ふと自分の後ろ姿を見たら、ふくらはぎや膝の裏の血管が目立っていた、凹凸があるなど、自分の足の変化に気づいた方はいないでしょうか?もしかしたらそれは、「下肢静脈瘤」かもしれません。今回は、下肢静脈瘤について「お茶の水血管外科クリニック」の広川 雅之先生にお聞きしました。
成人の2人に1人!?「下肢静脈瘤」とは?
足の重だるさ、むくみなどの症状が出る「下肢静脈瘤」。最近、メディアでも聞くようになった病名ですが、成人の約半分が患うとてもポピュラーな病気だと広川先生は話します。
気づかないことが多い!?下肢静脈瘤の初期症状
「下肢静脈瘤は、15歳以上の約4割、50歳以上ともなると3人に2人はみられます。夕方に足がむくんだり、夜中に足がつるなどの症状があり、女性に多い病気です」。
その他にも、足がほてったり、ピリピリと痛むなどの症状も。初期は、血管が浮き出るといった見た目の変化だけのため、気づかない人が多いといいます。
また下肢静脈瘤の場合の足のむくみは、左右差があることが多いといわれます。
弁がこわれ血液が逆流したり、筋ポンプが作用しなくなることで起こる「下肢静脈瘤」
「下肢静脈瘤は、心臓に血液を戻す静脈の弁が働かなくなることで起こります。この弁は、血液の逆流を防ぐものですが、弁が機能しなくなることで血液が逆流して血管内にたまり、静脈がボコボコと浮き出た状態になるのです」と広川先生。
血液の逆流防止弁の不具合は、遺伝的な要素が多いそうですが、調理師や美容師など長時間同じ姿勢を強いられる職業や、妊娠、運動不足、肥満などが原因になることも。
また、足にたまった血液を心臓にもどすためには、逆流防止弁の働きだけでなく、ふくらはぎの筋ポンプ作用も重要だそう。
「ふくらはぎにあるヒラメ筋は、足を動かすと収縮して静脈を圧迫します。その圧力で心臓に血液が戻るのですが、この筋ポンプ作用が運動不足や加齢でうまく機能しない場合があります。また、女性は男性に比べ筋肉が少ないので、もともと筋ポンプ作用が弱い傾向があります」。
誰でも発症する可能性がある下肢静脈瘤。心あたりのある方は次のセルフチェックシートで確認してみましょう。
もしかしたら「下肢静脈瘤」かも?専門医監修・チェックシート
下肢静脈瘤かもしれない…、と思っても、慌てるべからず。まずは次のチェックシートで自分の状態をチェックしてみましょう。
今すぐチェック!下肢静脈瘤チェックシート
- 足の血管が浮いている・目立つ
- 夜間就寝中に足がつる
- 夕方に足がむくむ
- 夕方に足が重だるい
- 足のむくみは、左右で異なる
- 足に湿疹がある
上記に当てはまる項目が多いほど、下肢静脈瘤の可能性が高いそう。
広川先生は、下肢静脈瘤は命にかかわらない病気で、治療法にもさまざまな選択肢があると話します。
「下肢静脈瘤は、生死に関わる病気ではありません。また、放っておいても歩けなくなることや、後遺症が残るといった心配もありません。具体的な症状を感じていなかったり、血管の凹凸が気にならないのであれば、急いで治療をする必要がない病気でもあります。しかし、見た目が気になったり、足のむくみやだるさ、湿疹や褐色の色素沈着などがある場合は、受診をおすすめします」。
自然に治ることはない下肢静脈瘤。日々のセルフケアで予防や改善を
ただ、下肢静脈瘤は、自然に治るということはないそう。こわれた弁が時間の経過とともに治るということもなければ、浮き出た血管が元に戻ることはありません。
一方で、適切な治療や、日々のセルフケアや生活習慣の改善で、進行を防いだり、むくみなどの症状を和らげることはできるといいます。
日常生活でできるケアには、どのようなものがあるのでしょうか?
「下肢静脈瘤」を予防しよう!おうちでできるセルフケア
下肢静脈瘤によるむくみがつらい場合は、手のひらで行うマッサージがおすすめです。
マッサージは、足全体をやさしくさすり上げるイメージで行いましょう!
手のひらで足全体をさすり上げる!下肢静脈瘤のむくみ改善・簡単マッサージ
- 床に座った状態、あるいは椅子に座った状態から、両方の手のひらで膝上を包み、しっかり密着させながら上へとさすり上げる。
- 1を足の付け根まで行ったら両手を離し、再度膝上から足の付け根までさすり上げる。これを1分ほど繰り返す。
- 次は足首から膝下までを両方の手のひらで包み、さすり上げていく。膝下まできたら、手を離し再度足首からさすり上げる。同じくこれを1分ほど繰り返す。1〜3を両足ともに行う。
ポイントは、強く圧迫しすぎないこと。オイルやクリームをつかって、手のひらを滑らすようにしてさすり上げましょう。また、上へ、上へとさすり上げるイメージで、上から下に行わないよう注意しましょう。
「下肢静脈瘤は、足の表面にある静脈に血液が溜まる病気です。さする程度で血流が促進しますし、リンパも流れ、むくみは改善します。力を入れすぎても意味はありません。マッサージのタイミングは、昼休憩に一度、あとは就寝前に一度行うのがおすすめ。毎日行うのが理想ですが、疲れている日は、足全体を包むようなマッサージ機を使うのもよいでしょう」。
弾性ストッキングや適度な運動、入浴もおすすめ
また生活習慣として、弾性ストッキングや着圧ソックスの着用や、水泳やウォーキングなどの運動、休憩や就寝時に足を高くして休むのもおすすめです。入浴は身体をあたため血液の循環をよくしてくれますし、水圧もかかるので就寝前のマッサージ前にお風呂に入って、ゆっくりマッサージをするのもよいでしょう。
「繰り返しますが、下肢静脈瘤の治療は慌てる必要はありません。しかし、少しでも気になったり、不安がある場合は医療機関の受診をおすすめします。やはり、生活の質を保つことが大切ですから、まずはみなさんの気持ちに寄り添い、親身になってくれる医師や医療機関に相談してみましょう」。
監修
広川 雅之(ひろかわ まさゆき)
医学博士。お茶の水血管外科クリニック院長。高知医科大学卒業後、同大学第二外科入局。その後、ジョンズホプキンス大学医学部留学を経て、東京医科歯科大学血管外科助手、同大学血管外科講師を歴任。2005年にはお茶の水血血管外科クリニックを開院。日帰りストリッピング手術や、血管内レーザー治療をはじめとした下肢静脈瘤の最新の治療法を開発した下肢静脈瘤のパイオニア。著書に「下肢静脈瘤は自分で治せる」(マキノ出版)、「下肢静脈瘤 最新の日帰り治療できれいな足を取り戻す」(講談社)などがある。
2023年8月2日 健康
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