『THE WATCH』インタビュー&メイキング映像

『THE WATCH』インタビュー&メイキング映像 『THE WATCH』インタビュー&メイキング映像

LUMIX S5ⅡXが導く『Flow State Project』

映像作品『THE WATCH』メイキング映像

新しいLUMIX S5ⅡXは、「Flow State(フロー状態)」を捉え、真の創造力を発揮する手助けをしてくれるカメラだ。「Flow State」とは、人が完全に目の前の作業に集中している時に、時間や周囲のあらゆるものを忘れ、最高のパフォーマンスと創造性を発揮できる状態をいう。

このコンセプトを念頭に、Panasonicは世界中の才能ある映像制作者が手がけた魅惑的なショートフィルムのコレクション、 『Flow State Project』を発表した。ここではLUMIX S5ⅡXを使用して、「Flow State」のエッセンスを取り入れた素晴らしいコンテンツを制作し、アーティストの創造的なビジョンを現実のものにする方法を紹介しよう。

「頭の中ではすでに撮影現場にいて、書きながら撮影しているような感覚になって、それで「Flow State」に入っていると感じます。撮影現場で撮りたいものを想像することで、「Flow State」に入ります。その状態になると、頭の中で映像を編集できて、スクリーンでどのように見えるかが分かります」
- 鎌田啓生氏、『THE WATCH』監督

自分自身をクリエイティブに表現することは苦しい作業だ。機材や予算、スペース上の制約がある状況ではなおさらだろう。アーティストが新たな挑戦に挑戦し、こうした制限を克服するための助けとなるために作られたのが、LUMIX S5ⅡXである。アーティストが自らの創造性を発揮し、ビジョンを実現できるようにすることがLUMIXの究極の目標だ。LUMIXのマーケティングチームはこのプロジェクトについて、こう述べている。 「撮りたいと願ってきたけれど、他のカメラでは性能上の限界のために諦めていたものを撮ることに、ぜひとも挑戦してほしいのです」。

HDMIケーブルでLUMIX S5IIXに接続されたBlackmagicVideo Assist 5” 12G HDR タッチパネルを操作する、撮影監督のジェス・シャールトン氏。
HDMIケーブルでLUMIX S5ⅡXに接続されたBlackmagicVideo Assist 5” 12G HDR タッチパネルを操作する、撮影監督のJess Charlton氏。

あらゆるレベルのアーティストや映画制作者が自身の「Flow State」に入り、創造的なビジョンを実現するのに役立ってくれる機能のいくつかを、ここで紹介しよう。

  • 24.2Mフルサイズセンサーを搭載。黒基調のデザイン。優れたイメージクオリティと卓越したカラーサイエンス

  • 像面位相差AF機能が、高速性・信頼性に優れたAF性能を実現

  • アクティブI.S. による、パワフルな手ブレ補正テクノロジー

  • 収録フォーマットC4K 60p/50p 4:2:2 10bit(記録時間無制限)および6K 30p/25p 4:2:0 10bit、ならびにFHD 120fpsハイフレームにも対応

  • Apple ProRes RAWまたはBlackmagic RAWで撮影した動画RAWデータをHDMI出力して外部レコーダーに記録

  • 14+ストップV-Log/V-Gamut撮影機能により、ハイダイナミックレンジ、デュアルネイティブISOテクノロジーに対応

  • 外付けSSDへの対応により、Apple ProRes 422HQ、All-Intraなど低圧縮の映像圧縮方式の活用範囲が拡大

  • 有線/無線IPストリーミング機能

『Flow State Project』1作目となる『THE WATCH』は、ニュージーランドのウェリントンで撮影された。この映画は、父親との関係を修復しようとする男の物語を描いており、家族どうしの関係の在り方や、長い間離れていた愛する人と再びつながることの難しさについて探求している。この印象的な映画を制作した制作陣に、ストーリーの着想について、アーティストのビジョンを実現する上でLUMIX S5ⅡXがいかに貢献したかについて、尋ねてみた。

脚本を手に、撮影監督ジェス・シャールトン氏からの画角に関する質問に答える、鎌田啓生監督。
脚本を手に、撮影監督Jess Charlton氏からの画角に関する質問に答える、鎌田啓生監督。

『THE WATCH』制作陣へのインタビュー

今回紹介するのは、同作品の脚本・監督を手がけた鎌田啓生氏と、撮影監督を担当したJess Charlton氏へのインタビューである。

─ 『THE WATCH』は、どこから着想を得たのですか?

鎌田啓生氏(以下、鎌田):『THE WATCH』のアイディアは、日々のジャーナリングから生まれました。僕は、感じたこと紙に書き留め、どんなことでも記録に残すことを習慣にしています。あるとき、自分の人生や自分の両親について感じたこと、それから、普段はあまり話さないようなことだけれど、書かずにはいられないと感じたことを、自分だけのために書き留めようとしていました。誰にも伝えることのない、至って個人的な内容です。いつも考えていることを書き留めたとき、ふと、『THE WATCH』になるアイデアが頭の中にどっと流れ込んできました。全編の脚本は、3分足らずで書き上がりました。自分が書いた脚本には、撮影するまでほとんど変更を入れていません。変わったのは現場の進行に関する部分だけで、コンセプトやストーリーの本質は最初から変わっていません。

─ ウェリントンをロケ地に選んだ理由は?

鎌田:2017年に9か月ほど、ウェリントンに滞在したことがあります。ウェリントンの街が大好きで、かねてからこの街で映画を撮りたいと思っていたのですが、その機会がなかったんです。いつかはこの街に戻って映画を撮りたい、ウェリントンの人たちやニュージーランドの人たちと一緒に映画を撮りたいと、ずっと夢見ていました。そしてついに、LUMIX S5ⅡXという新しいカメラで映画を撮らないかというお話をPanasonicからいただいたのです。その機に乗じて、ここなら映画が撮れると見込んだ国へ行く覚悟を決めました。その時点ではまだ、夢の実現に力を貸してくれる人への伝手もありませんでした。

─ 視覚的な観点からみて、ストーリーを語る上でカメラはどういう形で役に立ちましたか?

鎌田:ずっと、デジタル一眼レフカメラを相棒にしてきました。18歳の頃に使っていた1台は、機動力に優れ非常にコンパクトなもので、多くの映画をこれで撮影しました。ただし、いずれもFHD APS-Cだったので、画像はクロップされてしまいます。今回使ったS5ⅡXは、フルサイズセンサーで4K撮影に対応しています。Blackmagic Video Assistを使えば、5.9Kでの撮影も可能になります。それは私にとってシネマカメラでの撮影同等と感じています。撮了後に大きなモニターで映像を見たのですが、画質がとても良かった。色味も素晴らしかった。肌の色味もまるでフィルムのようだと感じました。シャドウ部分は細部までディテールが素晴らしく、ハイライトはすべて残っていたので、グレーディングを行って、よりクリエイティブなコントロールができました。S5ⅡXでの撮影を通して、このカメラ自体が撮影全体のプロセスのハードルを下げてくれたと思います。何を撮りたいのかが分かっていれば、あとは撮るだけです。操作がとてもしやすく、大掛かりなリグや、撮影自体のために多くの人を必要とすることはありません。

─ Blackmagic RAWで撮影・編集するメリットについて教えてください。

鎌田:Blackmagic RAWで撮影するメリットは、ポストプロダクションをすれば分かります。映画の編集はBlackmagic Design社のDaVinci Resolveで行いました。Blackmagic RAWはResolveのネイティブコーデックなので、カラーページのノードが少ない5.9Kでも再生に支障をきたすことはありませんでした。プロキシメディアも使用しなかったので、カラーグレーディング開始時のデジタル中間処理は完全にシームレスで実行できました。脚本執筆時には、グレーディングのため非常に具体的なルックを思い描いていました。主人公の主観的な世界観を反映させるために、この強烈なオリーブイエローという色味を映画に加えたかったのです。グレーディングを開始したとき、色をかなり強調しましたが、Blackmagic RAWはそのルックに十分対応できていました。Blackmagic RAWでここまで遊べるものかと、本当に感心しました。最終的に、この映画のルックには満足しています。

車内にいる男性の姿を映し出すBlackmagicVideo Assist 5” 12G HDR ディスプレイ。
車内にいる男性の姿を映し出すBlackmagicVideo Assist 5” 12G HDR ディスプレイ。

─ このプロジェクトは『Flow State Project』と命名されています。アーティストはよく、集中力が高まったとき、最も創造力にあふれ、自分の内なる声に従っているという感覚を抱く精神状態を経験します。「Flow State」になることは、よくあるのでしょうか?

鎌田:執筆しているとき、撮影現場にいるとき、編集しているとき ― 創造的なことをしているときは誰もが「Flow State」を経験するのだと思います。その状態に入る方法は人それぞれです。自分の場合、「ゾーン」に入る感覚ですね。頭の中ではすでに撮影現場にいて、書きながら撮影しているような感覚になって、それで「Flow State」に入っていると感じます。撮影現場で撮りたいものを想像することで、「Flow State」に入ります。その状態になると、頭の中で映像を編集できて、スクリーンでどのように見えるかが分かります。少なくとも私にとっては、それが「Flow State」にいることだと思います。

─ Jessさん、このプロジェクトに参加することになった経緯を教えてください。

Jess Charlton(以下、Charlton):他の2作品との国際的なコラボレーションというアイディアや、ウェリントンの街の紹介になるというアイディアがいいと思いました。鎌田監督ともZoomで通話をしたのですが、役者に対してオープンでありたい、地元の人々にチャンスを提供したいという監督の言葉に、感銘を受けました。もちろん、新しいLUMIX S5ⅡXを試すというチャレンジにも強く惹かれました。

─ カメラに触ってみての第一印象は?

Charlton:何年か前にはLUMIX GH4を使っていたので、Panasonicカメラには馴染みがありました。PanasonicのコンパクトシネマカメラEVA1も、私のお気に入りです。ですから、Panasonicには親しみを感じますね。ただ、S5ⅡXは今まで使っていたカメラとは違っていました。私は普段それほど頻繁にAFを使わないのですが、S5ⅡXのAF性能はこれまで使ったカメラとは全く違っていました。作品を制作するなかでAFについての理解を深め、さまざまな設定について、コンティニュアスAFやその他の設定を切り替えるべきタイミングについて、把握していきました。

鎌田:カメラを動かしていて、かつ登場人物も動いているシーンではとりわけ、AFが大活躍しました。古い銀行のアーケードでは、ベンチに座った登場人物が時計を見上げるという場面を撮影しました。このシーンではカメラは彼の周りを動き続けていましたが、フォーカスは終始、彼に合っていました。すべてAFでの撮影です。画質もAFの精度も、とても良かった。もう1つのシーンは(最終的に編集でカットされたのですが)、ベッドで寝ていた主人公ルイが悪夢から目覚めるシーンです。目を覚ました彼が起き上がる様子を、カメラが追います。彼の表情をアップにするためカメラを寄せたため、カメラ位置が大きく動いたのですが、AFはシーン全体を通して被写体にピントを合わせ続けることができました。正直なところ、実際に人間が操作してこれをやるとすれば、LUMIX S5ⅡXのAFを使うよりもはるかに難易度が高くなったことでしょう。カメラのクオリティには、本当に助けられました。

『THE WATCH 』の撮影現場で、LUMIX S5IIXを使って屋外でのシーンを撮影する制作チーム。
『THE WATCH 』の撮影現場で、LUMIX S5ⅡXを使って屋外でのシーンを撮影する制作チーム。

─ 画質についての感想は?

Charlton:Blackmagic Video Assistで確認した時、映像が本当にきれいで感動しました。カメラの小さな画面では分かりにくいのですが、大きなモニターで見ると、本当に素晴らしい映像で、大型カメラに匹敵するクオリティであることが分かります。

─ 使いやすいカメラだと思いますか?

Charlton:はい。直感的に使えるカメラだと思います。カメラだけを見ても、サイズや形がとてもよいですね。グリップ感が素晴らしくて、持っているだけで何というか……ぴったりくるんです。持ちやすくて、まさに、身体の一部という感じです。背面モニターはフリーアングルになっていて、外側に向けられるのもいいところですね。ほどよい角度に調整できるのは大事です。メニューも整理されていて使いやすく、色々と使いこなしがいがありますね。タッチパネルを使ってもいいし、ボタン操作にこだわるなら、ジョイスティックを使うこともできます。

─ 「撮るのが待ち遠しい」と思った、お気に入りのシーンはありますか?

Charlton:時計職人のシーンの撮影は本当に楽しめました。想像していたよりも現実の方がはるかに良かった。撮影現場が、至る所に物があふれているアンティークショップのような場所だったということもありますね。美術監督のサラがこの素晴らしいセットを作ってくれました。以前一緒に仕事をしたことのあるジャレッドとの仕事も本当に楽しかったし、鎌田監督がジャレッドと仕事をしている様子を見るのも本当に楽しかった。あのシーンは素晴らしいコラボレーションになったと思います。

 聴覚障害者である俳優ジャレッド・フリットクロフト氏が、短編映画『THE WATCH』のワンシーンを演じる。
聴覚障害者である俳優ジャレッド・フリットクロフト氏が、短編映画『THE WATCH』のワンシーンを演じる。

─ 陰影に富んだ映像ですね。これはフルサイズセンサーの恩恵なのでしょうか?

Charlton:フルサイズセンサーが素晴らしいのは明らかです。視野が広くより多くのものが見えるので、レンズの力をより引き出すことができます。

─ 今回の撮影に使用したレンズは?

Charlton:「LUMIX S PRO 50mm F1.4」で本当に良いなと思ったのは、リングに絞りが付いていて、カメラに触れなくても簡単に絞りを変えられるところです。本当にいいレンズ、いいガラスで、ほどよく重みがありました。申し分のない使い心地でした。もう1つ、いいと思ったレンズが「LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S.」です。独自の手ブレ補正機能がついていて、このプロジェクトで初めてその機能を知り、使い勝手を知ることができました。

─ 最後にもう1つ。映像制作の世界に入りたいと思っている人たちに向けて、何かメッセージをお願いします。このようなカメラがあれば、すぐに映像を撮影できるのでしょうか?

Charlton:もちろん。こういうカメラがあれば、映画制作もかなり身近になりますね。伝えたいストーリーがあり、カメラを持っている人なら、このカメラがあれば実現できますよ。

撮影監督のジェス・シャールトン氏。 俳優演じる夜間の屋内でのシーンを撮影するため、カチンコ前でLUMIX S5IIXを構える様子。
撮影監督のJess Charlton氏。
俳優演じる夜間の屋内でのシーンを撮影するため、カチンコ前でLUMIX S5ⅡXを構える様子。

「Flow State(フロー状態)」に入る準備はできているか?

LUMIX S5ⅡXは、創造性を刺激し、アーティストが「Flow State」に入りやすいよう設計されている。『Flow State Project』の立ち上げを通じて、Panasonicは世界中の才能ある映像クリエイターにその能力を披露し、 LUMIX S5ⅡXを使っていかに素晴らしいコンテンツを制作できるかを実証するための場を提供してきた。

このカメラがあれば、アーティストは他のカメラでは避けられなかった制約を乗り越え、新たな挑戦に立ち向かい、ついには自分のビジョンに命を吹き込むことができるだろう。映像制作を志す人であれ、熟練したプロであれ、LUMIX S5ⅡXはあなたの創造性を解き放ち、芸術を次のレベルへと引き上げる強力なツールになる。