東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究所 教授  荒川 真一先生 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究所 教授  荒川 真一先生

歯と体の意外な関係

歯を生涯健康に保つ方法

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究所 教授
荒川 真一先生

歯と全身の健康には密接な関係があります。 歯を健康に保つための知識と方法について東京医科歯科大学の荒川先生にお話を伺いました。

歯と体の健康との関係について教えてください。

歯は、全身の健康を支えるという、非常に重要な働きを持っています。
歯が減ってしまうと、生きるうえでの大きな楽しみの一つである「食べる」ということがままならなくなり、Quality of Life(生活の質)が低下してしまいます。また、歯を失うと、ご高齢の方は認知症にかかりやすくなってしまうという研究の報告もあり、食べること以外でも、歯が全身の健康に関わってくることがわかっています。 二大口腔疾患としてむし歯と歯周病がありますが、とくに歯周病は、さまざまな全身病と関係があるということがわかってきました。例えば、さきほど述べた認知症もそうですし、糖尿病、心臓血管疾患、低体重児出産なども、歯周病と関連性があると言われています。

歯周病との関連性があると言われている病気

認知症

認知症

糖尿病

糖尿病

心臓血管疾患

心臓血管疾患

低体重児出産

低体重児出産

歯周病と糖尿病の関係について言えば、「糖尿病があると歯周病が悪くなる。歯周病があると糖尿病になりやすくなる、または糖尿病が悪化する」という相互関係があると言われています。 これはどういうことかと言うと、歯周病の病原菌が腫れた歯肉から血管の中に入ってしまい、病原菌の出す毒素(エンドトキシン)が糖尿病を引き起こす、ということなんです。

 

口腔内を健やかに保ち、自分の歯を生涯にわたって保つことは、全身の健康を得る上でも非常に重要なのです。 

歯の健康を保つためには、どのようなことが大切でしょうか?

歯科医師または歯科衛生士が行うプロフェッショナルケアと、家庭でのセルフケア。両方のケアが必要です。
一番重要なのは毎日のセルフケアですが、ご家庭ではどうしてもケアしきれない部分があります。
そこで、定期的に歯科医師または歯科衛生士のチェックを受けることが大切になります。

セルフケアのポイントを教えてください。

日本では、ほとんどの人が1日に2回以上歯磨きをしています。
しかし、40歳以降では約80%以上の方が歯周病にかかってしまうと言われています。
これはなぜかと言うと、ブラッシングをしていても磨き残しがある、別な言葉で表現すれば、「つもり磨き」が原因です。
ついつい「歯ブラシ1本で口の中すべてをケアしよう」と考えがちですが、歯ブラシできれいにできるのは、歯の表(外側)と裏(内側)の部分だけなのです。一番重要な歯と歯の間や、一番奥の歯の奥の面は磨けません。 歯ブラシ1本で磨き残しなくケアすることは、非常に困難なのです。

歯ブラシだけでは磨きにくい部分

歯と歯の間

歯と歯の間

奥歯の奥の面

奥歯の奥の面

歯と歯ぐきの間

歯と歯ぐきの間

したがって、歯ブラシのみに頼るのではなく、部位に合わせた補助道具を使って、「歯ブラシ+αのケア」を取り入れることが推奨されます。

歯ブラシ+αのケアの例

水流洗浄

水流洗浄

タフトブラシ

タフトブラシ

歯間ブラシ

歯間ブラシ

デンタルフロス

デンタルフロス

とくに注意が必要なのは、どんな人でしょうか?

歯ぐきの下がりが気になる方や、歯ぐきに腫れがある方は、注意が必要です。
歯ぐきの下がりを気にされている方は、歯と歯の隙間も大きくなっており、そこに物が詰まりやすく、ばい菌が増えやすいといった状況にあります。
歯周病の治療を終えた方も、良い状態を持続するために、ていねいなケアをすることが重要です。
また、年齢を重ねると唾液量が減少し口腔内の自浄作用が落ちてきますので、年配の方も注意が必要です。
歯並びの悪い方も、歯ブラシ+αの道具を使ってケアをすることが大切だと思います。

ブラッシング後に水流洗浄でのケアをプラスすると、どんな効果がありますか?

ブラッシング後に水流洗浄を行うことは、口腔内を健康に保つ上で、非常に効果があると思います。
例えば、「歯と歯の間」や「歯と歯ぐきの間」など、歯ブラシが届きにくい部分の汚れを、強力な水流で洗い流すことができます。これは特に、歯並びの悪い方や歯科矯正治療中の方には、有力な武器になります。
水流洗浄は、歯ブラシ+αのケアとして非常に有用だと考えています。

水流洗浄でのケアは、どのくらいの頻度で行えば良いでしょうか?

歯磨き同様に、毎日行っていただくことが望ましいと思います。夜の歯磨き後に、+αのケアとして取り入れていただくと良いでしょう。我々が行った水流洗浄の臨床試験でも、1日1回の使用を2週間続けることで、歯ぐきの健康を推進できたという結果を得られています。 継続して、無理のない範囲で使用することをおすすめします。