化粧品メーカーから転職。世にない美を追い求める基礎研究の匠。
まだ世の中にない、まったく新しい発想の商品を作るには?
柔軟な発想とアイデアはもちろん、それだけに頼ることなく、技術開発のタネとなる基礎研究(先行技術開発)を行うこと。
くらしアプライアンス社というグループ企業で生体反応の基礎研究を行う研究者、岡本弓月に、ヴェールに包まれた仕事の中身について取材しました。
物理的刺激による生体反応を研究
商品を開発する事業部よりも先に、商品化につながる可能性のある先行技術の探索を担当しています。専門は生体検証で、具体的には光や熱、圧などの物理的刺激による生体反応を研究する仕事です。
子供の頃からバイオテクノロジー(注:生物学)が好きで、生体メカニズムを研究することがおもしろく、それを仕事にしたくて大学卒業後は化粧品メーカーに入社しました。皮膚の老化の基礎研究を行っていましたが、バイオテクノロジー以外の考え方や知識もあればもっと新しい商品ができるのではと思い、物理的刺激の世界に興味が湧いてパナソニックに転職しました。
物理的刺激による生体反応研究は世界的にみても数が多くはなく、未解明な部分がまだまだたくさんあります。また、化粧品業界では基礎研究が進んでいるため業界指標として定められた明確な評価基準があるのに対し、物理的刺激には評価基準が少ないのが実情です。安全で効果的な商品をお客様にお届けするためには、パナソニックが国内外の専門家と連携しながら基礎研究を進めていくという必要があると感じています。
美容以外のジャンルをヒントに
物理的刺激による生体反応とは、例えば、患部に低周波の刺激を与えることで筋肉をほぐす低周波治療器や、温熱によって血流を促すヒーター(もしくはRF)などがそれにあたります。皮膚にこういった物理的刺激を与えるとコラーゲンを生み出す力を高めることにつながらないかとか、ピーリングで刺激を与えることなく内側から代謝を整えて肌表面をつるんとなめらかにできないだろうか、など、一例を挙げればそういったことを研究しています。
今考えているのが、光と熱の分離です。肌に光を当てると、光のもつエネルギーに対する生体反応が起こるだけでなく、光が吸収されて熱が生まれ、熱に対する生体反応も起こります。このふたつを分離してコントロールできるようになれば、新しい効果を備えた技術が開発できるのではと思っています。
理美容の新技術や評価は海外の方が進んでいる場合もあるため、海外へのアプローチも行います。国際学会などを通して専門家を探し、共同研究やモニター評価などを実施できる関係を構築しています。
理美容以外にもアンテナを広く
生体への物理的刺激というと美容医療を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。光治療や熱治療など、参考になるものが多く、これまで美容医療をヒントにした研究は多く行なってきました。ひと通りの研究が終わり、今は工学や化学なども含めた美容以外のジャンルに、美容や健康につながる新しいタネはないかと探しに行っています。
理美容以外に目を向けると、世の中には数多の技術が存在します。皮膚という概念にとらわれず「生き物に影響が出るもの」という視点で、見落としがないよう広くアンテナを張っていきたいです。
プロフィール
岡本弓月(おかもとゆつき)
生体メカニズムの研究に心惹かれて基礎研究のキャリアをスタートし、2006年にパナソニックのグループ企業である、くらしアプライアンス社へ入社。専門は生体検証。新技術を国内外から探索し、実験、効果検証、安全性確認などを経て先行技術を完成させている。
- インタビュー内容は2022年11月現在のものです
- 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です