ドライヤーで美髪へ。そのための回路を作る仕事人。

ドライヤーで美髪へ。そのための回路を作る仕事人。 村松優一 ドライヤーで美髪へ。そのための回路を作る仕事人。 村松優一

機器が、スイッチを入れると動く。そこには部品やパーツだけでなく、何をどのように動かすかを決める「回路」が存在します。いわば、機器の頭脳や心臓部とも言える存在。パナソニック、ドライヤーの回路設計を担当している村松優一に、そのこだわりや苦労についてインタビュー。

回路の設計とは?

メーカーにおけるものづくりの現場は、大きくふたつのチームにわかれます。市場やユーザーのニーズを見据えて「こんなものが欲しい」と企画するチームと、「それをどう叶えるか」を作り上げるチームです。もちろん他にも多くの職種の人が関わっていますが、私はこの大きなカテゴリーの中で「どう叶えるか」のパートを担当しています。

たとえばTVのリモコンが壊れたときなど、家電の中を開けたことがある人なら、緑色の小さな板が入っているのを見たことがあるでしょう。あの板を「基板」といい、基板の上に乗っている情報を「回路」といいます。私はドライヤーの回路の設計を担当しています。

基板のイメージ

例えば、ドライヤーの中でうるおい効果を生み出す高浸透ナノイー(大気中の水分を電極に結露させて集め、高電圧を加えることで発生させる、パナソニック独自のイオン)をどう発生させるか、モーターをどう動かすかの制御を行うのが回路の役目です。高機能になればなるほど、回路の設計は複雑になります。新しいドライヤーでは新たな挑戦をいくつか行いました。

ヘアケア効果をデザインするための新たな回路設計

まずは、高浸透ナノイー発生回路です。高浸透ナノイーを発生させるには、水分に高電圧を加えるという工程が必要になりますが、ドライヤーでは家庭の電源からナノイー発生用の-3~-5kV(キロボルト)という高電圧を発生させます。これ自体は従来から搭載している技術なのですが、今回は、高電圧を発生させる際の波形にもこだわりました。従来はマイクロコンピューターを用いた細かい制御を行っていなかったのですが、今回は高浸透ナノイーの発生量を調整するために、非等間隔の信号が必要に。かつ、100万分の1秒という細かい単位の制御信号までこだわり抜きました。

今回のドライヤーには、髪悩みに合わせて4つの仕上がりを作り分けることができる機能を搭載しています。それぞれ仕上がりに合わせて最適な発生量で高浸透ナノイーを放出させる必要がありました。制御信号の強さや波形によってお客様の髪の仕上がりが変わると思うと、責任は重大です。部品の選定や周辺回路の作り込みにはとても苦心しました。出力電圧も、4つの仕上がりメニューごとに細かく調整を行っています。苦労の結果あって、それぞれの効果が的確にデザインできたと思います。

村松優一さん

高級感のある液晶表示へのこだわり

もうひとつの新しい挑戦が、液晶表示です。液晶表示を採用しているドライヤーはまだ非常に珍しいと思います。従来のパナソニックドライヤーはLED表示を採用していました。今回の新商品は、風の強さ、温度、温風や冷風などのモードと4つの仕上がりメニューなど、機能の選択肢が多いため、LEDだとどうしても表示の数が多くなってしまいます。そこで、デザイン性を高めるため、液晶表示にトライしました。

村松優一さん

モードの表示は商品の顔になる部分でもあります。そのため、液晶表示の滑らかな美しさにこだわりました。液晶の滑らかさを実現するために、プロダクトデザインの部署と協業しながら、さまざまな形や動きを検討し、なめらかな美しい表示を実現することができました。

回路やマイクロコンピューターというと、あくまで中身の話で商品の見た目や使い勝手とはあまり関係がないように聞こえるかもしれませんが、実際はこのようにお客さまニーズとかなり直結しています。私は設計を担当する際、常に「お客さまに満足いただける品質かどうか」を考えながら検討を行なっています。せっかく購入した商品の液晶がカクカクしていたら、自分だったら嫌ですから。ここはとてもこだわりたい部分でした。

知識とスキル、感性のすべてを磨いていきたい

お客さまニーズという点で、もうひとつ、本体のサイズを大きくしないことにも苦労しました。機能が盛りだくさんなドライヤーなので、普通に動かそうとすると回路が非常に大きくなってしまいます。一般的に使いやすい形はコンパクトで丸みのあるデザインなのですが、基板は基本的に四角く曲げることもできないため、配置が大変です。できるだけ小さい部品を使用したり、丸みを交わしたりという工夫で、多機能でありながらもお客様が使いやすい適切なサイズ感に仕上げることができたと思っています。

村松優一さん

こういった内部の設計は、知識とスキルがものをいうことも多いです。部品ひとつひとつには何百ページもの説明書がついているのですが、それを読み込んですべての機能を把握していないと、企画担当者が本当に実現したかったことに寄り添えない可能性も出てきます。理想の商品を実現するためには知識とスキル、そしてお客さまニーズを捉える感性の組み合わせが必要です。これからも多くの人に喜ばれる商品開発のために、すべての面を磨いていきたいと思っています。

プロフィール

村松優一(むらまつゆういち)

1985年生まれ。人々が元気に、自分に自信をもってアクティブに過ごすことをサポートできるようなものが作りたいと思い、パナソニックへ入社。日々進化する電子部品や技術を活用し、自分なりのアイデアを組み合わせた商品を生み出して、世界中の人を驚かせるのが夢。

写真:村松優一さん
  • インタビュー内容は2024年5月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です