「本格的なシミ予防」という未来の技術を目指して。
スキンケアをきちんとして、日焼け止めを塗っていても、いつの間にかできているシミ。
一度できてしまうとセルフケアで消すことは難しく、肌の色はもちろん心まで曇らせてしまう…。
そんなシミの予防、そして肌のくすみ対策に「LED」という光で挑む研究者、金子翔太。
誰にでも扱いやすく、安全で効果が高い美容機器の実現を目指して重ねてきた研究の現状と展望についてインタビューしました。
肌の色に本格的にアプローチする美容機器は珍しい!?
新卒で入社した会社では、業務用映像機器の設計を担当していました。4年前にパナソニックへ入社し、最初は研究所で肌の明るさ改善の研究をしていました。そこでLEDという光の、シミやくすみの原因となるメラニンへアプローチする効果を見出しました。この効果を美容機器として形にすべく、2年前に商品部へ異動。過去に手がけていた映像機器の設計と違って人が相手なので、効果と安全性を両立させることの難しさに四苦八苦しながらも、取り組んでいます。
シミやくすみにアプローチするという発想の美容機器は、あまりないと思います。それこそ効果と安全性という要素をすべて叶えることの難しさもあります。
LEDに肌の明るさ改善の効果を目指して
LEDの波長は紫外線を含まないので、肌にダメージを与えることなくさまざまな美容効果を得られるものとして美顔器には多く使われています。赤や青、黄色など光の種類によって肌への効果が異なるのですが、赤色のLEDにメラニンの生成を抑制し、排出を促す効果があることについて検討している段階です。
赤色LEDというと、コラーゲンの生成をサポートしてシワやたるみを防ぐ効果が報告されています。メラニンへのアプローチに関しては論文も少なく、研究には時間がかかっていますが、その赤色LEDに、さまざまな美容効果をもつIPLという光を組み合わせることを考えました。
IPLはメラニンに反応する光で、脱毛器に搭載されていることでおなじみですが、美肌目的にも応用することが考えられます。IPLは波長や出力を調整することで痛みがなく、シミやくすみのケア、赤みの改善、キメを整えるなど複合的な美肌効果が期待できると考えています。
赤色LEDと組み合わせることで、肌の色だけでなく総合的な美肌アプローチが叶い、美容機器を使い続けるモチベーションアップになることを狙っています。
効果実感と商品力とのバランスをとる設計がポイント
美容機器を使ってその日にすぐ効果を実感できれば、「明日も頑張ろう」というやる気につながるでしょう。そのためには出力を上げることが必要です。ただ、むやみに出力を上げると肌に負担がかかりますし、サイズが大きくなってしまったり高額にせざるを得ないなど、商品力も下がってしまうのです。興味をもった方が気軽にトライできるように、かつ効果はしっかりと。このバランスをとることにこだわりました。前職での経験も活かし、私なりに納得のいく技術に近づいていると思っています。
昨日よりも今日の自分を好きになれる。それが美顔器の叶える美しさ
モニターテストだけでなく、自宅では妻にも使ってもらって、その反応を見たりしています。いつものスキンケアに加えて美顔器を使った日は、外出するのも楽しそうなんです。そういうふうに心に自信をもたらすことも、美顔器がもたらす効果のひとつだなと思っています。
私たちが美容機器の技術を開発するとき、美容クリニックを着眼点にすることも多いです。痛みもダウンタイムも厭わず、確実に肌を変えたいのならクリニックという選択肢が正解ですが、美容機器が目指すのはそこではありません。肌をケアすると化粧のりもよくなって外出が少し楽しくなったり、自信を持って人と会話できるようになったり。そんなふうに、日々の活動のちょっとした後押しになればいいなと思っています。
プロフィール
金子翔太(かねこ しょうた)
1987年生まれ。中学生で初めて携帯電話をもったころから電化製品に興味があり、大学では工学部で機械工学を学ぶ。電機メーカーで業務用映像機器を手掛けたのち、コンシューマー向けの商品を開発したいという思いで2018年にパナソニックへ入社。
- インタビュー内容は2022年5月現在のものです
- 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です