効果実感できるドライヤーだけ商品化。自らの髪で評価する毛髪診断士。
「効果の得られない商品なら、それは世に要らないと思います」と断言する、上林真由香。
強めの言葉の裏には、仕事への熱い思いがあります。
ヘアケア機器の技術開発を担当。職務を追求するあまり、機器を分解して中身の仕様を微調整する技術を体得したり、毛髪診断士の資格を取得したりというアスリート気質。
その情熱をたっぷり語ってもらいました。
髪を濡らして乾かすテストを1日100回実施
入社してから22年間、ずっとロングヘアです。以前はショートかボブヘアでした。毛量が多くクセが強く、さらに乾燥しやすい髪質なので、伸ばすのはまず無理だと諦めていて。今の髪型ができるのは、ひとえに自社のナノケアドライヤーのおかげです。
仕事でさまざまな試作品や商品を試し、仕上がりの髪を計測しますが、使うドライヤーによって、髪の水分量やまとまり具合が変わるんです。ナノイーの発生量や種類によっても、キューティクルの状態や髪の水分量が大きく変わります。自分のニーズに合う道具が出合えれば、髪の悩み解決に近づくことができるというのを、身をもって実感しています。
もちろん髪を伸ばしているのは、仕事のためというのが大きな理由です。ヘアケア機器の中でも主に、ドライヤーの実使用評価を行うのが私の仕事。社内外のモニターさんに試していただく前にまずは自分の髪で評価するのですが、多いときは1日に100回以上濡らしては乾かし、を繰り返すこともあります。この前、入社22年で何回試したかなと数えてみたら、なんと4万回以上でした。
このように自分の髪は仕事の大切な相棒であり、計測機器なので、仕事以外ではとにかく大切にいたわっています。夜は自宅でトリートメントをたっぷり塗ってメンテナンスをし、それでもダメになったらヘアサロンのトリートメントを受けて補修しています。
モニター評価の仕事は体力勝負!
自分の髪を使った事前確認を重ね、商品化の候補が絞られたら、次は多人数モニター評価へと移ります。数名のモニターさんをお呼びし、シャンプー&ドライを2機種で実施するので、モニターさんが7名なら1日に14回。シャンプーの仕方は元ヘアサロン勤務の先輩に教わって、今ではすっかり慣れました。
また、人毛の毛束を濡らし、ドライヤーで乾かして比較したり、乾かした毛束を1000回ブラッシングしたときのダメージ度を評価することも。内職のように毛を1本ずつ並べて、髪表面の摩擦係数を評価したり……。なかなか体力勝負な仕事です。そういった結果を数値化し、商品化するものを決定していきます。
20秒でドライヤーをバラバラに
自分の髪で試している期間は、「ここがもうちょっと変われば風の流れがよくなるな」とか「こうしたらナノイーが髪に届きやすくなるのでは」などと感じることがよくあるんです。仕事を始めた頃はそのたびに設計担当者に戻し、微調整してもらっていました。でも、自分でも知識をもって微調整ができるようになれば早いなと思って勉強し、ドライヤーを分解して内部の仕様に触れることができるようになりました。今では20秒もあればバラバラにすることができます(笑)。学生時代に触ったことがあったくらいのハンダゴテを、まさか大人になって扱うとは思いませんでした。
また、機器の評価をするうちに髪についても深く知識をもちたいという思いが湧き、毛髪診断士の資格をとりました。髪や頭皮についての基礎知識を得ることができたので、ドライヤーの機能が髪に与える影響も理解しやすくなりました。
市場にある自社商品がいちばんのライバルです
髪を乾かすって、人生の中で不毛な時間のひとつだと思うんです。それがラクになったり、楽しいと思える時間になればいいなと思います。さらに、乾かしながら髪のトリートメントができればもっといいですよね。
そんなふうに人への効果やメリットが得られない商品なら、それははっきり言って要らない商品だと私は思います。だからこそ、開発メンバー間でダメ出しをしながら、自分たちが本当に欲しいと思えるものを作っています。いちばんのライバルは、市場にある自社商品。新作が出るたびに買い替えてくださるお客様もいらっしゃるので、「前のものより良くなった!」と思っていただけるよう、心血を注ぎます。
実際に商品が完成して、使っていただいたお客様に喜んでいただけたときには、苦労が吹き飛びます。通っている美容室のお客さまや、友達の友達といった、私自身は直接面識がない方から「すごく髪がきれいになった! 買って良かった! ありがとうって伝えてほしい!」と伝言をいただいたときは本当にうれしくて、もっとビックリしてもらえる商品を作ろう! という活力になりました。自分が関わった商品を使うことで髪がきれいになり、自信をもって毎日を過ごせる方が増えたら、それが何よりの喜びです。
プロフィール
上林真由香(かんばやしまゆか)
1980年生まれ。入社当初は軽い気持ちでビューティに関わり始めたが、モニター評価で髪の変化を目の当たりにしてどんどん興味が増し、積極的に業務の幅を広げ続けている。学生時代は仕事にしたいと思っていたほどのお笑い好き。
- インタビュー内容は2022年7月現在のものです
- 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です