さまざまな美肌効果を引き出す、〝美容に適したスチーム〟エンジニア。
パナソニック歴36年というベテラン研究員、伊藤晶子。生活家電を含めさまざまな部署で多彩な経験を積み、12年前にビューティへ異動。主力製品であるスチーマーの設計を手がけています。長年にわたりバージョンアップを重ねてきた製品であることからより高みを目指すためには、細かな気配りが必要に。さまざまな工夫と、そのための技術についてインタビューしました。
さまざまな経験を経てスチーマー担当に
入社して36年の中で、さまざまな製品に携わってきました。空気清浄機やホットカーペットなど生活家電の設計に携わった後、金型(製品、パーツの形を作る型)の設計を担当する部署で3D CAD(3次元の製図をデジタルで行うソフトウェア)を学び、さまざまな解析やシミュレーションを担当。現在は、ビューティ商品の中でスチーマーの設計を担当しています。
パナソニックの「スチーマー ナノケア」は、2004年に発売されて以来、さまざまな肌悩みに対応する製品として評価されてきました。特に冬の肌の乾燥対策として好評を得ています。最近では定番の「おうち美容」ニーズに対して、パナソニックではスチーマーの本質的な価値であるうるおい効果をさらに進化させた本格美容派向け製品や、リラックスタイムにも取り入れられる癒し重視派向け製品など、ライフスタイルにより組み込みやすい製品を提案しています。
スチームの質にこだわり抜く
一般的にスチーマーの構造はシンプルです。給水タンクから供給された水をスチーマー本体内部で加熱して沸騰させると水蒸気となり、その水蒸気がスチームとして吹き出されます。
ただし、単に水蒸気を発生させて外に放出するだけでは、心地よく肌をしっとりうるおす〝美容に適したスチーム〟にはなりません。私たちはスチームの質に、非常にこだわっています。具体的にはまず、熱くもぬるくもない、適切な温度であること。スチームの粒子が細かいこと。部分的に肌にあたるのではなく、顔全体を包み込むようなスチームの流れであること。そしてスチームが出てくるスピードも大切です。スピードが速いと鼻先が熱さを感じやすくなります。遅いと冷えてしまったり、包み込まれるような感覚が得られにくくなります。
顔全体をスチームが均一に包み込むことで、温スチームの水分を顔全体に与えることができます。均一に包み込むスチームの質により、肌のうるおいやハリ感などさまざまな美肌効果を引き出すことが可能なのです。
高いスチームクオリティを担保しながら、お客様のニーズに合わせてさまざまなスチーマーを開発しています。顔全体を包み込むようなたっぷりの蒸気にこだわるなら、吹き出し口がふたつのダブルスチームタイプ。省スペースにこだわるなら、シングルスチームのコンパクトタイプ。化粧水ミストの機能がついたタイプや、お気に入りの香りに包まれながらリラックスタイムに使えるタイプなどです。
さまざまな解析技術を駆使
スチームの流れや量、温度など、質を上げるためにさまざまな検証を行っていますが、そのひとつをご紹介します。
流体解析や高速度カメラを使用してスチームの流れを可視化し、吹出口形状や配置などが、スチームに対してどのような影響があるかを検証し、その結果をもとに構造設計を行います。試作後、さらに実機でも何度も検証し、微細な調整を行なって、肌に心地よいスチームを作り上げています。
スチームの流れを可視化できる〝流体解析〟。左の方が、顔全体を包み込む広がりのあるスチーム。動画で検証しています。
さらなるコンパクト化へのチャレンジ
スチーマー開発時の目標はたくさんありますが、そのひとつが本体のコンパクト化です。
継続して使っていただくためには使い勝手向上も重要な要素であるためです。コンパクトな本体にすることで、使用時に場所をとらないだけでなく、収納もしやすくなります。
ただ、スチームを発生させる構造において熱が発生するので、本体が過度に熱くなることを避けるために、ある程度の大きさは必要となります。この制約条件がある中でいかにサイズを小さくするかが、設計時に苦労するポイントです。今後もさまざまなチャレンジを続けていきたいと思っています。
プロフィール
伊藤晶子(いとうあきこ)
パナソニック歴36年というベテラン研究員。空気清浄機やホットカーペットなど生活家電の設計、金型の3D CADによる設計といったさまざまな分野を経験して見識を深め、ビューティへ異動。何もないところから徐々に形が作られていく過程すべてに立ち合う設計という仕事に、大きな達成感と魅力を感じている。
- インタビュー内容は2023年10月現在のものです
- 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です