換気の基礎知識と具体的な方法

換気の基礎知識と換気の方法についての監修:藤原千秋(ふじわら ちあき)
ライター:UP LIFE編集部
2020年8月7日
空気

『UP LIFE』でもたびたびお伝えしているとおり、健やかな暮らしのためには換気が重要。それでも、「ただなんとなく窓を開けている」など、換気に対してそれほど注意を払っていない人も少なくないようです。そこで今回は、換気の定義から必要性、具体的な換気の方法をご紹介! 暮らしのアドバイスでも定評のある、藤原千秋さんに教えてもらいました。

意外に知られていない? 換気にまつわる基礎知識

換気とは、室内の空気を外の新鮮な空気と入れ替え、室内の空気中に含まれる汚れた物質を減らすこと。そう思う人は多いでしょうし、決して間違いではないものの、藤原さんによるとそれ以外の目的もあるそうです。

「花粉やダニといった物質を外へ出すことに加え、二酸化炭素の濃度を減らすというのもひとつの目的です。知り合いの体験談なのですが、換気の大切さを知らず家でずっと仕事をしていたらぼうっとしたり体調に違和感があったとか。外出すると元気になるのに、家にいる間は調子が悪いことが続いたので調べてみたところ、二酸化炭素の濃度が非常に高くなっていたそうです」

結局、その方は換気をする習慣を取り入れたそうです。このお話だけでも、いかに換気が必要なのかがわかりますね。

「もちろん、室内の空気には汚染物質も多く浮遊しているので、それらを屋外に出すことも大切。“外の空気の方が汚れているのでは?”と思うかもしれませんが、交通量の多い幹線道路沿いでもない限り、室内の空気よりもキレイなんです。特に最近の住宅は高気密なので、昔の風通しのいい家よりも汚染物質がたまりやすくなると考え、よりこまめに換気することを心掛けたいですね」

室内の空気の汚染物質としては、花粉やダニのほか、衣類からのホコリやハウスダスト、カビの胞子といったものが挙げられますが、それ以外にもさまざまなものがあるのだとか。

「たとえば、電化製品や家具といった工業製品に含まれる化学物質。新品を使い始めるときに独特のニオイを感じることも多いかと思いますが、そのニオイが化学物質由来のものだったりするんです。このほか、洗剤や芳香剤、整髪剤、虫除けスプレーなども気になります。閉めきったクローゼットに防虫剤をむやみやたら入れている……なんて状況もおすすめはできません。その場合はせめて使用方法を守り、適正量を使うようにしましょう」

そう語る藤原さんによると、基本的な換気の方法にはいくつかパターンがあるそうです。

「たとえば、2箇所以上の窓を開けて空気の入口と出口を設ける方法は“自然換気”と呼ばれています」これに対し、空気の入口と出口にファンなどの機器を設けるのが“機械換気”。マンションなどで見られる吸気口から勝手に空気が入り、換気扇から出て行くパターンもそうですね。

自然喚起(左)/機械換気(右)の例

自然喚起(左)/機械換気(右)の例

自然換気と機械換気はどちらもさらに細分化されますが、基本的には空気の入口と出口を設けて空気の流れをつくることが必須です。寒い日に窓を開けて冷気が入ってくると“換気した”と思い、すぐに閉めてしまうことはありがちですが、これは単に熱が逃げていっただけ。空気が入れ替わっているわけではないので、ただ開けるのではなく、空気の流れを意識するようにしてください」

室内の換気で気をつけたいことと、具体的な方法

さらに「空気の流れを速めたり、複雑にしたりするとより効率よく換気できます」と、藤原さん。

「近い位置や直線上にある窓より、対角線上にある窓を開けた方がより広い範囲に空気が流れます。可能な限りすべての窓を開けてください」

窓を開けて空気の流れを作る。サーキュレーターなどで空気を十分にまわし換気効率を上げる。

サーキュレーターなどを使い換気効率を上げる例

「さらにサーキュレーターで空気を十分に回すのが理想ですね。もちろん、家具の配置によっては空気が流れにくいこともあります。ホコリがたまりやすい場所は空気が止まっているサインなので、サーキュレーターなどで風を送るようにしてください」

なお、24時間換気システムも正しく使うことが大切です。

「改正建築基準法が施行された2003年7月以降、すべての建造物に設置が義務付けられた24時間換気システム。きちんと作動していれば2時間に1度、家の空気が入れ替わるように設計されているので、節約のためにとオフにするのはやめましょう。電気代もそれほど高くありません。浴室換気扇の消費電力はおよそ20W程度、1kWhの電気代を約27円として24時間つけっぱなしの場合で計算しても、1か月あたり390円弱。(20W×24×30日=14.4KW×27円=約388円)ちょっといいコーヒーショップのショートサイズ1杯分ほどの金額のために喚起を怠れば、それ以上に失うものが大きくなる可能性もあると思います」

とはいえ、24時間換気システムを作動していても、やはり換気は必要だとか。

「2時間に一度、空気が入れ替わるというのは、家全体の空気が滞りなく流れていることが大前提。家具の配置や空気が流れる先のドアをちゃんと開けているかなどで条件が変わってくるので、窓を開けての換気も必ず行うようにしてください」

それでは、シチュエーションごとに効率の良い換気方法を聞いてみましょう。まずは、窓が1箇所しかない部屋の場合。

「同じフロアにキッチンや浴室があるなら、すべての換気扇を回した上で部屋のドアも開けるようにしてください。換気扇がないフロアの部屋の場合は、他の部屋の窓とドアを開けると空気の流れが生まれます。

換気扇などがなく、窓が一つしかないフロアの換気例

換気扇などがなく、窓が一つしかないフロアの換気例

さらに効率良く換気したいときは、エアサーキュレーターや扇風機も活用しましょう。この場合は2つ必要になるのですが、まず部屋の窓を開け、サーキュレーターを外に向けて空気を出せるように設置。さらに、他の部屋からの風が入るドアの外側にもうひとつのサーキュレーターを置くと、家の中からの空気を送り込めて効率良く換気できます」

ウォーキングクローゼットやサービスルームなど、窓がない部屋の場合はいかがでしょうか?

「出口と入口が設けられない場所の場合も、サーキュレーターを活用しましょう。ドアの外から強い風を送ることで、その場所の空気を巡らせることができます」

なるほど、ではオフィスビルのように窓は開けられない場所の場合は?

「相当古いオフィスではない場合、そういった建造物は、吸気と排気のどちらにもファンのある機械換気の空調システムが設置されていることが大半です。きちんと働いているか心配な場合は、ビルの管理会社などに確認をしましょう。会議室などこもった空気が気になる場合、部屋のドアを開け室内から空気をだしてあげるのもよいでしょう」

エアコンをつけっぱなしで換気してもいい?

冷暖房が必要な季節は、換気のために窓を開けるのもためらわれるもの。「それでも換気は絶対にやるべき!」と、藤原さんは語ります。

「電気代がかかることよりも、個人的には換気をしないリスクの方が心配です。24時間換気システムも作動させた上で、2時間ごとに1回5分といった形で習慣化させておくのがオススメ。ずぅっと開けておけとはいいませんので、しっかり換気するようにしましょう。
また、空気清浄機は空気をキレイにしてくれますが、二酸化炭素の濃度などは高いまま。外の空気と入れ替えない限り、減ることはありません。また、エアコンが換気できると思っている人もいますが、一部を除いて換気機能は備えていないので要注意。換気機能があるとしても過信せず、窓を開けての換気も必ず行うようにしましょう。またエアコンをつけながら換気をする場合、エアコンから距離の離れた側の窓を開けると外気を直接吸い込む量が減らせるため、冷房機能への影響も軽減できるでしょう」

換気の基礎知識と換気の方法についての監修

藤原 千秋(ふじわら ちあき)

藤原千秋(ふじわら ちあき)

主に住まい・暮らしまわりの記事を専門に執筆して20年目。現在はライティングの傍ら監修、企画、広告、アドバイザリーなどの業務に携わる。プライベートでは三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著書監修、マスコミ出演多数。総合情報サイト『All About』家事・掃除・子育てガイド。

2020年8月7日 空気

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