冬は眠くなりやすい? しっかり寝ているはずなのに眠いなら、質の良い睡眠を手に入れよう
睡眠についての監修:坪田 聡
ライター:UP LIFE編集部
2024年3月8日
空気
「他の季節に比べて、冬はなんだか眠くなる」なんて、思ったことはありませんか? 「眠い季節=春」と思われがちですが、冬に眠気を感じる人も。これにはどんな理由があるのでしょうか?睡眠の専門家でもある医師の坪田 聡さんに、冬になると眠くなる原因と対策を教えてもらいました。
眠っているのに寝足りない! 冬ならではの理由って?
人々の睡眠の質を改善するために、日々、尽力している坪田さん。「冬になると眠い」というお悩みも、多くはないものの耳にすることがあるそうです。果たしてその原因とは……?
日照時間が短いため
「脳内の神経物質であるセロトニンには、目を覚ます働きがあります。この物質は日光を浴びることでつくられるため、日照時間が短い冬はセロトニンの量が減り、眠気が強くなりやすいんです。また、セロトニンは“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンの元でもあります。メラトニンには催眠作用があるため、不足して寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったりすると、日中に眠気を感じやすくなりますね」
自律神経のバランスが崩れやすいため
「季節の変わり目や厳しい寒さは、自律神経のバランスを崩す要因。自律神経には“昼の神経”と言われ、心身を活動的にする交感神経と、“夜の神経”と言われ、心身をリラックスさせる副交感神経があります。これらのバランスが崩れることで機能が低下し、夜、眠りにくくなることも。結果、睡眠不足となって、日中に眠気が現れる人もいます」
体の冷えやアルコールの摂取増加も、眠気を強める要因
「冷え症の方だと、体が冷えて寝つきが悪いことも、冬の睡眠不足につながります。また、冬は忘年会や新年会など、お酒を飲む機会が増えがち。アルコールは寝つきを良くする反面、睡眠の質自体を低下させやすいため、睡眠不足につながって日中、眠気を強める原因になる可能性も考えられますね」
睡眠の質を向上させることは、季節を問わず大切
「基本的に人間は、日中に起きていて夜は眠るものなので、日中に眠い=睡眠の質が悪いということ。睡眠の質を良くするには、“生活習慣を整える”“寝室の環境を良くする”“ストレス解消”という3つのポイントがあります。中でも自身で改善しやすいのは、生活習慣や寝室の環境を整えることなので、まずはこれらを実践していくのが大事ですね」
眠気解消のために実践したい! ぐっすり眠ってすっきり目覚める工夫
日中の眠気を抑えるには、良質な睡眠をとることが不可欠。そのためには何ができるか、具体的な方法を坪田さんに聞きました。
眠る前の準備としてできること
「人間は、体の深部にある脳や内臓などの体温が上がるときに、眠気が減って目覚めやすくなります。反対に、この深部体温が下がってくると、眠気が強まって寝付きやすくなるもの。そのため、良い睡眠をとるには、眠る前の温度コントロールも大切と言えるでしょう」
・効果的な入浴方法
「入浴をすると、深部体温はいったん上昇し、その熱は血管を通って体の表面へと運ばれます。そこで放熱して冷えた血液が再び深部に戻ることで、深部体温が下がってきてだんだん眠くなるんですね。つまり、お風呂から上がった直後ではなく、しばらく経って深部体温が下がったころが眠りやすいとうこと。
具体的には、湯船に40℃以下のお湯を張り、10分から20分ほどつかるのがオススメ。これで深部体温が1℃から1.5℃上がりますが、入浴後の30分から1時間ほどで下がってきて眠くなるので、そのころに布団に入ると良いでしょう」
・快適な寝室と眠りやすい服装
「寝室の温度は、あらかじめ15℃から20℃くらいまで上げ、湿度は50%から60%で調整を。また、照明はすべて消して真っ暗な方が眠りやすいですが、暗いのが苦手な場合は小さな常夜灯のみ点けておきましょう。周囲の音は“静かな図書館程度”と言われる40dbほどが良いとされています。
眠るときの服装は、やわらかな素材で皮膚にストレスを与えにくいものを。寝返りがしやすいように、凹凸がなくスラッとした形がいいですね。また、寒いからと言って布団を何枚も使うと、重くなって寝返りしにくくなります。それよりも部屋を暖かくして、保温性のあるナイトウェアで眠るようにしてください。なお、日中の服から眠るための服に着替えるのは、“入眠儀式”や“スリープセレモニー”と言われる行動のひとつ。そうやって眠るための準備をすることが、眠りやすさや、睡眠の質の向上につながります。
ちなみに、人間は眠っているときの体温が低くなっているため、電気毛布を使う場合はずっと一定の温度にせず、しばらくしたらオフにするのがオススメ。ただ、そのままだと朝が寒いので、可能なら起床時間の30分から1時間前くらい前にオンになる設定で使うと良いでしょう」
朝、目覚めるときにできること
「寒いうえに、太陽が昇るのが遅いため、なかなか起きられないこともある冬の朝。目覚めをよくするなら、起きる30分前から部屋をだんだん明るくしていくのが効果的です。今はそういった機能が付いたシーリングライトなどもあるので、利用してみるのがオススメ。目が覚めたら照明を完全に点け、起き上がってカーテンを開けるようにしましょう。
また、眠る前に起床時間を強く意識することで、目覚めやすくする“自己覚醒法”もあります。たとえば6時に起きようと思ったら枕を6回叩く、といったある意味、セレモニーのようなことをして起きる人もいますね。ただし、こだわりすぎると睡眠の質を悪くする場合があるので、意識しすぎないようにしてください」
眠気がおさまらないのは、睡眠に関わる病気の可能性も?
「“日中、眠気が強いんです”と言って、私の元を訪れる人の8割は睡眠不足が原因です。ただ、中には不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった病気の可能性も。また、日照時間の短さなどが原因と言われる冬季うつも考えられるので、気になる場合は睡眠外来などで診療を受けてください」
冬の寝室の空気を整えるエアコンの使い方
「先ほどもお伝えしたように、寝室の温度は15℃から20℃くらい、湿度は50%から60%にしておくのが理想的。“布団の中に入っていれば寒さは感じないから、エアコンは不要”と思うかもしれませんが、室内の冷たい空気を吸い込むと、肺が冷えてしまいます。深部体温が下がるタイミングならいいのですが、寒すぎるのはやはり良くないので、ある程度の室温は確保するようにしてください。最近のエアコンには、睡眠環境をサポートする機能を備えたモデルもあるので、活用すると良いでしょう。
また、室内が乾燥していると、鼻腔など空気の通り道もひどく乾いてしまい、眠りが浅くなりがち。しかも、喉の奥まで乾くとバリア機能が下がって無防備な状態になり、体に有害な物質が入り込む可能性もあるので、加湿機を使うなどの乾燥対策も行ってください」
寝室の環境を整えることが、冬の眠気解消の第一歩!
「冬になると眠くなる原因はいくつかありますが、ひとつずつ解消していくのが確実」と、坪田さん。
「先ほど、生活習慣と寝室の環境を整えることは自分で改善できる部分、とお話しましたが、生活習慣を変えるのはある程度の時間がかかります。その点、寝室の環境づくりはすぐに効果が出る方法なので、手をつけやすいはず。また、単なる睡眠不足が原因で眠くなっていることもありますが、適した睡眠時間は人によって変わってきます。最近は睡眠環境サポートができるスマートフォンのアプリもあるので、こうしたものを利用しながら自分にとって適した睡眠時間を探してみましょう」
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睡眠についての監修
坪田 聡
日本医師会、日本睡眠学会所属。ビジネス・コーチと医師という2つの仕事を活かし、行動計画と医学・生理学の両面から、睡眠の質の向上に役立つ情報を発信中。快眠グッズや気になる研究発表など、睡眠に関連する最新情報も紹介している。総合情報サイト『All About』睡眠ガイド。
2024年3月8日 空気
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