免疫力アップ企画 第3回「免疫力を高める運動って?はじめてみよう、毎日少しずつの運動習慣!」

監修:並木 隆雄(なみき たかお)
ライター:UP LIFE編集部
2021年8月31日
健康

前回の記事では、和漢診療学から考える免疫力UPに欠かせない食事のお話をしました。

今回は、免疫力を上げる三大柱の最後、「運動」がテーマです。

免疫と運動にはどのような関係があるのでしょうか?

また、いつ、どういった運動をおこなうと健康的に過ごせるのでしょうか?

ふだんの生活に取り入れやすい運動メニューを千葉大学医学部和漢診療科診療教授・並木 隆雄先生にお聞きました!

運動は健康維持の基本!免疫力は運動で変わる?

写真:女性が外で動きやすい服装でストレッチをしているイメージ

運動は健康維持の基本!ということで、免疫力の向上のためにさっそくスポーツをはじめようと意気込みたくなるものですが、和漢診療学の視点から考えると、運動はただがむしゃらにすればよいというわけではなさそうです。

並木先生に聞くと、運動の大きなメリットは、ストレス解消だといいます。

「ストレスは自律神経に大きな影響を与えますが、実は免疫力も、自律神経の影響下にあります。
つまり、ストレスによって自律神経が乱れた状態がつづくと、免疫力も弱まってしまう可能性があるのです」。

だからといって、急に強度の高い運動をはじめるのは、おすすめできないそう。

ふだんから運動習慣のない方は、激しい運動だと続けるのも一苦労ですよね。

運動は「汗ばむ程度」からはじめるのがおすすめ!

並木先生は、運動は“個人にあった強度”であることが大前提と話します。
運動の強さは、「汗ばむ程度」を目安にはじめるのがおすすめだそう。

「たとえばアスリートのような過激な運動は、活性酸素ができやすくなります。
活性酸素とは、呼吸で取り込んだ酸素の一部が、身体を巡るうちに毒性を帯びたものですが、この活性酸素が免疫細胞にも悪い影響を与えます」と並木先生。

運動ならば、有酸素運動で、汗ばむ程度の強度のものがベストとのこと。
さっそく、具体的な運動の例をみていきましょう。

足が重要!免疫力アップが期待できる運動

並木先生に聞くと、免疫力を高める運動は、足を中心にした動きのものが多いようです。

「足がむくんでいる場合、血行不良が起きていますから、「気」も滞りがちです。
気の停滞は免疫力に影響します。
また、西洋医学的にみても、足のむくみは免疫細胞の多く集まるリンパ液の流れの低下につながるので、免疫力にもよくありません」と並木先生。

免疫力を高める運動は、足を中心として動かす以下のものからはじめてみましょう。

免疫力アップが期待できる3つの運動

  • パターン1:かかと上げ(1度に10回ほど)
    足を肩幅に開き、ゆっくり背伸びをして戻すのを繰り返す。
    つらい方は、座ったままでかかとを上げ下げしてもOK。
  • パターン2:踏み台昇降(1度に5分ほど)
    15cmほどの段差(踏み台や階段の一段目)を用意し、片方の足で登ったら同じ足で降りるのを左右交互に繰り返す。
  • パターン3:ウォーキング(1回30分ほど)
    やや早歩きで30分、近所を散歩感覚で歩く。
    買い物のついでや休憩時間を利用してできる時に行う。

上記3つの運動は、一応の目安はもうけましたが明確な回数や頻度はありません。

大切なのは、「汗ばむ程度の運動」であることと、運動自体がストレスにならないこと。

かかと上げは座ったままでもできますし、在宅勤務中も可能です。

また、踏み台昇降はテレビを見ながらや、歯みがき中におこなうなど、日常の習慣と結びつけるのもコツの一つです。

これらの運動を気づいたときに行うことで、足の静脈を囲む筋肉が刺激され、むくみの原因になっている血行不良が改善していきます。
すると、身体全体の血流もよくなり、気の巡りも改善していくはずです。

運動は、がんばりすぎないのがポイント!

写真:女性がBluetoothイヤホンで音楽を聴きながら運動し、首にかけたタオルで汗をふいているイメージ

上記に挙げた運動は、何かのついでや気分転換など楽しさや心地よさと結びつけて行うのが一番だと、並木先生は話します。

他人と競争するのではなく、リラックスを目的として続けられるとよいかもしれません。

そのためには、運動=身体に良いものと一様に決めすぎないのもコツです。

ものごとを1つの側面だけでとらえるのは早計ですし、何事もやりすぎれば毒にもなります。

「和漢診療学はバランスを重視しています。
ものごとは、良い部分もそうでない部分も併せ持つので、どちらか一方に傾かないようするバランス感覚が大切です」と並木先生。

運動には認知機能を向上させるというメリットもある!?

また、運動には、認知機能を向上させるというメリットも。

運動で心肺機能が鍛えられることで、身体中の血液の1/3が必要といわれる脳にも充分な血液がいき渡ります。
その結果、認知機能が改善し、さらには身体全体の健康にもつながっていくのです。

もしかしたら、ものごとを前向きに捉える心のしなやかさも、認知機能と関係があるかもしれません。

ご紹介した3つの運動を、好きなように組み合わせ、ぜひ日常生活に取り入れてみましょう。

次回のテーマは、「免疫力×笑い」。
笑いがもたらす免疫力との関係を、徹底解説していきます。

ぜひお楽しみに!

監修

写真:並木 隆雄(なみき たかお)さん

並木 隆雄(なみき たかお)

千葉大学医学部卒業後、千葉大学医学部付属病院を経て、医学博士に。2012年には同大学の和漢診療科診療教授に就任。臓器別に考える西洋医学ではキャッチアップできない幅広い症状に対応し、身体全体のつながりを考えたアプローチで患者のQOLの向上を目指している。必要に応じて現代医学の利点を生かし、漢方薬のパフォーマスンスを最大限に発揮させるのが目標。シェフの岡部栄との共著の「新版 千葉大学病院の薬膳ごはん」も。

2021年8月31日 健康

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