顔のリフトアップは頭から。頭筋のためのEMS技術研究者。
SNSの普及によって一般の人も幅広い美容知識を得られるようになり、「顔のリフトアップは頭から」という知識をもつ人も多くなりました。とはいえ、定期的にヘッドスパやマッサージを受けられる人は少数。そこでパナソニックが研究しているのが、頭皮に使えるEMS技術です。担当するのは、若手ホープのひとり、干場太一。頭の深部から筋肉を動かすことにこだわる、その苦労について取材しました。
頭のためのEMSは、さまざまな面で顔と異なる
EMSとは、Electrical Muscle Stimulation、つまり電気で筋肉に刺激を与える技術で、引き締めやリフトアップ効果も期待できると言われています。筋肉の深層部まで刺激を与えることができるのが特徴です。電気で筋肉に刺激を与えることで、筋ポンプ作用により、血流の改善が期待できます。それにより、頭皮への効果、引き締めやリフトアップ効果も期待できます。
顔用のEMSは弊社でも研究を重ねていましたが、頭筋に使えるものは今までありませんでした。頭は硬くカーブがあり、また髪が生えていて、EMSの電極を頭皮に密着させることは難しいもの。EMSは機器と肌がしっかりと接触することで効果的な筋肉運動を叶えるため、頭は条件が悪い場所です。顔に比べて活発に分泌されている皮脂も、EMSの通電を阻害する要因となります。
そこで、頭皮とEMS電極の密着を充分に確保すべく、さまざまな実験を行いました。髪が生えているため、しっかり頭皮にあてるにはブラシ型が基本となります。ブラシの大きさ、通電させるピンの本数、その配置、形、など、自分だけでなく頭の形が異なる複数の人にも試してもらいながら、どんな人の頭にもしっかり密着し、かつ使い勝手が良く、手に取りやすい価格帯で提供できる良い形を複数の人にも試してもらいながら研究中です。
頭筋のために、たどり着いた形状は…
その結果たどり着いたのが、コンパクトなヘッドにピン状の電極を密集させる形状です。頭は球状なので、ヘッドが大きくピンを配置する間隔が広いほど、頭皮との密着が困難になります。また、十分な本数のピンが頭皮にあたらないと、通電にムラができ、ピリピリとした痛みが生じます。できるだけ狭い範囲にピンを配置し、頭筋にしっかりあてることができれば、筋肉が動いているという実感が高まり、かつ痛みは起こりにくくなります。
さらに、ピンにクッション性をもたせたこともポイントです。いわゆるブローブラシのように、ピンの台座にゴムの使用を検討。頭にあてるとピンが上下するので、より使いやすく、密着感を高めることが可能になりました。EMSは使用部位を濡らして使うのが基本なので、正確な研究データを得るためにはピンの動きと防水性を両立させることも必要であり、難しさを感じながら研究を繰り返しています。
見えない筋肉の動きを視覚化
研究している技術は、チリチリとする不快な痛みを極力減らし、筋肉はしっかり動いている感覚を得られるEMSプログラムにこだわって研究しています。その考え方を頭筋用にも搭載しつつ、前頭筋や側頭筋など大きな筋肉を深部から動かすことができるようなEMSプログラムに仕上げました。こちらもさまざまな人に試してもらい、〝ギューッ、ギューッ〟という、強弱があり波のように広がる刺激感が好評を得ています。
ただ、EMSは電気刺激であり、EMSによる筋肉の動きを視覚化することができません。感覚だけではなく動きを視覚化できないだろうかと考え、医療業界で使われるエコーにトライしてみました。筋肉の動きを視覚化することができ、それによってより高い効果の実現を叶えられると思っています。
美容初心者も気軽に手に取ることができる美容機器を
美容家電は、なくても困らないけれどあるとうれしい〝必欲品〟。だからこそ、無理や我慢ではなく、使うこと自体が楽しかったり、生活の質を変えるような商品の研究に携わっていきたいです。パナソニックの頭筋用EMSは、不快な刺激を排除して高い実感を追求した、まさに〝必欲品〟と自信をもって言えるものだと思っています。
最近では女性だけでなく男性で美容に気を遣う人が増えてきました。ですが、美容機器を購入して使う人はまだ少数だと思います。そのような男性や、美容初心者にも必要とされるものが作りたいです。
プロフィール
干場太一(ほしばたいち)
1995年生まれ。大学時代には、生体内に埋め込んで使用される金属インプラント材料の研究をしており、生活のQOLを上げる商品の開発や研究に携わりたいと考え、2019年にパナソニック入社。入社当初は衣類用アイロンの商品設計に2年半携わり、2年前からフェイス・ボディケアの技術開発を担当している。
- インタビュー内容は2023年9月現在のものです
- 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です