猫にとって快適な室温とは?夏・冬それぞれの適温と、
心地よく過ごしてもらうためのエアコンの使い方
猫の生態と、快適に過ごすための室温についての監修:宮下 ひろこ(みやした ひろこ)
ライター:UP LIFE編集部
2024年5月13日
空気
猫といっしょに暮らす際に気になる、猫にとっての快適な室温。人が過ごしやすい温度は、猫にとっても快適な温度なのでしょうか。夏や冬、季節によってエアコンの設定も気をつけてあげたいところ。そこで、猫にとっての快適な室温について、獣医師であり、動物病院専任カウンセラーでもある宮下 ひろこさんに伺いました。
そもそも猫は暑がり?それとも寒がり?
猫の体温は人間より少し高めですが、寒さが苦手というイメージがあります。実際のところはどうなのでしょうか。
「猫の祖先は、気温が高く乾燥した地域に暮らしていたと考えられ、基本的には暑さや乾燥には強く、寒がりな子が多いといわれています」と、宮下さん。
「とはいえ、全ての猫が暑さに強く寒さに弱いというわけではありません。猫種や年齢、運動量などによっても快適な温度は異なるため、まずは飼っている(もしくはこれから飼う予定の)猫の特性や行動を考慮し、季節に応じて室内環境を整え、猫の体調管理をしっかりしてあげることが大切です」
猫がストレスを感じない快適な室温は、21~28度前後
暑すぎたり寒すぎたりする環境は、人間同様、猫にもストレスになります。では、猫にとって快適な室温とは。
「一年を通して、猫にとっての快適な室温は21~28度前後といわれており、人間が快適と感じる室温よりやや高めに感じるかもしれません。季節により、外気との寒暖差が少なくなるよう、温度計などを用いてチェックしながら室内環境を整えることで、猫の体にストレスを与えない工夫を心がけてください。
また、室温の調整が難しい場合は、暑い時は涼しい場所へ移動できるように、寒い時は暖かく過ごせる場所を用意し、猫がいつでもどこでも快適に過ごせるよう飼い主が配慮してあげることも重要なポイントです」
⼦猫やシニア猫には、よりこまめな調整を
「猫には、正常な体温を維持し、平熱を保つ恒常性という機能が備わっていますが、子猫やシニア猫は体温調整の機能が十分ではないため、気をつけなければいけません。部屋全体というよりも、猫が過ごす場所ごとの対策がおすすめ。例えば、子猫用ケージやベッドにタオルなどを敷いて温かい状態にしてあげたり、シニア猫が長時間日光にあたっているなと感じたら移動してあげたりなどですね」
子猫は栄養が取れていない場合などは低体温になりがちなので、過ごしている場所を温かくする工夫を。また、シニア猫は体の機能が衰え、暑さ寒さに鈍感になっていたり、あまり動きたがらなくなるので、飼い主が気を配ってあげるのが良いのだそうです。
快適に過ごすには湿度にも気をつけて
猫にとって快適な室内空間をつくるためには、温度の調節だけでなく、湿度に気をつけることも大切だそう。
「猫に適した湿度の目安は、おおよそ40~60%とされています。梅雨時や夏など、高温多湿の環境が苦手な猫は多く、食欲が落ちたり体調を崩したり、心身ともに悪影響を与えかねないのが湿度。エアコンを除湿運転にしたり加湿器を使用したりするなど、猫が落ち着いて過ごせる工夫を」
夏の適温と熱中症対策
夏は猛暑が続くことも多く、猫の体調も心配になります。暑さに対してはどう対処すればいいのでしょうか。
夏のエアコン設定温度の⽬安は26~28度
「人間は暑くなると汗をかいて体温を調整しますが、猫の皮膚には汗を分泌する汗腺がなく、ほとんど汗をかかない動物です。冷感マットを用意したり、エアコンの温度を寒すぎない程度に下げて、快適に夏を乗り切りましょう。ただし、あまり冷えた部屋で過ごすのは苦手な子もいます。風が直接当たらない場所を作るのも大事です」
実は猫も熱中症になる!
「猫も人間と同じように、熱中症になることがあります。猫の体温が39度を超え、犬のように「ハアハア」と息が荒くなっていたら、命に関わることもあるのですぐに体を冷やして病院へ。脱水状態にならないよう、新鮮な水をいつでも水分補給できる数か所に設置することをおすすめします」
冬の室温のめやすと防寒グッズ使用の注意点
冬のエアコン設定温度の⽬安は21~24度
「寒さへの耐性には個体差がありますが、猫は、室温20度以下だと寒さを感じているのが私の実体験でも感じられます。特に運動量の少ない子猫やシニア猫、持病のある猫がいる場合、若く健康で運動量や筋肉量の多い猫より体温維持が難しいこともあり、こまめに室温をチェックしてください」
冬⽤あたたかグッズを使用する際の注意点
寒い時期はエアコンを使用して部屋を温めたつもりでも、窓の近くには冷気が溜まりやすく、部屋の中でも暖かい場所と寒い場所ができてしまいがちです。
「エアコンを使用しても体を丸めて寒がっている様子が見られる場合は、室温を見直した上で、エアコンに加え、体をすっぽり覆うドーム型の猫用ベッドやホットカーペットなどを併用するといいでしょう。
ただし、ストーブやヒーター、ホットカーペットを使うときは注意が必要です。猫には熱さに鈍感な一面があり、やけどをしても気づかないことがあるため、使用する際は直接体に当たらないようにするなど、低温やけどなどのリスクを下げる工夫を。
また、寒い場所に水を入れた器やトイレがある場合は、寒さを避けて近づかなくなってしまうことで、水を飲む機会が減ったり、脱水症状を引き起こすなどの恐れがあります。水飲みや排泄も快適にできるよう、設置場所も暖かく保ってあげましょう」
電気代を節約!エアコンを賢く使うポイント
猫のために、夏や冬はエアコンをつけっぱなし、なんて人もいるのでは。ここからは、エアコンを賢く使い、電気代を節約するためのポイントを紹介します。
エアコンフィルターのこまめなお掃除
フィルターが⽬詰まりすると、空気を取り⼊れる量が減少し、必要な空気を確保しようとしてエアコンが余計な電⼒を消費してしまいます。2週間に1回のフィルター掃除で年間約1万円以上※の節約に。
※パナソニック製品「CS-F401D2」を使用。1年間フィルターお掃除なしのフィルターで運転した場合に、暖房使用時の消費電力量約25%アップ。電気代単価31円/kWhの場合。
〈フィルター自動お掃除あり〉期間消費電力量1544kWh(冷房:463kWh 暖房:1081kWh)
〈フィルター自動お掃除なし〉期間消費電力量1814kWh(冷房:463kWh 暖房:1351kWh)との比較において
室外機の環境は定期的にチェック
ホコリや落ち葉などのごみがたまると熱交換の効率が下がり、消費電力アップにつながる可能性があります。特に風の強い日や台風が過ぎた後にはチェックを。なお、室外機は直射日光の当たる場所に置くと、冷房時の効率が悪くなります。空気の流れを遮らないよしずなどを立てかけ、影をつくるように。
サーキュレーターを活⽤して温度ムラを解消
冷気は下に溜まり、暖かい空気は上へ移動するので、室内全体の温度を一定に保つことは難しく、どうしても温度ムラが⽣じます。サーキュレーターで風向きや風量を調節し、室内の空気を循環させましょう。
ただし、使用には注意が必要。サーキュレーターや扇風機の中に猫が手を入れてけがをしてしまったり、コードを引っ掛けて転倒するなどの恐れもあるので、目の届く場所に置いて使用することはもちろん、留守にするときは閉まっておくなど、危険な環境を作らないようにしてあげることが大切です。
熱が出⼊りしやすい窓は断熱性を上げる
室内の熱は窓からの出⼊りが最も多いもの。隙間風が気になる一戸建てや大きな窓がたくさんある部屋は、室内の快適な温度を逃がさず、外気温の影響を少なくするために、窓の断熱が効果的。断熱シートや断熱カーテンの利⽤がおすすめです。
エアコンの⾵量は「⾃動」に設定
基本的には⾵量設定は⾃動にするのがおすすめ。エアコンは、設定温度と室温の差が大きいときに多くの電力を消費するため、例えばつけはじめの風量が「弱」設定だと、設定温度に到達するまでの時間が長くなり、結果的に余分な電気を使うことになるケースも。風量はエアコンにお任せにすることで、効率よく快適な温度になるよう調整してくれます。
エアコンを活用して快適な環境づくりを
エアコンは、猫にとっても人間にとっても快適に過ごすための環境づくりに大活躍。便利に賢く活用することで、快適な環境がつくれます。
「エアコンを使う際に少し気をつけてほしいのは、猫が無意識にリモコンを踏んでしまい、暖房から冷房へなど、設定が切り替わったりOFFになっていたりするケース。誤作動防止のために、リモコンの置き場所には注意しましょう。また、エアコンの使用はもとより、様々な猫用グッズをうまく活用するなどして、愛猫が快適に過ごせる環境つくりを心がけていきたいですね」
この記事で紹介した商品
猫の生態と、快適に過ごすための室温についての監修
宮下 ひろこ(みやした ひろこ)
獣医師/一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー/一般社団法人日本グリーフ専門士協会認定グリーフ専門士
日本大学獣医学科卒業後、小動物臨床に従事。その後心理学やカウンセリングを学び、現在はペットロスなどのカウンセリングを行う「動物病院専任カウンセラー」として動物病院に勤務。また、獣医師はじめ動物病院スタッフのキャリアに関わるコーチングや心理カウンセリングも行っている。
書籍「獣医さん、聞きづらい「猫」のことぜんぶ教えてください!」著者。
2024年5月13日 空気
- 記事の内容や商品の情報は掲載当時のものです。掲載時のものから情報が異なることがありますのであらかじめご了承ください。